債務整理の森

債務整理を依頼する際の弁護士の選び方と、それぞれの弁護士の口コミや評判を検証し解説します。

特定調停とは?メリットとデメリット

特定調停とは?メリットとデメリット

債務整理の各種手続きの中で、「元本を減らすわけではないが、返済の仕方などを変更し、より返しやすくする」というものがあります。

裁判所において行われ、調停委員の立ち会いのもとで本人と債権者が話し合って合意するこの方法は「特定調停」と呼ばれています。

▼目次

  1. 特定調停とはどんなもの?
  2. 特定調停ができる条件
  3. 特定調停と任意整理の違い
  4. 特定調停のメリットとデメリット
  5. 特定調停手続きの流れ
  6. 結局、特定調停が向いているのはどんな人?

特定調停とはどんなもの?

特定調停とは「弁護士を使わない任意整理」などと呼ばれることもあります。

した上で裁判所において話し合いが行われます。もちろん弁護士(司法書士)を立ててもよいのですが、特定調停をする人は「費用をかけない」ことを目的として行うことが多いため、実際にはほとんど本人のみで行われるのが実情です。

他の債務整理手続きにはない、特定調停最大の特徴は

民事執行手続きを停止できることがある(裁判所の裁量に基づくので、必要的ではない)

ということです。

つまり、給与など財産を差押えられる状況が迫っている債務者にとっては、裁判所が停止を命じてくれることもあるという点がメリットといえるのです。

ただ、これについては若干の注意が必要ですので後ほど実務上の取り扱いを解説します。

特定調停ができる条件

「特定債務者」であること

特定債務者とは

「金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのある者もしくは事業の継続に支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することが困難である者又は債務超過に陥るおそれのある法人をいう」

とされています(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律、以下特調法とする、第2条1項)。

つまり、通常の返済をするのが難しい状況になっているのであれば個人でも法人でもよいということです。

逆に、債権者からの申立ては認められていません。

特定調停手続きによることの申述

これは、単なる手続き上の要件になりますが、裁判所のフォーマットに「特定調停手続きにより調停を行うことを求めます」と印字してありますので、使用する様式を間違えなければ問題ありません。

特定調停と任意整理の違い

では、似ている部分も多い特定調停と任意整理を比べてみましょう。

任意整理特定調停
返済型か清算型か返済型返済型
裁判所の関与なしあり(ただし、当事者が話し合って合意を形成する)
手続きの相手方債権者を選ぶこと
元本が減るか(※)原則、減らない原則、減らない
費用安いこともある安い
手続きの難しさ事案による自分ですることも可能

 ※「元本が減るか」というのは、利息引き直し計算結果よりさらに減らせるかということ。

利息引き直し計算について詳しくは、「任意整理で借金減額する方法と具体例」で解説していますので、引き直し計算の意味がわからない方はまずこちらをご覧ください。

特定調停と任意整理の共通点は?

どちらも話し合いによる解決であり、手続きをする相手方の債権者を選べる点が特徴です。

費用については任意整理は弁護士(司法書士)に依頼しないと難しいため、債権者1社あたり3万円~5万円ほどの費用がかかりますがそれでも裁判所の関与する手続きに比べると安くなることが多いといえます。特定調停は本人のみで行うことが多いためさらに安く、1万円程度で済むこともあります

なお、どちらも利息引き直し計算をした後の元本はそれ以上交渉しても債務減額することは厳しいと考えておかなければなりません。

特定調停と任意整理の異なる点は?

任意整理がまったく裁判所の関与なしに進む私的な和解であることに対し、特定調停は一応、裁判所の調停手続きとして「調停委員」が立ち会います

しかし自己破産手続きや個人再生手続きのようにスケジュールがきっちり決まっており裁判所が主導して進めるというものではなく、あくまで本人の意思に基づいて合意を形成するものです。

特定調停のメリットとデメリット

特定調停のメリット、デメリットを一覧にまとめると次のようになります。

メリットデメリット
相手方を選択できる債権者の同意が得られないと成立しない
強制執行を停止できることがある過払い金を見逃すことがある
申立てするによって債権者の取り立てを止める効果がある調停委員が債務整理に精通していないと、不適切な内容の合意となることがある
費用が安い合意した内容がそのまま債務名義となる

特定調停のメリット

相手方を選択できる

上記のように、特定調停でも任意売却と同様、相手方債権者を選択できます。特定調停を申し立てる際に「関係権利者一覧表」を提出することになります。

つまり、ややこしい債権者だけを相手取って調停に持ち込むこともできるわけです。

強制執行を停止できることがある

「民事執行手続きを停止できる」ことが特定調停の特徴だと説明しました。

つまり、現実に給与差押え等をされている人にとっては、それを止められることがあるわけですからかなりのメリットと感じるかもしれません。執行停止の申立ては特定調停の申立ての後でそれとは別に行う必要がありますが、実際には同時に行われることが多くなっています。

では、具体的な実務上の取り扱いなども含めて見てみましょう。

特調法第7条1項本文では次のように規定されています。

「特定調停に係る事件の係属する裁判所は、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる」

たとえば、給与差押えをされるとそれは働いている会社にバレますので、下手をすると解雇などの危機に陥ることもありえます(実際、そのことを理由とする解雇は違法ではありますが)。

そのような状況では返済に大きな支障が出る可能性がありますので、条文の中に示されている「特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるとき」に該当します。

場合によっては「無担保で」執行を停止できることもあるとされていますが、現実的にはこの制度を濫用するかのような申立てもあるため、執行停止が本当に必要なのかどうかは慎重に判断される傾向にあります

完全に無担保で執行を停止する事例は少なく、東京簡易裁判所の場合、最低でも債権額の5%は担保を立てさせる取扱いにしています。

無担保での執行停止の例としては、

「弁護士が受任通知を出した直後に、他の債権者を出し抜く形での債権回収がはかられた」

「ほとんどの債権者が任意整理に応じているにもかかわらず、事前交渉を強硬に拒絶して差押えが行われた」

といった、明らかに債権者側に問題があるような事例に限られています

申立てするによって債権者の取り立てを止める効果がある

特定調停には他の債務整理手続きと同様、債権者からの取り立てを止める効果があります。

ただし、他の債務整理では弁護士(司法書士)からの受任通知が届くと取り立てが止まりますが、特定調停の場合は「申立て」の時に取り立てが止まります。

つまり、申立て書類の準備などに手間取っていると取り立ての停止が遅くなる場合もあることに注意が必要です。

費用が安い

他の債務整理手続きと比べて、費用がかなり抑えられることも大きなメリットです。

たとえば東京簡易裁判所の場合、特定調停の費用は次のようになっています。

  • 申立て手数料(収入印紙) 相手方債権者1社につき500円分(ただし、債務額により増額もあり)
  • 予納郵便切手 相手方債権者1社につき420円分

案件によっては追加納付を求められることもありますが、他の債務整理手続きと比べるとかなり費用が抑えられることがわかるでしょう。

特定調停のデメリット

債権者の同意が得られないと成立しない

もし、債権者が債務者側の提案した内容に合意しなければ調停は成立しません

その場合は裁判所が調停委員の意見を聞いた上で事件解決のための決定をするか(17条決定)、調停不成立として終了するかのどちらかになるため、事案によっては結局他の債務整理手続きに移行せざるを得ないこととなります。

特定調停は、手形取立(手形を現金化すること)を脅しの材料に使う商工ローンに対して効果を発揮すると期待されていましたが、実際にはそのような業者が誠実に対応せず、あまり効果がなかったという実態があります。

過払い金を見逃すことがある

これは特定調停の致命的欠陥となりうるものです。

そもそも債務者が債務整理のために申し立てる趣旨の特定調停では、債権者(申立人)に何かを払わせることを想定していません。最初から本人申立によって行われる場合には過払い金そのものを見逃している可能性もありますので、過払いなのに返済する内容での合意をしてしまう危険も考えられます

また、過払い金があることを推測していても、「債権がない」というだけの内容にとどまる調停をしてしまうことがあります。ここで厄介なのが、合意の文言です。

「債務者側の負担する債務がない」というだけの合意なら後日、別に過払い金返還請求をすることも比較的容易です。しかし「債権債務がない(=貸金業者側にも支払義務がない)」としてしまうと、過払い金返還請求をした時に貸金業者側の抵抗を受けることもあるのです。

調停委員が債務整理に精通していないと、不適切な内容の合意となることがある

「調停委員」というのは、調停において両当事者を取り持ち、合意をスムーズに形成するため裁判所が選任した人のことです。

法律的なことについて当事者をサポートするのだから、当然弁護士などの法律専門家ではないかと思っている人もいるのですがそうではありません。

実際、調停委員の候補者としては次のような人が該当します。

”原則として40歳以上70歳未満の人で,弁護士,医師,大学教授,公認会計士,不動産鑑定士,建築士などの専門家のほか,地域社会に密着して幅広く活動してきた人など,社会の各分野から選ばれています。”

 (裁判所ウェブサイトより http://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/tyoteiin/

債務整理の有名なサイトでも「調停委員には弁護士が選ばれる」といった断定的な記述がされていることがありますがこれは間違いです。

弁護士も一応、候補に挙げられていますが(地域にもよるでしょうが)現実的には弁護士が調停委員を務めている例はそう多くありません

つまり、必ずしも法律に明るくない、債務整理にも精通していない人がたまたま選ばれて特定調停を担当してしまうことも考えられるのです。

本来であれば特定調停は債務整理の一種ですから、法曹界の常識からいえば東京の3つの弁護士会が出した「三会統一基準」が守られるべきです。

しかし、利息制限法超えの過払い利息が取られていた点を見逃していたり、将来利息をつけることを当然とするかのような合意の進め方をされたりと、三会統一基準をまったく無視したような調停が数多くみられます

(なお、三会統一基準の内容については「任意整理で和解するまでの流れ」の中の「弁護士会による『三会統一基準』とは?」で解説していますのでこちらをご覧ください。)

費用が安いというメリットにひかれて特定調停を選んだものの、結局もう存在しなかった債務を承認させられるようなことになったら本末転倒です。

どうしても特定調停を選びたいと考える人であっても、少なくとも「利息引き直し計算」の段階までは弁護士(司法書士)に頼んで正確にやってもらい、債務が残る業者についてのみ特定調停するという選択肢もあるのではないでしょうか。

合意した内容がそのまま債務名義となる

これも特定調停の非常に怖い点なのですが、成立した特定調停には「裁判上の和解」と同じ効果があるとされますので後から内容を否定することは非常に難しいと考えられます。
調停調書がいったん作成されてしまうと、もし返済ができなくなった場合、債権者はただちに差押え等をすることができます

ただ、すでに債務の存在を認める特定調停が成立してしまった後で相談を受けた弁護士が過払い金を発見した場合、これを請求することもできます

上記のように「債権債務なし」という合意をした場合は特に貸金業者が抵抗することもありますが、もしそれを理由に請求棄却を求めてきたような場合は貸金業者に対して不法行為(訴訟詐欺)による損害賠償請求をすることもあります。

貸金業者は最初から過払い金の存在を知っているはずなので、それにもかかわらず債務が存在する合意をするのは悪質極まりないからです。

特定調停手続きの流れ

特定調停手続きの全体的な流れは以下のようになります。

では、各プロセスについて解説します。手続き期間は事案によりばらつきがありますのであくまで大まかな目安ですが、標準的には3~4カ月と考えておきましょう。

①申立て書類作成

特定調停の申立てに必要な書類は次のとおりです。

・特定調停申立書

 これを相手方ごとに正本、副本の2部ずつ作成します。

・財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者本人であることを明らかにする資料

 債務者の現在の生活、収入、資産などの状況を報告する書類です。

・権利関係者一覧表

 債権者と現在の債務残高などを一覧表にしたものです。

これらの各フォーマットは裁判所のサイトからダウンロードすることもできますし、裁判所に出向いて受け取ることもできます。

②特定調停の申立て

原則、債権者の本店所在地を管轄する簡易裁判所に申立てを行います。この時に収入印紙や郵便切手も納付します。

③債権者への通知・調査期日の指定(申立てから2、3日)

必要書類が揃っていれば即日受理されますのでそこから数日後には債権者に通知され、取り立てが止まります。通知が届くまでどうしても待てない場合は、裁判所から振られた事件番号を債権者に伝えて止めてもらうという手段があります。

そして裁判所は次の「調査期日」の前に調停委員を選任しておきます。

④調査期日(申立てから1カ月)

調査期日とは、実際に債権者と話し合う調停に向けて、調停委員が事前の聞き取りをしておくものです(債権者は出席しません)。

ここでは生活の状況や債務返済の資金を工面できるのか、援助はあるのかなどさまざまな観点から質問がされます。ここで調停委員と話し合った上で作成した返済計画を調停で債権者に提案していく形になります。

⑤調停期日で話し合い(申立てから2カ月)

調査期日から1カ月ほど後に、いよいよ債権者と話し合う調停期日となります。現在の債務総額を確認するとともに返済方法や未払利息、遅れた場合の遅延損害金などを定めます。

債権者の中には、調停期日に出席しないが、裁判所による17条決定を求める者もいます。これは、もちろん人員が回せないなどの事情もあるでしょうが他にも理由があります。

債権者の中の担当者が任意に合意を成立したとなると、後から(会社からの)責任を追及されるおそれもあるが、裁判所の決定であれば会社の稟議もおりやすいといったことが背景にあるようです。

⑥調停成立または裁判所による17条決定(申立てから3、4カ月)

債権者との間に合意が形成できれば「調停調書」を作成します

しかし、合意ができない場合、裁判所が職権で「17条決定(特調法の条文の番号を取ってそのように呼ばれている)」を下すことになります。

このように言うと当事者の意思に反して裁判所が勝手に返済案を立ててしまうような印象を受けますが、実際には「当事者の申立てがある」ことが要件とされています。また、「特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容」、つまり債務者が立ち直るために適切で合理的な計画でなければならないとされているのです。

⑦調停調書または17条決定に基づく返済

「調停調書」もしくは「17条決定」に定められた内容に基づいて返済を行います。これらには「執行力」があるため、もし返済が滞った場合に債権者は差押えをすることができます。

※調停が不成立となるケースとは?

17条決定を当事者から求められたとしても債権者からの異議が明らかな場合や、合意した調停の内容が不適切と裁判所が判断すれば、調停不成立として終結することもあります。

その場合、任意整理や個人再生、自己破産など他の手続きへの移行が必要になることがあります。

結局、特定調停が向いているのはどんな人?

「デメリット」の項目で説明したように、弁護士(司法書士)が関与しないで行われる特定調停はそもそも適切な合意がされるという保証がありません

調停委員が関与しながら消滅時効成立、相続放棄、過払い金請求など債務者に有利な点が見過ごされることも多く、あまり積極的におすすめすることはできません。しかし、あえて「向いている人」を挙げるのであれば次の通りとなります。

  • もともと高金利取引をしていた業者がない
  • 調停自体は本人がするが、事前に弁護士(司法書士)に相談してある程度情報を得られている

弁護士(司法書士)に相談した結果、明らかに事案として特定調停には向いておらず、個人再生や自己破産の方が適切な解決方法であると判断される場合もあるのです。

最終的に特定調停を選ぶことになったとしても、最初の段階では必ず弁護士(司法書士)に利息引き直し計算をしてもらい、返済額を支払うのに無理がないかなどのアドバイスを受けることをおすすめします。

特定調停のブラックリストはいつが起算日で5年間か

特定調停のブラックリストはいつが起算日で5年間か

特定調停の最大のデメリットといえばブラックリスト入りすることです。信用情報機関の ...

no image

特定調停はどこが管轄している裁判所へ行けばよいのか

特定調停は裁判所に申し立てをするということはわかりました。 しかし、全国に数多く ...

特定調停は官報に掲載されるのか

特定調停は官報に掲載されるのか

特定調停は享受されるメリットが多いものの、デメリットの心配から利用が減少していま ...

no image

特定調停にかかる費用を自分でやる場合と司法書士に頼む場合で比較

2015/10/14   特定調停の費用

「特定調停」の特徴とメリットは? 「特定調停」を一言で表現するとすれば裁判所を利 ...

債務整理弁護士事務所ランキング