300万円借金してうつに!飲食店開業で50代男性が陥った地獄の日々

 

実家の精肉店から独立するため、借金を元手に居酒屋の開業を志した男性。
ところが、信頼して店舗建設を依頼した業者が建てたのは、とても客を呼べない欠陥だらけの小屋だった。
経営は行き詰まり、貯蓄も底をつき、アルバイトを掛け持ち。
疲れて寝ていると、妻から容赦ない言葉が降りかかる。
身も心も疲れ果て、うつになってしまった男性が、当時の心境について語ってくれた。

借金地獄の始まり

――――そもそも、どういった経緯で借り入れを?

私が借金を抱えるようになったのは、居酒屋の開店資金に充てるための借入でした。

元々独立開業したいという気持ちがあり、年齢的にも最後の勝負をかけようと考えていた矢先に、知り合いから県の信用保証協会で開業資金を無担保で融資してくれるという話を耳にしたのです。
早速、融資条件などの説明を聞きに行き、想像以上にスムーズに資金を借りることができました。

条件としては、300万円の7年払いで、月々4万円強の返済という融資内容でした。

資金の確保もできたので、私は早速知り合いの業者に店舗建築を依頼することにしました。

――――店舗建設は問題なく進んだのでしょうか。

発注してしばらくしてから、作業の進捗について確認してみると、驚いたことに当初予定していた店舗建築着手予定日になっても、一向に作業が進んでいませんでした。
このままではまずい、と思い、業者に建築を早めてもらうように催促して、ようやく店舗建築が本格的に始まりました。

しかし、この時には、既に店舗の完成予定日が1ヶ月も遅れるスケジュールになっていたのです。
今思えば、これが借金地獄の始まりでした。

予想外に増えた支払い金額と家族からのプレッシャー

――――その後、店舗は無事完成までこぎつけたのですか?

スケジュールの遅延があったとはいえ、ひとまず店舗は完成しました。

しかし、一安心した矢先に送付されてきた請求書を見て目を疑いました。
当初、仮の見積もりで300万円と言われていた金額が、800万円に跳ね上がっている請求書が来ていたのです。

――――当初の二倍以上の返済額ですね。何が原因だったのでしょうか。

増額した理由としては、追加で補強が必要な箇所が見つかったり、何度も建築をし直したのが原因でした。
既に店舗は完成してしまっているため、資金の不足分は、分割で支払っていくことになってしまいました。

今思えば、あらゆる面で調査や確認が不足していました。
そもそも複数の業者に相談し、見積もりをとって、しっかりした建設業者と契約すべきでしたし、工事が遅れているという認識もあったものの、心のどこかでは「なんとかなる」と甘く考えていたのもあったのでしょう。

毎朝現場にやってくる業者の姿を見る度に、私自身の選択ミスを責められているような気がして、日に日に気持ちが落ち込んでいきました。
さらに、実家の両親や妻にも「借金までして建てた店舗なんだから絶対に軌道に乗せなきゃダメだよ」とプレッシャーをかけられる機会が増えていきました。

――――かなり辛い状況ですね。周りの方には相談できなかったのでしょうか。

はい。
苦しい状況の中でも、家族も含め相談できる相手がおらず、心のモヤモヤを自分で消化するしかありませんでした。
さらに追い討ちをかけるように、完成した店舗は、組み立てがずさんということが次第に分かってきました。

夏は暑く冬は寒いうえに、隙間から虫が入ってくるのです。とてもお客さんに来てもらえる状況ではありません。
修繕をしてから開店しようとも考えましたが、予定より半年以上遅れたこともあり、家族からもだんだん責められるようになってきました。
結局、なし崩し的に店をスタートさせることになってしまったのです。

「あんたは結局社会で通用しない人間だ」毎朝突き刺さる妻の言葉、やがてうつに

――――開店後、店舗運営は上手くいったのでしょうか。

はい、徐々にですが、開店からは順調に客足が伸びはじめました。
しかし、軌道に乗ってきた矢先に、今まで見て見ぬふりをしてきた税金の支払い期限がやってきました。
想定以上に膨らんだ借金の返済をしていることもあり、すぐには税金を支払えないことを妻に相談すると、店をたたんで他の仕事に就くよう強く言われました。

それでも店の客足は伸びていたので忙しく、営業時間が終わる頃には疲れ果てています。
そんな状況の中、仕事を終えて仮眠をとっているところに、毎朝「あんたは結局社会で通用しない人間だ」などと、否定的な言葉を浴びせられ、身も心も全く休まらない日々が続きました。

――――日常的に否定的な言葉を浴びせられるのは辛いですね。

そしてある日の朝、私の身体はついに限界を迎えてしまいました。
目が覚めてもベッドから起き上がれず、動こうと思っても身体が動かないような状態になってしまったのです。
自分の頭と身体が全く別の動きをしているようでした。

しばらくして、いつも起きてくる時間になっても、起きてこない私を妻が様子を見にきてくれ、そのまま私を心療内科に連れて行ってくれました。
精神科の先生の優しい笑顔とうなずきながら私の話を熱心に聞いてくれる姿勢に、気づけば借金をしてからの辛い日々のことを全て話していました。

その結果、うつ病と診断され、安定剤と漢方薬と睡眠薬を処方されることになりました。

家族に理解されず、再発する”うつ”との孤独な闘い

――――うつ病の診断を受けたあとは、しっかり静養できましたか。

精神科医の方からは、うつ病にかかった場合、本来は静養すべきとのアドバイスをもらいました。

しかし、私は自営業者ということもあり、働かなければ収入がありません。
その上、妻からも働かないで寝ていることを責められるようになり、家に居場所がなくなっていたことも仕事に戻りたくなった理由の一つです。

ところが営業を再開すると、病み上がりに無理したことで、再び数日でダウンしてしまいました。
その後、不定期で店を開店しながら、どうにか仕事に復帰しようともがき続ける日々が始まったのです。

少しずつ仕事に復帰して、普段の生活を取り戻せるようになると、妻は私の症状を、うつではなかったと決めつけるようになっていました。
そして店の売上や借金の返済について、何日も同じプレッシャーをかけられはじめ、再び、うつの症状が再発してしまったのです。
困難な状況に置かれたとき、心の支えとなるはずの家族に、うつを理解してもらえないのは辛いことです。

自分の力だけで、うつを克服しなければならず、それが新たなプレッシャーになることも少なくありません。

――――家族だけではなく、自分で自分にもプレッシャーをかけてしまったのですね。

冷静に思い返してみると、妻は最初から私のことも店のことも全く理解しようとせず、いつも自分の経済状況ばかり気にしていたことも精神的に辛かったです。
私は自分でうつを乗り越えるために、本を何冊も読んで勉強したり、瞑想したりしました。

そして最終的には、心療内科に通うのもやめることになります。
薬の効果が明確に実感できているわけでもなく、ただ「心療内科に通っている」という事実だけを、精神的な拠り所にしているだけだと気づいたからです。

その努力もあって、不安な気持ちを少しずつ遠ざけ、ようやく仕事に復帰することができたのです。

うつから身を守りながら借金返済の日々

――――仕事復帰後は、借金の返済も再開されたんですよね。

はい。本業の収入だけでは借金を返済しきれず、生前贈与として父親にお金を出してもらい、借金の残り分を補填しました。
実は、借金の補填のために、本業の他にアルバイトもしていました。
ゴミ回収のアルバイトやWeb系の仕事をはじめ、複数のアルバイトを掛け持ちしました。

多少無理をしても、動けるうちに借入の返済、固定費の返済を第一に考えたのです。
しかし心身の調子が悪い時は、誰に何と言われようとも、無理せず休むことにしています。
何度も心身の限界が来て倒れてしまう辛さは、人並み以上に理解できるからです。

借金とうつを振り返って思うこと

――――ご紹介いただいた体験を通じて、現在はどのような心境でしょうか。

今でも、建築会社に頼む時にもっと調査や確認をしていれば、借金を抱えることも、うつになることもなかったのではないかと考えることがあります。
しかし、こうなってしまった以上、過去の過ちを経験として捉え、まずは借金の返済を完遂をしていきたいと思います。

今は本業に加えて、副業の収入もあるので、月々の返済も前に比べると楽になりました。
最終的には副業が本業になり、飲食店は静かにフェードアウトしていけたら、とも考えています。

今回、うつにかかったことで、私は自分自身に少し厳しくするのが当然だと思い込んでいたことに気づきました。
借金を抱えて、首が回らなくなってしまった場合、債務整理をするという手段もあります。

しかし、私は無理をしても自分で返済しようと考えてしまい、その結果、身体を壊すまで自分を追い詰めてしまったのです。
今後は、失敗は失敗として反省するとともに、周りが味方になってくれない時は、せめて自分で自分を責めないような心持で過ごしていきたいと考えています。

弁護士による解説コメント

今回の体験談のようなケースでは、破産申立てをした方が良かったかもしれません。
破産手続において裁判所が免責を認めれば、借金の支払義務はなくなります。
ただし、破産手続では、自宅や店舗を売却せざるを得なくなりますし、今後の事業継続も難しくなる(借り入れができなくなります。)ので、その点は注意した方が良いでしょう。

早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。弁護士法人丸の内ソレイユ
弁護士 阿部栄一郎先生

  • 都内の法律事務所勤務を経て、2010年、丸の内ソレイユ法律事務所入所。
  • 交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。
  • ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。
  • 交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。

【取材者】債務整理の森
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債務整理の森中の人

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債務整理の森編集長。ユーザーの求めている情報をわかりやすく配信することを最優先し、記事の編集に励んでいます。

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