自分は無関係だと思っていたら急に相続対象になった!代襲相続ってどういう制度?
代襲相続って何??どんな制度なの?
今回の記事では、代襲相続について解説していくよ。
相続というと「親から子供へ」というイメージを持たれることが多いでしょう。
しかし、祖父母やおじおばなど、一見自分が関係ないように思えるところからの相続に自分が関わってくることがあります。
相続人となるべき人がその親や兄弟より先に死亡してしまっているケースでは「代襲相続」とよばれる相続関係が発生します。
本記事では
- 「代襲相続とはどのような場合に起こるのか」
- 「相続放棄や相続人の廃除など、本来の相続人が相続関係から離脱する場合にその子供の取扱いはどうなるのか」
- 「相続税が通常より2割加算されることがあるが、どのような場合か」
といった点を解説します。
代襲相続とは
「代襲相続」とは、例えば親Aが亡くなって本来その子供Bが相続人となるべきところ、BがAより先に死亡しているためBの子供C、つまりAの孫がBに代わって相続人となることです。
また、上記例以外にも代襲相続が発生することがありますので確認してみましょう。
どこまで代襲相続となるのか
代襲相続が発生するのはどこまでの範囲の親族なのでしょうか。
一つ目としては
「親より先に子供が死亡し、子供の子供が代襲相続人となる」
パターンがあります。
代襲相続人が複数いる場合、被代襲者である親の法定相続分(民法で定められた相続分)を株分けする形で相続人となります。
つまり、上記のFとGは、親であるDの法定相続分だった8分の2(4分の1)をさらに二等分して、それぞれ8分の1の法定相続分を持つこととなります。
なお、子供の子供も被相続人(死亡した人、上図ではA)より先に死亡している場合は、さらにその子供(Aから見たひ孫)が代襲相続しますが、これを「再代襲」とよびます。
二つめとしては
「兄弟姉妹が相続人となるはずのところ、相続人である兄弟姉妹が先に死亡している場合はその子供が代襲相続人となる」
パターンがあります。
被相続人に子供(第一順位相続人)や親(第二順位相続人)がいない場合、兄弟姉妹が第三順位として配偶者とともに相続人となります。
ただし、兄弟姉妹(上図D)が被相続人(上図C)より先に死亡している場合は、Dの子であるGとHがDの法定相続分を株分けする形で相続人となります。
Cの妻Fの法定相続分が8分の6(4分の3)で、Dが8分の2(4分の1)となるため、GとHの相続分は8分の1ずつとなります。
代襲相続は、上記のように「親が死亡した際に子供が親の代わりに相続人となる」のが基本的なパターンですが、死亡ではなく
- 親が「相続欠格」に該当していて相続人になれない場合
- 親が「廃除」により相続する資格を失っている場合
にも、その子供が代襲することが可能です。
相続欠格と廃除については次項で解説します。
相続欠格とは
相続欠格とは「法律に規定されている行為を行った者に対し、自動的に相続権を失わせる」制度です。
どのような事由が相続欠格に該当するのか、民法第891条に定められています。
(相続人の欠格事由)
民法第891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
- 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
- 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
- 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
- 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
- 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
被相続人や自分以外の相続人を殺害する、遺言書を無理やり書かせたり取り消させたりする、また、遺言書の偽造や破棄などが主な事由です。
次項の「廃除」とは異なり、上記事由があれば特に手続きを行わなくても当然に相続人としての立場を失います。
相続人の廃除とは
「廃除」とは、被相続人の意思によって推定相続人(将来相続人となるべき者)の相続権をはく奪する制度です。
(推定相続人の廃除)
民法第892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
被相続人に対して虐待や侮辱などを行った相続人を、被相続人が家庭裁判所に申し立てることにより相続人から除外することができます。
ただし、家庭裁判所が「審判」を行った上で廃除を認めるかどうかを決めるため、必ずしも希望通りにならないこともあります。
被相続人は生前に自ら申し立てることも可能ですし、遺言により申し立てる方法もあります。
また、いったん認められた廃除の審判について「廃除取消」の申立てを行うことも可能です。
相続放棄すると代襲相続されるのか
上記の「相続欠格」や「廃除」とは異なり、相続放棄を行った人の子供は代襲相続人になることはできません。
(相続の放棄の方式)
民法第938条
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
「相続放棄」は、単に他の相続人に対して「遺産は要りません」という意思表示をすることではなく、家庭裁判所に所定の期間内(原則、相続開始を知ってから3カ月)に申立てを行う手続きです。
相続放棄が家庭裁判所から認められると、手続きを行った人は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
相続放棄の場合はそもそも親が相続権を自ら放棄しているため、その子供にも代襲の権利は発生しません。
代襲相続に遺留分はあるのか
代襲相続も、遺留分の対象になるよ。
だけど、兄弟が代襲相続する場合には、遺留分は発生しないから注意しよう。
代襲相続人となった人にも「遺留分」が認められます。
遺留分とは何か、民法の規定について確認してみましょう。
遺留分とは
遺留分とは「たとえ遺言があったとしても、法定相続人である配偶者、子供、直系尊属に一定割合の取り分を主張することを認めた」規定です。
(遺留分の帰属及びその割合)
第1042条
- 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
- 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
- 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1
(以下省略)
遺留分の具体的な割合は次の通りです。
- 「法定相続分の2分の1」
- 「ただし、直系尊属『のみ』が法定相続人となる場合は法定相続分の3分の1」
例えば妻と子供二人が法定相続人である場合、
- 「妻の法定相続分は4分の2であり、遺留分は4分の1」
- 「子供それぞれの法定相続分は4分の1ずつ、遺留分は8分の1ずつ」
となります。
被相続人の法定相続人が「両親のみ」であり、両親が共に存命の場合は「両親それぞれの法定相続分は2分の1、遺留分は6分の1ずつ」となります。
遺留分の権利を持つ人は、遺留分を侵害する人に対してその侵害額を金銭で請求することができる旨が定められています(民法第1046条)。
自動的に遺留分の権利が保持されているわけではなく、請求が必要であることに注意が必要です。
ただ、実際に遺留分を計算して請求する場合は、不動産の評価など難しい面もありややこしいため、弁護士に相談して行うことをおすすめします。
遺留分が発生する代襲相続とは
代襲相続した人に遺留分が発生するのはどのようなケースなのかを確認してみましょう。
上記に解説したように、第一順位~第三順位までの相続人で遺留分の権利を持つのは配偶者と第一順位、第二順位の相続人です。
つまり、第三順位である兄弟姉妹については本来の相続人に遺留分が認められていないため、代襲相続人となったその子供にも遺留分は発生しないこととなります。
代襲相続の2割加算とは
相続税は、ある条件にあてはまる人が相続する場合は、その対象者の税額に対し2割に相当する金額が加算されることがあります(「2割加算」とよばれる)。
どのような人が2割加算の対象者になるのでしょうか。
相続税の2割加算対象者
相続税の2割加算は、次の条件を備える人が相続人になる場合に行われます。
- 「配偶者ではない」
- 「被相続人の一親等の血族ではない」
つまり、配偶者、実子、(孫ではない)養子、両親は2割加算されないが、兄弟姉妹やおい、めい、第三者(遺贈)の場合には2割加算の対象となります。
注意すべきなのは代襲相続人ですが、すでに死亡した実子の子供、つまり被相続人の孫が相続する場合には2割加算の対象ではありません。
そして、養子であっても被相続人の実子が生存している状況で孫と養子縁組している場合には2割加算の対象となります。
※国税庁タックスアンサー「No.4157相続税額の2割加算」より引用
相続税については、遺産総額が「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」までであれば申告の必要はありませんが、少しでも上記金額を超える可能性がある場合はなるべく早く税理士に相談しましょう。
相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」に申告と(原則現金での)納税を行わなくてはなりません。
また、相続人間での遺産分割協議を行わないと「法定相続分で相続した」という前提での申告、納税を義務づけられるため、節税の対策ができなくなることもあります。
よって、葬儀や法要などで忙しくしているとあっという間に期限が迫ってきますので、極力早めの対応が必要になるということを覚えておきましょう。
まとめ
祖父の遺産を孫が引き継ぐことだけを代襲相続と呼ぶのではなく、兄弟の子供も対象になるという事が良くわかったよ。
- 代襲相続とは、本来の相続人である「被相続人の子供」や「被相続人の兄弟」が被相続人より先に死亡している場合に、それらの子供が代わって相続人となる制度である。
- 「相続欠格」にあたる相続人や相続人から「廃除」された人の子供でも代襲相続人になることができるが、「相続放棄」を行った人の子供は代襲相続人になれない。
- 「配偶者」「一親等の血族」ではない人が相続人になる場合、相続税が2割加算されるが、被相続人の子供が死亡していてその子供が代襲相続人になる場合は2割加算の対象ではない。
西岡容子
青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
■注力分野
債務整理
不動産登記
相続
■ご覧のみなさまへのメッセージ
通常、お金のプロである債権者と、一般人である債務者の知識レベルの差は歴然としており、「知らない」ことが圧倒的に不利な結果を招くこともあります。
債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。
借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
なぜなら大まかにでも知識があれば法律家の話がよく理解できますし、不明な点を手続き開始前に質問することもできます。
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