債務整理の森

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借金も相続対象らしいけど、相続放棄された分の借金はどういう扱いになるの?

 

ミミズク
相続放棄すると、マイナスの財産ってどうなるの?

ウサギ
相続放棄をするとマイナスの財産は、プラスの財産同様、他の人が引き継ぐことになるんだよ
今回の記事では、相続の種類や、相続放棄の注意点、相続放棄した債務はどうなるのか、詳しくみていこう。

相続という言葉から、富裕層の持つ多額の資産を引き継ぐというイメージを持つ人は多いでしょうが、実際には相続したことにより資産を上回る負債を抱えるケースもあります。

相続というのは被相続人(亡くなった人)の法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)が被相続人の残した財産も負債も丸ごと引き継ぐ手続きだからです。

自分がしたわけではない借金を無条件に負うことは理不尽ともいえるため、民法では「相続放棄」という手続きが認められています。

相続放棄をすることにより借金を免れることができるわけですが、その後、放棄された借金はどのように取り扱われるのでしょうか。

本記事では

  • 「相続する際のパターンにはどのようなものがあるか?」
  • 「相続放棄とは何か?相続放棄する際の注意点は?」
  • 「相続放棄したらその債務は最終的にどうなるのか?」

などについて解説します。

相続の種類

相続とは、被相続人の名義になっていた財産的価値があるもの、そして負債を民法により定められた法定相続人がそっくり承継することですが、承継の仕方にはいくつかパターンがあります。

単純承認とは

最初に、被相続人名義の財産と負債をすべて承継する「単純承認」について解説します。

単純承認を行うには特に何か手続きを必要とするわけではなく、「相続放棄」や「限定承認」が認められる期間(下記参照)を過ぎると通常は相続を承認したものと扱われます。

よって、もし相続発生後(=被相続人死亡後)に何もしないでいると、被相続人に借金があった場合にその債権者から「あなたが相続人なので支払ってください」という請求書が送られてくることになります。

仮に、相続人が何らかの理由で借金の存在を知らなかった等の場合であれば、本来相続放棄できる期間を過ぎたとしても家庭裁判所が相続放棄を認めることがあります(下に解説)。

ただ、もしも相続放棄しようとした時点で、プラスの相続財産を相続人がすでに自分自身のために使っていたりすると「法定単純承認」といって、法的に相続の承認とみなされてしまい放棄ができなくなるため注意が必要です。

法定単純承認となる事由は次のとおりです。

(法定単純承認

第921条

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

  1. 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
  2. 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
  3. 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

被相続人に大きな金額の借金があるかどうかを調べるためには信用情報機関(※)への情報開示という方法もありますが、残債務がありそうな可能性が濃い場合にはプラス財産は当面、使わず留保しておく方が賢明です。

※信用情報機関・・個人の借金の情報を管理する機関。現在、日本には「KSC」「JICC」「CIC」の3社がある。銀行、信販会社、消費者金融などが加盟会社となっており、各社が自分の貸し付ける顧客の情報を提供し、各社が情報を共有している。

限定承認とは

限定承認とは、被相続人の残した遺産の限度においてのみ債務を弁済する、という留保のもとに相続を承認することです。

ただ、このように解説しただけではイメージが湧きにくいため、下図のように場合分けして考えてみましょう。


被相続人の資産、負債を比べて「黒字になった場合」には、負債の部分だけ返済しきってしまえば残りの金額はプラス財産として相続できることになります。

逆に「赤字になった場合」には返済しきれなかった部分は返済しなくて済みます。

この「限定承認」をするためには「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に財産目録を調製した上で家庭裁判所に申述する」ことが必要です。

限定承認はプラス財産の限度でのみ債務を弁済すればよいという点でとても都合のよい制度に見えますが、実際に手続きを行うには相続放棄のようにシンプルには進みません。

共同相続人全員で行わなければならないことから個々の相続人の判断ではできず、相続人のうち1人でも「法定単純承認(被相続人の財産を自己のために使っているなど)」の事由があると限定承認はできなくなります。

また、手続きに裁判所が関与し、官報公告や債権者への催告などが必要になるため弁護士に依頼しなければ難しく、依頼すると費用がかかることもデメリットといえます。

実際に弁護士費用だけで100万円を超えることもあるため、限定承認を検討するべきなのは

  • 「財産も負債も多額にのぼり(例えば事業をやっていたなど)、すべてを把握することが難しい」
  • 「弁護士費用を支払い、長期間かかっても限定承認を選択するメリットがある」

といったケースでしょう。

限定承認すべきか相続放棄すべきか迷っている人は早めに弁護士に相談することをおすすめします。

いずれの手続きも「3カ月」という期間の制限があり、相続人多数だったり遺産の調査等に時間がかかる場合は裁判所に期間伸長の申出をする必要もあることから、特に急ぐべきであるといえます。

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人のプラス財産、負債の両方を放棄して、最初から自分が相続人ではなかったとみなされる制度です。

他の相続人に対して「遺産は要らない」と意思表示するのが「遺産分割協議」ですが、遺産分割協議と相続放棄はまったく別のものです。

相続放棄は「相続の開始、そして自分が相続人になったことを知ってから3カ月」以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に相続放棄申述書を提出して行う手続きです。

明らかに被相続人の負債が多い場合や、被相続人と交流がなかったため財産、負債の全容がわからない、被相続人の周囲の人も含め一切関わりたくない場合などに適した手続きです。

例えば、両親の離婚で母親に引き取られたため父親の生活を全然把握していなかったが、突然父親の生前の債権者から請求書が届いた、などのケースがあり得ます。

大半のケースでは死亡と同時に周囲の相続人が相続開始の事実を知ることになるため、「死亡より3カ月」の期間で相続放棄の手続きをしなければなりません。

しかし、被相続人と疎遠で死亡を知らなかった、また、死亡を知っていたが債務を知らなかったなどのケースで「死亡より3カ月」よりも後の時期に提出することも可能です。

ただ、3カ月を超えている相続放棄の手続きは「知った時期を書面で証明する(債権者からの請求書等)」「上申書」など、イレギュラーな書類が必要になることがあるため、弁護士に依頼することをおすすめします。


もし、家庭裁判所に相続放棄が認められれば、仮に債権者からの請求書が届いても「相続放棄申述受理証明書」を債権者に提示することで請求を拒むことが可能になります。

相続放棄された債務はどうなるのか

ミミズク
相続放棄する人がいた場合、マイナスの遺産はどうやって分割される事になるの?

ウサギ
プラスの遺産と同じ割合で、マイナスの遺産も相続する事になるんだよ。

相続放棄をすると、放棄した相続人は被相続人が残した債務の返済を免れることになりますが、同順位の相続人で相続放棄していない人がいればその人が債務を返済することになります。

また、同順位の相続人全員が相続放棄すると、次の順位の相続人が相続権を持つことになるため、次順位者は相続権が回ってきた時点で相続放棄するかどうかを判断することを迫られることとなります。

合わせて読みたい

以上の点をもう少し詳しく見てみましょう。

相続放棄された債務の負担割合

相続放棄した人がいることにより、他の相続人の債務の負担割合が増えることがあります。


【例】

被相続人に妻と子供2人がおり、資産は1,000万円、負債が1,200円あった

本来であれば妻4分の2、子供二人がそれぞれ4分の1ずつの相続権を持っている(法定相続分)。

誰も相続放棄をしなければ、

  • 資産 妻が500万円、子2人が250万円ずつ相続
  • 負債 妻が600万円、子2人が300万円ずつ負担

ということになります。

しかし、子の1人が相続放棄をすると、その子は最初から相続人ではなかったとみなされるため、

  • 資産 妻が500万円、子が500万円相続
  • 負債 妻が600万円、子600万円負担

ということになります。


相続人が全員相続放棄するケース

上記の例で子供(第1順位相続人)の全員が相続放棄したとすると、第2順位である「被相続人の直系尊属(親や祖父母)」に相続権が回ってきます。

なお、前順位の相続人が全員相続放棄したために相続人となった者の相続放棄期限については「前順位の相続人が全員相続放棄したため自分に相続権が回ってきたことを知ってから3カ月」となります。

なお、第2順位相続人である直系尊属、第3順位相続人である兄弟姉妹が全員相続放棄してしまい、かつ配偶者も被相続人より先に死亡していて誰も相続人がいない状態となったらどうなるのでしょうか。

民法に以下のような規定があります。

相続財産法人の成立)

第951条

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

(相続財産の清算人の選任)

第952条

  1. 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
  2. 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

ここでいう「相続人のあることが明らかでないとき」とは、戸籍上相続人が見当たらない、または戸籍上特定できる全員が相続放棄してしまって相続人が誰もいなくなった場合のことを指します。

単に「行方不明」「連絡がつかない」などの場合は「不在者財産管理人」「失踪宣告」など、別の手続きが用意されているため本条には該当しません。

上記の条文の「相続人のあることが明らかでないとき」に当たる場合には、相続財産は「法人」として扱われます。

その上で、利害関係人や検察官(申立権者、申立人)が家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を請求します。

申立権を持つ利害関係人とは、具体的には「被相続人の債権者、特定遺贈の受遺者、相続財産の担保権者、特別縁故者、被相続人からの不動産取得者」などです。

※特定遺贈・・特定の財産を指定して行う遺贈

※特別縁故者・・被相続人に法定相続人がいない場合に、民法による特別の手続きを経て被相続人の財産を取得できる人

裁判所が選任する「相続財産清算人」は法的な知識が必要な場面も多いため、一般的には弁護士や司法書士が選ばれると考えてよいでしょう。

相続財産清算人が選ばれると、申立人は裁判所に「予納金」を支払わなくてはなりません。

予納金は最低でも20万円から30万円程度、案件の複雑さによってはもっと多額にのぼるため、申立てにあたって資金の準備が必要となります。

相続放棄する場合の注意点

ミミズク
相続放棄する場合には、どんな事に注意すればよいのかな?

ウサギ
相続放棄できる期間は、相続を知ってから3ヵ月以内という事を忘れない様にしよう。
相続放棄する場合には、相続する人に前もって連絡をしておく事も大切だよ。

相続放棄する際に気をつけておきたい点を確認しましょう。

主な注意点としては「相続放棄の期限」と「相続放棄した後に相続権が回ってくる親族への連絡」です。

相続放棄が却下されるケースとは

相続放棄の申述が却下されるケースはあるのでしょうか。

上記のとおり、相続放棄の期間は相続が発生し、自分が相続人であることを知ってから3カ月です。

ただ、債務があることを知らなかったなどの事情であれば3カ月を過ぎていても相続放棄が受理されることはしばしばあります。

しかし、下記のような状況であれば相続放棄が却下されることも考えられます。

  • 相続放棄期限(3カ月)を過ぎていて、遅れたことに正当な理由がみられない場合
  • 上記に解説した「法定単純承認」にあたることが明らかな場合
  • 相続放棄申述自体に添付書類などの不備があり補正に応じなかった場合

このような「相続放棄が却下される」事態を招かないよう、相続が発生したことを知った時点で相続放棄の可能性が考えられる場合、すぐに弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

相続人への連絡を忘れずに

自分が相続放棄を検討する場合、他の相続人がどのような方針なのかを確認し、場合によっては連絡を取り合うことが大切です。

上記に解説したように、同順位の相続人がまだいる状況であれば他の人の負担する債務が増加する可能性もありますし、同順位相続人全員が相続放棄するのであれば次順位の人に思いがけず相続権が発生する可能性もあります。

家庭裁判所は各人の相続放棄の手続きを個々に受理、判断しますが、他の人への連絡等を行ってくれるわけではありません。

相続放棄は個々の相続人の判断でできるため、他の相続人への連絡は法的義務ではありませんが、相続を予想していなかった親族との間でトラブルになるリスクがありますので、できる限り手続きを行う前に連絡しておいた方が安心です。

まとめ

ミミズク
相続放棄と債務について良くわかったよ。
相続放棄する場合には、相続放棄できる期間に注意が必要だね!

ウサギ
相続放棄をを検討している場合には専門家に相談しよう。
親族とのトラブルを防ぐためにも、早めの相談がおすすめだよ。

  • 相続のパターンとしては「すべてを相続する単純承認」「相続財産の限度で債務を返済する限定承認」「すべてを相続しない相続放棄」がある。
  • 相続放棄が行われると同順位相続人がいれば他の人の相続分が増加し、同順位相続人がいなければ次順位相続人に相続権が移る
  • 相続放棄をする際は法定の期限を守る、自己の相続放棄によって影響を受ける他の相続人に対して連絡を行うことが大切である。
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西岡容子

青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。

平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。

「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。

債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。

■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年   青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格 
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設

■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087

■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属

■注力分野
債務整理
不動産登記
相続

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