特定調停の費用
特定調停を取り入れる場合って、どの位の費用が必要となるの? 特定調停は、他の債務整理に比べてかかる費用が比較的少なくて済むんだよ!
少ない費用で済むなら特定調停にしようかな? 債務整理はかかる費用で選んではいけないよ! まずは特定調停にかかる費用について、詳しく見てみよう!
「特定調停」は、裁判所で行う「民事調停」によって債務の返済方法などを見直し、それにより個人や法人の破綻を防ぐことを目的とした債務整理です。
裁判所で行うとはいっても、個人再生や自己破産のように裁判所が主導し、手続きの流れが厳格に決まっているわけではなく、あくまでも債権者と債務者の話し合いによる「私的手続」です。
よって、利息引き直し計算後の元本をそれ以上カットすることは難しく、返済期間を延ばす、利息を見直すといった方法で現実的に返済計画を探っていくものと考えておく方がよいでしょう。
そのような意味で、内容的にはどちらかといえば「任意整理」に近いものがあります。
ただ、特定調停の場合、前提としては「債務者本人が代理人を立てずにみずから申立人となる」というスタイルが想定されており、それに伴って費用も安く済むことが多いといえます。
特定調停にかかる費用とは
特定調停を完全に「債務者一人で」行う場合と「弁護士(司法書士)に相談する場合」で費用がだいぶ異なってきます。
もし、どうしても手続き費用を抑えたいということであれば、最初から最後まで自分で手続き方法を調べる+記入例を参考にしながら裁判所に申立書の記入について質問するといったやり方で費用を最小限に抑えることができます。
ただし、下記で「特定調停のデメリット」を説明しますが、自分で行う場合のリスクもあることを知っておかなくてはなりません。
自分自身で手続きを進める場合
最初から最後まで弁護士(司法書士)に相談しないで特定調停を行う場合は他の手続きと比べてもかなり安く済ませることができます。
特定調停は「東京簡易裁判所」の管轄であり、実際に申し立てる先は「債権者の所在地の簡易裁判所」となります。
具体的な費用は各簡易裁判所によって若干異なりますが、債権者1社あたり500円程度の申立手数料(収入印紙)と、債権者側へ書類を送る際の実費として郵便切手を予納します。
つまり、10社以内くらいの債権者数なのであれば、トータルで1万円~2万円程度見ておけば足りることになります。
弁護士に相談する場合の費用
ただ、もし特定調停を申し立てる前提として弁護士(司法書士)に何らかの形で相談することになれば
「上記の裁判所関係費用+法律家報酬」がかかります。
具体的な相談料は各弁護士(司法書士)事務所によって異なります。
弁護士は平成16年まで、司法書士は平成14年まで弁護士会や司法書士会といった強制加入団体による「報酬規程」というルールがありそれに縛られていました。
報酬規程があった時代には各手続きの種類別に「〇〇の手続きをする場合は下限がいくら、上限がいくら」と明確に決められていたのですが、これらは現在廃止されているため、各事務所の裁量に任されています。
基本的に相談料は弁護士の場合、30分5,000円程度が相場になりますが、近年では報酬自由化とウェブでの広告競争が激化してきたことの影響もあってか、債務整理手続きに関する相談料を無料とする事務所も多くなっています。
ただ、これは次の手続きの依頼を前提としたサービスという意味で行っていることもあるため、自分で手続きを行う特定調停が前提なのであれば必ずしも無料であることを期待しない方がよいかも知れません。
そして、もしその先の具体的な申立て手続きまで弁護士(司法書士)に依頼しようとする場合は債権者1社につき着手金3万円から5万円、また、同じくらいの成功報酬がかかることも考えられます。
これらのことを考えると、もし特定調停を手続きまで依頼してしまうのであれば、さほど変わらない費用を支払うなら任意整理を選ぶ方が賢明でしょう。
というのも、任意整理と特定調停は似ていると言いながらも次の点で異なるからです。
- 任意整理では「過払い金」を加味した形での和解ができるが、特定調停では手続きの中でできないため、別途訴訟を提起して過払い金を取り戻さなければならず手間がかかる。
- 特定調停では「調停調書」が作成されるため、もし特定調停に基づく支払いが滞ると債務者はただちに「差押」を受ける危険がある。
よって、同じくらいの費用を支払うのであれば任意整理の方が負担が少ないことになります。
特定調停は「自分ですべて動き、さらに上記のようなデメリットを甘んじて受ける代わりに費用を抑えられる」という点を理解した上で使うべき手続きなのです。
では、実際に特定調停を行う場合、どのようなメリットとデメリットがあるかを確認してみましょう。
特定調停のメリットとデメリット
特定調停にはどんなメリットとデメリットがあるの? 特定調停のメリットとデメリットについて詳しく知っておかなければ、手続が完了となった後に後悔してしまうような事もあるから注意しよう!
メリット | デメリット |
相手方を選択できる | 債権者の同意が得られないと成立しない |
強制執行を停止できることがある | 過払い金を見逃すことがある |
申立てするによって債権者の取り立てを止める効果がある | 調停委員が債務整理に精通していないと、不適切な内容の合意となることがある |
費用が安い | 合意した内容がそのまま債務名義となる |
特定調停は、個人はもちろんですが、バブル崩壊後の経済の混乱によって続出していた中小企業の倒産を防ぎ、かかる期日を少なくし、すばやく再生をはかるために作られた制度です。
よって、なるべく債務者自身が自分でできるよう、そして迅速に手続きが終わるような仕組みになっています。
では、上記リンクの記事では触れていなかった点をもう少し解説してみましょう。
下記のポイントは特に「個人事業者」にとっては重要なものばかりです。
手続きの受理が早い
上記のように特定調停は「中小企業の倒産防止」を目的とするところが大きいため、債務者自身が弁護士(司法書士)に依頼せず自分で手続きし、速やかに解決に至ることを目指しています。
よって、手続きの受理自体も迅速に行われることが多くなります。
人に知られずにすむ
再生や破産のように、裁判所手続きとして厳格にその手順が決まっているものは、債務額の減額やカットなど非常に大きなメリットがある反面、官報への氏名掲載といった点で「周囲に手続きを知られてしまう」おそれがあります。
現実にはまだ十分に立ち直りが可能であっても「個人民事再生をしている」こと自体が「信用力の低下」という形でダイレクトに悪影響を及ぼします。
しかし、特定調停は個々の債権者と交渉して調停をまとめる形の「私的な手続き」であるため、公の文書に掲載されるようなことがありません。
営業の継続を前提とした手続きを希望する人にとって、これはとても重要なのではないでしょうか。
登記簿謄本を汚さずにすむ
たとえば、会社更生法であれば、裁判所によって会社登記簿の役員欄に「保全管理人」の氏名が登記されます。
通常の役員変更登記は会社が自らの意思で手続きするものですが、こういった会社更生法、民事再生法といった法律に基づく登記は「裁判所がその職権で法務局に嘱託する」ことになります。
つまり当事者の意思に関わらず行われてしまうものなのです。
そして、いったん登記簿に記入されてしまったものはその後、抹消されたとしても白紙に戻るわけではなく、履歴は残ってしまいます。
特定調停であれば当事者同士の話し合いになりますので当然、こういった登記簿への記載という心配はありません。
その他の債務整理との比較
特定調停と、その他の債務整理方法との違いを教えて! 特定調停を選んでしまうと、後から過払い金請求をできなくなってしまうような事があるから、注意しよう!
トータルの費用を比較
任意整理、個人再生、自己破産と特定調停を費用面で比べてみた場合、どの程度違ってくるのでしょうか。
債務者自身で行う場合 | 弁護士(司法書士)に依頼する場合 | |
特定調停 (債権者5社) |
約5,000円 | 約20万円~50万円 |
任意整理 (債権者5社) |
※私的手続のため郵送実費程度になるが、債権者が受け付けないことも多い | 約20万円~50万円 |
個人再生 | (個人再生委員あり)約18万円 (個人再生委員なし)約3万円 |
(個人再生委員あり)約50万円~70万円 (個人再生委員なし)約35万円~55万円 |
自己破産 | (同時廃止)約2万円 (管財事件)約27万円 |
(同時廃止)約20万円~70万円 (管財事件)約45万円~95万円 |
上で述べたように、もし弁護士(司法書士)に依頼した場合は特定調停と任意整理でそれほど費用は変わらないことが多いと思われるため、依頼を前提で考えるのであれば任意整理に軍配が上がります。
こうして表にして比較してみると断然、特定調停が良いように感じられますが、そこには落とし穴があることにも注意しなければなりません。
安さだけで決めることは危険
特定調停だと数十万円の手続き費用が浮くことから、費用を少しでも節約したいと考える人にとっては魅力的でしょう。
しかし、特定調停には致命的ともいえる欠点があります。
過払い金の見落とし
最初から本人申立てを想定している特定調停においては、そもそも最初の段階で過払い金の存在が見落とされる危険もありますし、利息制限法に従い計算をし直し、過払い金の存在に気付いていてもそれは別途請求という形になり、過払いの分を折り込んだ調停がされないことがあります。
もし、調停の内容としてうっかり「債権債務なし」などという内容で合意してしまえば後日、別途過払い金返還請求をしようと思っても貸金業者がその合意を盾に取って過払い金返還に応じてこない可能性もあるのです。
そうなれば「手続き費用が浮いたはずだったのに、過払い金が戻ってこなかったために結局損をしてしまう」という事態にもなりかねないのです。
調停委員の未熟による損失
特定調停では裁判所により「調停委員」が選任されますが、調停委員になるのは弁護士(司法書士)とは限りません。
人格識見に優れており、年齢制限(40歳以上70歳未満)をクリアしていれば法律の専門家でなくてもよいのです。
言い換えれば、債務整理について十分な知識を持たない人が選ばれることも十分考えられます。
そのような場合には必ずしも最大限に債務者側の利益を考慮した内容の合意にならないこともあるのです。
これに対し、任意整理であれば必ず代理人は法律家ということになりますので債務者にとって有利な和解ができるように努力してくれるはずです。
むしろ弁護士(司法書士)費用を支払っても総合的に見てプラスになることも考えられます。
迷ったらまず弁護士に無料相談
どの債務整理を選べばよいか迷ったら、どうすれば良いのかな? 債務整理の案件を豊富に取り扱っている弁護士や司法書士に依頼すると安心だね!
ケースによっては特定調停、任意整理のどちらにするべきか悩むこともあるでしょう。
そのような場合には、まず弁護士(司法書士)の無料相談を利用して、過払い金発生の可能性があるのかどうか、相手方の債権者の質などを考えて特定調停に踏み切っても大丈夫なのかどうか、専門家の意見を聞いてみることも大切といえます。
もちろん、利息引き直し計算をする前には断言できない要素もあるでしょうから、ひとまず引き直し計算を依頼してみて、そこから方針を決める方がより適切な手続きを選択できる可能性が高くなります。
特定調停の費用、まとめ
特定調停は安く済んで魅力的と思っていたけれど、注意点もあるんだね。 自分の債務内容をしっかりと把握し、今後の生活を考えた上で、債務整理を選ぶ事が大切となるよ!
- 特定調停は原則的に債務者本人からの手続きが予定されているため、手続き費用は裁判所に支払う実費1万円~2万円程度で済むことが多い。
- 弁護士に相談するのであれば30分5,000円程度の相談料が、手続きまで依頼するとなれば債権者によって数十万円程度の費用がかかることもある。
- 弁護士(司法書士)への手続き依頼を希望する場合は任意整理の方がメリットが多い。
- 特定調停には安く手続きできる、迅速などのメリットはあるが、過払い金を見逃す、合意した内容を守れないと差押をされる危険があるなどデメリットも多い。
- 自分のケースで特定調停が適切かどうかを判断することは難しいため、無料相談などであらかじめ弁護士(司法書士)に相談しておくことが望ましい。
債務整理の森編集部
最新記事 by 債務整理の森編集部 (全て見る)
- もりた法律事務所(横浜市鶴見区)の評判の真実(悪評含む)を体験者の口コミで徹底分析 - 2022年9月6日
- 債務整理の弁護士選定はかなり難しい?弁護士報酬の考え方など後悔しない方法をご紹介 - 2021年10月29日
- 麻布龍土町法律事務所(港区)の評判の真実(悪評含む)を体験者の口コミで徹底分析 - 2021年9月30日
厳選!おすすめ記事BEST3
- 1
-
債務整理のベストな選択とは?経験談を踏まえて基礎情報から弁護士の選び方まで一挙解説
もし多額の借金を抱えてしまった場合、もしくは借金を返せなくなったと思った場合、誰 ...
- 2
-
債務整理に注力しているおすすめの事務所一覧【徹底調査】
当サイトでは、実際の取材や債務整理の相談を行なった体験談をもとに、おすすめの弁護 ...
- 3
-
債務整理のベストな選択とは?経験談を踏まえて基礎情報から弁護士の選び方まで一挙解説
もし多額の借金を抱えてしまった場合、もしくは借金を返せなくなったと思った場合、誰 ...
- 4
-
任意整理の弁護士費用はどれくらい異なるの?おすすめ事務所を徹底比較
借金に関する相談は、弁護士事務所や司法書士事務所において無料で行なうことができま ...
- 5
-
債務整理のベストな選択とは?経験談を踏まえて基礎情報から弁護士の選び方まで一挙解説
もし多額の借金を抱えてしまった場合、もしくは借金を返せなくなったと思った場合、誰 ...
- 6
-
ひばり法律事務所の評判・口コミを徹底分析 直接取材でわかった依頼するメリット・デメリット
ひばり法律事務所の特長 累計1万件の債務整理対応実績 緊急性に応じて即レスするス ...