NHKの受信料を払わない(滞納)と最終的にどうなるのか
NHKの受信料って払わないとどうなるの?
NHKの受信料は、通常の借金と同じ扱いになるから、最悪の場合、差押えになってしまう事もあるんだよ。
でもNHKは全く見ていないよ?
それでも支払わなければいけないの?
よし!
では早速NHKの受信料を支払う必要がある人や、滞納するとどうなるのかを詳しく見ていこう!
インターネットの普及に伴って「テレビ放送によって情報を得ること」の重要性は昔よりかなり下がっているといえます。
特に若年層は日本の公共放送である「NHK」を全く視聴しない、という人も多いでしょう。
ただ、「NHKを見ないから受信料を払わなくてよいだろう」という視聴者側の言い分と、「受信設備がある以上、受信契約、受信料支払いは義務」というNHK側の言い分は、長きにわたり対立してきました。
これについて平成29年12月に最高裁で一つの結論が出されました。
では、NHKの受信契約とは強制されるべきなのか、受信料を払わずにいるとどうなるのか、免れる方法はあるのかなどを考えてみましょう。
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NHKの受信料についての問題点
引用:https://www.nhk.or.jp/
そもそも、NHKの立場とは?
NHKと民間放送は同じようにテレビ番組を放送していても、その立場がまったく異なります。
NHKは「放送法」という法律に基づいて作られた法人であり、契約の対象となる国民からの受信料収入で番組を作成しています。
つまり、民間の会社として「スポンサー」からの収入を財源に番組を作成している民間放送とは成り立ち、性質が違うのです。
NHKの目的は
「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うこと」
とされています。
NHKは視聴者との間で「受信契約」をしていることを根拠にして契約者から受信料を徴収し、それが番組制作などの財源になるわけですが、営利目的で業務を行うことや他人の営業に関する広告の放送をすることが禁止されています(つまりCMを流してはいけない)。
しばしばNHKを見ない人達との間で論争になるのが「NHKとの契約は果たして義務なのか?」ということです。
契約を強制されることは?憲法違反か
NHKと契約したくない視聴者の言い分、解釈に受信設備(テレビなど)を設置したことにより受信契約を強制されるというのは、
- 憲法13条(個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)
- 憲法21条(集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密)
- 憲法29条(財産権)
に違反しているというものがあります。
しかし、下に説明する平成29年12月6日の最高裁判決では、放送法の趣旨を実現するため契約の強制に合理性があることを認め、「憲法違反ではない」という見解を明らかにし「契約義務がある」と結論づけています。
NHKと契約済みで滞納が続いた場合
NHKの受信料の滞納は時効になることもあるのかな?
NHKの受信料も、5年で時効になるよ。
だけど、実際には、時効の中断が行われることがほとんどだから、時効を目指すのは得策ではないね。
では、契約義務があるという前提で考え、契約を交わしている場合に滞納してしまったらどうなるのでしょうか?
NHK受信料に時効はあるのか
通常の債権(貸したお金の返済などを請求できる権利)についてはそれを請求できる時から5年、10年といった「消滅時効」期間が民法で定められています(債権の種類により異なる)。
NHK受信料については時効が「5年」であることがNHK公式サイトに明記されています。
もし、その間に「時効の中断」といって、請求を受けたり債務を承認したり(一部を支払う、分割払いにする約束をするなど)といった事実があれば時効はリセットされ、また0からスタートするため、実際にはそれほど時効で支払いを免れることができる事例は多くないと思われます。
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引っ越した場合はチャラになるのか
たとえ引っ越しをしたとしても、既に発生している受信料債務が消滅するわけではありません。
引っ越しさえしてしまえば請求はできないのではないか?と思うかも知れませんが、具体的に弁護士に債権回収を依頼し、訴訟準備の状態に入れば「職務上請求書」という書面を使って債務者の住所を追跡することはたやすくできるのです。
「引っ越せば済む」と考えて安易に受信料滞納を続けていると、後からまとめて多額の請求が来る可能性もありますので注意しなければなりません。
契約済みで払えない場合どうなるのか
もし、受信料契約を交わしているにもかかわらず支払いを怠っていると、まずはNHKからの督促状が届きます。
合わせて「地域スタッフ」と呼ばれる、集金や契約等の活動を行う訪問員が家に訪ねて来て、支払いを促すこともあります。
それでも数年間、無視したり滞納を続けていると「支払督促」という比較的簡易でスピーディな手続きで回収をはかってくることがあります。
支払督促の手続きが始まってしまうと、もし債務者が「督促異議」を出さずに放っておけばあっという間に「仮執行宣言」といって、それで強制執行(差押え等)ができる書面が作られ、最終的には財産等を差押えられてしまいます。
受信契約を解約する方法
では、「NHKを全く見ていないのだから、NHK受信料の契約そのものを解約できないのだろうか?」と思う人もいるのではないでしょうか。
ただ、「民間放送は見ているがNHKを見ないので解約します」というわけにはいきません。
NHKを受信できる受信機(テレビなど)が設置されている限りは契約義務があるのです。
放送法第64条
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。
テレビをもう捨てて、新しい物を購入しない予定なので解約しようと思ったら、WEBでの解約等はできず、NHKに電話してその旨を伝えなければなりません。
なお、このような理由で解約するのであればテレビを処分したことの証明を求められることもあるので、処分した際の明細書などを取っておくとよいでしょう。
処分したこと、テレビその他の受信機器が全くないことが明確になれば解約できる可能性が高くなります。
NHKと未契約で払っていない場合
NHkと契約をしない場合には、どうなるの?
テレビを保有しているのにNHKと未契約であると、裁判を起こされてしまう事もあるんだ。
裁判になると、過去の分の受信料も支払う必要が出てくるから注意が必要だよ。
そもそもNHKとの契約義務がないと主張して契約締結そのものを拒んでいる場合はどうなるのでしょうか?
これについては2017年12月6日に最高裁大法廷での判決が出されました。
ニュースでも取り挙げられたため、記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
裁判沙汰となったケース
こちらの裁判では主に2つのことが争点となりました。
- NHK受信の契約を締結していないのに受信料を支払わなくてはならないのか?
- 判決によって受信契約の締結を強制された場合、受信設備設置の時に遡って受信料を支払わなくてはならないのか?
では、まず1.から見てみましょう。
こちらについては、
- 「受信契約の締結は義務づけられている」
- 「契約を締結している以上は受信料を支払わなければならないこと」
を明確に結論づけました。
契約を義務とすることが憲法違反でないと判断されたことは上記のとおりです。
2.については
- 「受信契約の申込み(NHK側から利用者へ)に対して承諾の意思表示を命ずる判決の確定により契約が成立し、受信料債権が発生するのは受信設備の設置月以降である」
とし、遡っての支払義務を明確にしました。
その理由としては、受信設備の設置後速やかに契約した者より受信契約が遅れた者の方が受信料が発生する時期が遅いとすると不公平が生じるから、というものです。
この判決では
「視聴者が受信設備を設置したりNHKが一方的に契約書を送り付けただけでは契約の締結がされたとはいえないものの、裁判により契約の意思表示を擬制(意思表示したとみなす)することができる」(法律行為についての意思表示擬制については民法414条2項但し書きに規定されています。)
ということになります。
地域スタッフが契約を促すために営業所から訪問してきて、自分の家の敷地に居座っている場合「住居侵入罪」や「不退去罪」といった言葉をちらつかせて追い返す行為をすすめるサイトも数多くあります。
しかし安易にこのような対応を続けていると逆に上記のような裁判を起こされる危険もあるということです。
差押えを回避するには
上記のように、結局のところ裁判までされてしまえば実際に受信機器を使用している当事者は契約を拒否できない=支払を拒めないということになります。
受信契約が義務であり、受信設備設置の時から受信料の支払義務が生じているとなると、結局のところ支払いを拒み続けていれば通常の債権と同じように進んでいきます。
支払督促や裁判⇒判決とその確定⇒差押えと進んでいけば、最後には預金を差押えられておろせなくなったり、給与を差押えられて会社に深刻な滞納がバレたりという事態になります。
差押えを回避するには「滞納しそうになった」時点で(滞納してしまった後ではなく)すぐに受信料窓口などに連絡して分割払いなどの相談をすることです。
もちろん、無制限に分割が認められるわけではないでしょうが、訴訟や支払督促をするより少しずつであっても回収できた方が手間、コストの削減になるため、NHK側にとってもメリットがあります。
受信料契約を合法的に拒否するには
なんとかしてNHKの受信料を払わずに済む方法はないのかな?
テレビを見ることができる機器を持っている場合には、難しいね・・・
だけど、実際にテレビを見ることができる機器を保有していない場合や、破棄した場合には、それを証明する物が必要になるよ。
テレビ、ワンセグ携帯やパソコン、タブレット、カーナビなど、テレビ放送を受信できる機器を設置、所有している人は、現在の裁判例でいけば受信契約の義務があります。
たとえば勤め先からの支給品など、会社の名前で契約している携帯(他人名義)であっても実際の使用者が自分であれば、やはり義務は生じているものと考えられます。
よって、これらのものが一つでもあれば契約を合法的に拒否することはできません。
もし本当にこれらの機器を一つも所持していない人はそのことを地域訪問員等にしっかりと説明する必要があります。
~結論~払った方が良いのか
結局テレビを持っている場合には、NHKの受信料は免れることはできないって事だよね?
そうだね。
テレビを保有したら、必ずNHKの受信料を支払う必要があると考えておこう。
受信機器(テレビに限らない)を設置している人
現行の法律ではNHK受信契約を拒絶することができません。
また、受信機器を設置したのに契約を先延ばしにしていると、万一、裁判でNHK側が勝って受信契約の意思を擬制された場合に、設置の時に遡って支払義務が発生してしまうことになります。
昨年の最高裁判決より以前にアップされているウェブの記事などで「NHKを受信できないようにしていれば支払わなくてよい」といったものもありますが、今ではそのような言い分は通用しづらくなっているということです。
つまり受信機器を設置した以上、最初から契約、支払いをしておくことがベストなのです。
受信機器を設置していない、もしくは廃棄した人
受信機器を持っていたが廃棄した人の場合、上記のように廃棄した証明書があればそれ以降は解約できる可能性が高くなります。
しかしそのような人でも既に発生している受信料債務は支払わなければなりません。
最初から設置していない人は契約、支払いの必要はありませんが、それをNHK側に納得させるために何らかの証明を求められることもあります。
契約義務があるにもかかわらず契約しない、支払わないということを「なんとなく払わなくてもよいと思ったから」と安易に考えていると、上記のように訴訟を起こされて過去の分まで遡って請求され、その金額に驚愕・・ということもあります。
もし支払えないほどの金額を遡って請求された、という事態になってしまったら一度弁護士に相談し、相談者のケースで支払いを免れる方法(時効の成立など)はないかどうか確認してみることをおすすめします。
NHKの受信料を払わない(滞納)と最終的にどうなるのか、まとめ
NHKの受信料について、詳しく説明してくれてありがとう!
裁判になってしまう事がないように、テレビを持っているならできるだけ早く契約をする事が大切だね!
裁判になってしまったら、勝てる要素はないわけだから、裁判になってしまう前に契約をしておくのがお勧めだよ。
- NHKは放送法に基づいて設立された法人であり、受信料収入により番組制作などが行われているため民間放送とは全くその性質が異なる。
- NHKとの契約が強制されることは憲法違反ではないか?ということが長年論争の的になってきたが、放送法の趣旨を実現するため合理性がある(=憲法違反ではない)という判決が出されている。
- NHK受信料の時効は5年であり、中断事由がない限り5年より以前のものは時効を援用できる。
- たとえ引っ越しをしても、既に発生している受信料の債務がチャラになるわけではない。
- もし受信料の滞納を続けると、裁判を起こされて差押えなどに致ることもある。
- 受信契約が義務であるという判決が出されたため、仮に契約の意思を擬制する裁判を起こされてNHKが勝訴したら、受信機器設置の時に遡って支払義務が生じる。
- もし受信機器自体がないのであればそのことを証明できれば契約を解除できる可能性もある。
- 結局、テレビやワンセグ機能付き携帯電話、カーナビなど種類を問わず受信機器を設置している状態であれば契約義務があり、そのため支払義務もあると考えるべきである。
- 支払義務が時効により消滅しているのではないかと思われる状況のもとでは、一度弁護士に相談して回答をもらうことが望ましい。
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青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
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債務整理
不動産登記
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