任意整理のプール金ってどういう意味?何に使われるの?
任意整理の手続きを進めていたんだけれど、弁護士事務所に毎月お金を振り込むように言われたんだ。
これって何のお金なの?
プール金の事だね。
弁護士事務所によっては、債務者が今後返済できるかどうかをテストするために、プール金の振り込みをさせる弁護士事務所もあるんだ。
プール金って何?
何に使われるの?
毎月の返済に充てる事もあるし、弁護士費用に充てる事もあるよ。
今回の記事ではプール金について、詳しく説明するね!
任意整理は借金を返済していくタイプの手続きであるため、債務者が返済を継続していけるのかどうかについては、担当の弁護士(司法書士)や債権者側から見ても不安に感じることがあります。
そこで、「プール金(積立金)」といういわば「履行の予行演習」を行って、債務者の返済能力や返済に対する誠意を確認するという方法があります。
任意整理のプール金(積立金)って何?
任意整理は自己破産とは異なり、手続きだけで借金から解放されるわけではなく、債権者と個別に和解をしてその金額を決められた期間で、決められたとおりに返済していかなくてはなりません。
よって、
- 最初の返済計画に無理がないこと(=生活費を支払った上で返済もできる能力があること)
- 債務者自身にきちんと返済する誠意があること
の二点が揃っていることが不可欠ですので、事前にそれを確認しておくことが必要なのです。
そもそも収入が不安定なのに任意整理を選んだのであれば、そのこと自体が間違っていますし、返済計画の上では問題ないケースでも本人がルーズなために滞納が続けば、ペナルティとして一括返済を迫られることになります。
このような状態に陥れば、せっかくお金や時間をかけて任意整理しても何の意味もないことになってしまいます。
そうならないための予防策として効果的なのがこの「プール金(積立金)」です。
プール金は、弁護士(司法書士)が事件を受託してから任意整理による和解が成立するまでの期間に、月々弁護士(司法書士)名義の口座にあらかじめ債務者と話し合って決めた金額を振り込むといった方法で行われるのが一般的です。
なお、債権者への返済が始まってからは、
- 債務者自身が債権者に返済を行う
- 弁護士(司法書士)が手数料をもらって債権者への返済を行う
という2つの返済方法がありますが(各事務所の方針による)、後者の場合は債務者は和解契約締結後も(返済期間中はずっと)弁護士(司法書士)の口座に振り込みをし続けることになります。
プール金の目的
プール金の使用用途は誰が決める事になるの?
弁護士事務所から支持があることが多いね。
弁護士費用に充てるように言われる事もあれば、弁済一時金として使うように言われる事もあるんだ。
では、プール金の目的についてもう少し掘り下げて考えてみましょう。
返済の予行練習
繰り返しになりますが、任意整理は利息を法的に適正な割合まで引き直して計算し、それでも残った債務を返済することが前提の手続きです。
よって、「依頼者がちゃんと約束の金額を返せる人なのかどうか」が非常に重要な問題であり、その予行練習が必要なのです。
債権者と和解交渉をする前に弁護士(司法書士)が債務者本人から聞き取りをして「月額いくらくらいなら返済できそうか?」をシミュレーションするのですが、債務者本人に具体的な返済可能金額を尋ねてみると見通しが非常に甘いことがあります。
借りたお金を返済に回す、いわゆる「自転車操業」を長く行ってきた債務者の中には、適正な家計管理の感覚が身についていない人も多く、実際に返済できる金額以上の計画を立ててしまうのです。
任意整理では債権者に源泉徴収票を提示したりすることもあまりなく、裁判所が関わらない分、返済計画のチェックが甘くなりがちです(このあたりはもちろん受託した法律家サイドにも責任の一端があります)。
また、性格面でも「約束の期日を守る」という意識が薄い債務者も多いため「決められた日に、決められた金額を振込む」という習慣づけをしなければならないのです。
任意整理で債権者との間に取り交わす「和解書」にはほぼ例外なく、下記のような「約定の2回分を滞納すれば残額の一括返済を迫られても異存はありません」という内容の「懈怠約款」と呼ばれる条項が入っています。
乙(債務者)は、以下の事由の一でも生じたときは、期限の利益を喪失し、前条の和解金の残金をただちに一括して支払う。
- 前条の支払を分割金の2カ月分を超えて遅滞したとき
- 自ら破産申出を行い、あるいは、第三者から破産の申立てを受けたとき
- その振出しにかかる手形・小切手が銀行協会の不渡処分を受け、あるいは、銀行取引停止処分を受けたとき
つまり、いざ本番である債権者への返済が始まるとむやみに「返せないから待ってください」とは言えなくなるため、予行演習をすることには大きな意味があります。
弁済一時金の確保
本番の返済が開始する前の一定期間にある程度まとまった資金を作っておくことは「いざ」という時のためにも重要です。
任意整理は3年~5年くらいの長期計画で返済していくことになるため、途中で家計から冠婚葬祭のように大きな出費があるなど、予測できない事態が起こることもあります。
そのような時であっても上記の「懈怠約款」がある以上、滞納するわけにはいきませんからプール金に手をつけずに取っておくことができればそれは大きな力を発揮します。
また、「1回目の支払いだけは少し多めに」という条件を債権者が出してきた場合にもプール金を利用することができます。
弁護士費用に充てる
任意整理の弁護士報酬は「債権者1社あたりいくら」という形で設定されることが多いため、債権者数が多くなるとかなりの金額にのぼることもあります。
そのような場合はプール金を報酬の分割払いとして充当するという使い方もあります。(ただ、報酬全額を納付し終わらなければ和解交渉に入らない事務所もあるため事前の確認は必要です)
弁護士費用をどのように支払うのか、プール金で充当するのかどうかは最初の段階で打ち合わせしておき、行き違いがないようにしなければなりません。
すべての法律事務所(司法書士事務所)がプール金(積立金)を課すわけではない
任意整理をする時には、必ずプール金は必要なの?
弁護士事務所によって、プール金の有無は変わってくるよ。
だけと、たとえプール金を用意するように言われなくても、任意整理の手続きを始める事で返済は一旦ストップするわけだから、その期間に積み立てをしておこう。
任意整理は裁判所を通じない私的な手続きです。
そのため、具体的な手続きの流れとなると、代理人となる弁護士(司法書士)により進め方が若干異なります。
A事務所ではプール金を必須にしているが、B事務所では全然積立てをさせない、ということもあるのです。
また、参考として「個人再生」でもこのようなプール金制度があることを知っておきましょう。
個人再生については裁判所が関与する手続きであるため、進行の仕方は法によって、あるいは各地方裁判所の運用によって決まります。
個人再生でもプール金(積立金)とほぼ同じ制度として「履行可能性テスト」というものがあります。
たとえば東京地裁の場合は、
- 個人再生委員に予定弁済額相当の予納金を分割予納し、大体6カ月後に個人再生の報酬を差し引いた金額を清算する
という運用を行っています。
※個人再生委員・・裁判所から選ばれ、裁判所に代わって個人再生の具体的手続きを補助する法律家などのこと。
これが選ばれる裁判所では個人再生委員への報酬がかかるため、債務者の負担が増えることになる(15万円~25万円程度)。
その他の裁判所でも債務者に毎月予定弁済額の積み立てをさせ、振り込みを受けた申立代理人(弁護士)がその通帳コピーを裁判所に提出するという運用をしているところがあります。
この積立実績によって「再生計画案(債権者への返済の案)」が実行可能だということを裁判所に対して疎明(=確からしいと思わせること)し、裁判所はこれを見て再生計画案の認可を出す判断材料の一つにするのです。
プール金に必要となる金額の目安
プール金はどの位の金額になるの?
収入や生活状況に応じて変わってくるよ。
必ずしもこの金額をプール金として充てなければいけないという決まりはないんだ。
では、具体的に月額いくらくらいをプール金として積立てるのでしょうか?
これについては私的整理である任意整理では弁護士(司法書士)と債務者の話し合いによって決まることになります。
任意整理で多くの弁護士(司法書士)が基準としている「各債権者へのひと月あたりの返済額」を提案する際の目安としてこのような計算式があります。
プール金を5万円と設定し、総債務額が120万円、提案先の債権者の債権額が30万円という前提にするとこのようになります。
この計算式を使うと、「債務者にとって積立て可能なプール金がいくらになるかによって、債権者に提案する支払月額が必然的に決まってくる」ということになります。
要するに、プール金が少なすぎる=債権者への提案額が少なくなる=和解成立が難しくなる、ということですが、むやみにプール金を増やすと今度は債務者の生活が立ちゆかなくなるため、バランスが難しいところです。
弁護士(司法書士)は通常、プール金を決定する際に「今後おおよそ3年間(弁済終了までの期間)の確実な収入見込み」を確認して計画するはずです。
ここにはボーナスや実家の援助、不定期な副業収入などは含まないことが普通です。
また、弁済期間中に子供の進学や車検、車の買い替えなど大きな支出が予測される事態はそれも考慮に入れるべきです。
よって、プール金は一律に必ずいくら、というわけではなく、債務者の収入の額や安定性、家族の状況などを考慮して決められます。
いつから積立てを始めれば良いの?
プール金はいつからスタートする事になるの?
契約を交わした時からスタートするのが一般的だね。
積立てを開始する時期ですが、一番理想的なのは「相談者が弁護士(司法書士)に相談に行き、委任契約を交わした月」からです。
その後弁護士(司法書士)はすぐに債権者に受任通知を出すので借金の取立てと返済はいったんストップします。
よって、生活費にかなり余裕が出てくる人も多く、その分をプール金に回すことができるはずなのです。
プール金を用意できないとどうなるの?
プール金が用意できなかった場合には、どうなるの?
任意整理での返済能力がないと判断されてしまうんだ。
その結果、他の債務整理を選択しなければいけない可能性もあるし、弁護士から契約解除を伝えられることもあるんだよ。
いったん弁護士事務所(法務事務所)との間で約束したプール金を積み立てられなかった場合は
- 「約束した弁護士費用(司法書士費用)の支払がない」という理由で委任契約を解除される
- 「任意整理は不適切」として自己破産への切り替えをすすめられる
といった事態が考えられます。
任意整理がしたくてもそのスタートラインに立つことすらできなくなってしまうのです。
上記のようにプール金という形で積立てをさせるかどうかは、各弁護士(司法書士)で異なります。
依頼先によっては、和解成立までは特に事務所への振り込み指示などが行われないこともあります。
しかしそのような場合でも返済開始した時の練習として自分でいくらかの積立ては行っておくべきです。
もし全然月々の余剰がないのであれば、そもそも返済が始まった時に債権者への振り込みができないわけですから「任意整理はできない」という結論になるからです。
ただ、専門家の報酬と返済資金をまとめて準備するのは難しいが、債権者への返済資金だけなら何とかなりそう、という人は一つの選択肢として「法テラス」の利用が考えられます。
法律相談料や任意整理の報酬につき、一定の条件をクリアしていると立替えを受けられる「民事法律扶助」という制度がありますので、気になる人は弁護士(司法書士)に相談に行った際に制度について詳しく説明を受けることをおすすめします。
返済計画を準備する
無理のないプール金の設定にするためにはどうしたら良いのかな?
弁護士と相談しながら、返済計画をしっかりと立てることが必要だね。
任意整理成功のためには綿密な返済計画が不可欠です。
返済計画を準備するにあたっては、
- 各債権者がどのようなタイプか(分割回数の上限予測、対応の速さなど)
- 債務者の収入の見込み額、生活の中でかかるお金の見通し
これらをなるべく正確に予測しなければなりません。
また、案件によっては「過払い金(高金利のため利息を払い過ぎていた)」が一部の業者に発生していることがありますが、その取戻しができるかどうか、取戻し可能金額や時期により戻った過払い金をどの業者の返済に充てるかを法律家が的確に判断することも必要です。
返済計画を立てている段階で「今回の案件では任意整理自体に無理がある」と判断されることもあります。
債権者に提案する返済月額は多少ゆとりを持って返済できる金額に設定しておくことが理想ですが、折り合いがつかないのであれば手続きの方針変更などになっても仕方ありません。
このような場合、任意整理の経験が豊富な弁護士(司法書士)であれば、債権者ごとの特徴をあらかじめ把握した上で全体のバランスを取り、最終的に無理のない返済月額にすることができる場合もあります。
そのような意味でもやはり任意整理を依頼する法律家は誰でもよいわけではなく、無料相談などを利用してよく吟味することが大切なのです。
任意整理のプール金(積立金)とは?まとめ
弁護士にお金を振り込むように言われた時には不安を感じていたんだけれど、プール金について詳しく知ることで、納得できたよ!
プール金があるだけで、今後の返済が非常に楽になることもあるからね。
返済が始まるまでにある程度の費用をプール金として貯めておくのがお勧めだよ。
- 任意整理は債権者に返済していく手続きであるため、債務者の返済能力についてある程度の確証を得ることが必要であるが、そのために積み立てられるのがプール金(積立金)である。
- プール金(積立金)は、任意整理を受任した弁護士(司法書士)の口座にあらかじめ決めた金額を月々振り込む方法で行うことが一般的である。
- プール金には返済の予行練習、弁済一時金の確保、弁護士費用に充てるという目的がある。
- プール金を積み立てさせるかどうかは各事務所によっても異なる。
- プール金の具体的金額は各債務者の収入や生活状況等により異なる。
- あらかじめ決めたプール金を振り込めなかった場合、「弁護士(司法書士)からの委任契約解除」「債務整理の方針を自己破産に変更」といった事態になることもある。
- 任意整理成功のためにはなるべく正確な将来予測と返済計画が大切であるが、複数債権者の間でバランスを取って債務者に無理のない和解を成立させるためには弁護士(司法書士)の能力の高さが要求される。
債務整理の森編集部
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