離婚するとき、財産分与に借金は含まれる?専門家が解説
借金って財産分与に組み込むことはできるの?
今回の記事では、財産分与可能な借金と財産分与できない借金について詳しく見ていこう。
まずは、財産分与の対象となる資産にはどんなものがあるか、チェックしていくよ!
離婚に伴い財産分与を行うとき、「借金」も対象になるのでしょうか?
相手名義の借金を負担させられる可能性があるのか、あるいは自分名義の借金をどのように清算すればよいのか知識をもっておかないと、離婚後に不利益を受けるリスクが高まります。
今回は離婚の財産分与対象に借金が含まれる場合と含まれない場合、借金の清算方法を解説します。
カードローンや住宅ローンなどの負債を抱えた状態で離婚される方はぜひ参考にしてみてください。
離婚時に財産分与対象となる資産
離婚時財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した共有財産を離婚時に分け合うことです。
結婚生活中に夫婦が共同で作った財産は、離婚時に分け合うのが公平なので、法律も離婚時に財産分与請求する権利を認めています。
財産分与対象資産の例
以下のような財産で夫婦が共同で婚姻中に積み立てたものは、名義を問わずすべて財産分与対象になります。
現金、預貯金、電子マネーなどのお金
現預金、電子マネーなどの「お金」は夫婦どちらの名義であっても財産分与の対象です。
保険、個人年金
解約返戻金つきの生命保険、学資保険、火災保険などの保険や個人年金は財産分与対象です。
ただし独身時代から加入していた保険の場合、婚姻年数に比例する部分のみが財産分与対象になります。
動産
婚姻中に購入した不動産は居住用だけではなく投資用物件も財産分与対象です。
住宅ローンが残っている場合、家の価値からローンの残債額を差し引いた価額が財産分与対象になります。
売却して清算する場合、売却金額から経費を引いた残りを財産分与の対象にします。
貴金属、時計、家具や家電などの動産類
結婚後購入した高額な貴金属や時計、絵画、家具家電なども離婚時に価値があれば財産分与の対象になります。
なお家具家電などの動産類は、購入時の価額ではなく離婚時(もしくは別居時)の価値で評価します。
退職金
離婚後10年以内に退職予定があり、退職金の支給がほぼ確実といえる状態であれば退職金も財産分与対象になります。
財産分与対象にならない資産
財産分与対象になるのは「結婚してから形成した財産」に限定されます。
夫婦のどちらかが独身時代から持っていた財産は財産分与対象になりません。
またどちらかの親や親戚から贈与されたり相続したりした財産も「特有財産」となるので財産分与の対象になりません。
財産分与の割合
裁判所が介入する場合には、2分の1ずつになる場合がほとんどだね。
財産分与の割合は、夫婦が話し合って納得すれば何割ずつにしてもかまいません。
たとえば生活力のない妻が全部もらってもよいですし、収入額を考慮して夫が6割、妻が4割などとするのも自由です。
ただし裁判所が判断する場合、財産分与割合は基本的に夫婦で2分の1ずつとします。
妻が専業主婦で収入がなくても「妻が家を守っていたから夫が外で働いて収入を得られた」と評価され、妻にも同じだけの貢献があると考えられるからです。
自分たちで話し合って決めるときにも、お互いが2分の1ずつとするのが公平で納得しやすいでしょう。
借金が財産分与対象になる場合とならない場合
夫婦が借金をしている場合、財産分与の対象になるケースとならないケースがあるので、それぞれみていきましょう。
財産分与対象になる借金
財産分与対象になる負債は「夫婦の生活を維持するため」に発生した債務です。
たとえば食費、水道光熱費や子どもの教育費などのためにカードローンなどの借金をした場合や夫婦で居住する家の住宅ローン、家族で利用する車のローンを組んだ場合などには負債が財産分与対象になります。
負債が財産分与対象となる具体例
- 生活のためのクレジットカード債務(ショッピング、キャッシング)
- 生活費のためのカードローンや消費者金融の借金
- 生活費のために親や親戚、友人などの個人から借金
- 夫婦で居住する家の住宅ローン
- 家族で乗るための車のローン
- 未払いの水道光熱費
- 未払いの通信費、スマホ代
- 未払いの子どもの学費
財産分与対象にならない借金
夫婦の生活と無関係な借金は財産分与対象になりません。
たとえば個人的な趣味の車を購入するためのローン、パチンコなどのギャンブルや高級ブランド品を買うためのローン、投資に失敗して借金した場合などには財産分与対象から外されます。
負債が財産分与対象とならない具体例
- 趣味の高級ブランド品や宝石、アクセサリー類を買うための借金
- パチンコやパチスロ、競馬などギャンブルのための借金
- 株式や先物、仮想通貨など投資のための借金
- 個人的な趣味の車のローン
- 旅行や高級レストランなど豪遊するためのローン
- 個人的な友人や取引先との交際費のための借金
借金を財産分与する方法
借金を財産分与するには、具体的にどうすればよいのでしょうか?
資産から負債額を差し引いて清算
負債を財産分与する場合、基本的に「資産額」から「負債額」を差し引いて清算します。
たとえば預貯金や保険などの資産が1000万円、カードローンなどの負債額が300万円なら、700万円(1000万円-300万円)が財産分与対象です。
夫名義の資産が1000万円、夫名義の負債が300万円とすると、夫は妻へ350万円(700万円×2分の1)を払い、借金は離婚後も夫が払っていくことになります。
住宅ローンの場合
住宅ローンが残っている場合、ローンの残債額を住宅の価値から差し引いて計算します。
たとえば2000万円の価値のある住宅で1500万円のローンが残っている場合、家の価値は500万円(2000万円-500万円)です。
家の名義と住宅ローン名義が夫の場合、夫は妻へ250万円(500万円×2分の1)を支払い、離婚後は夫が残ったローンを全額支払います。
もしくは家を売って250万円ずつの現金を取得する方法もあります。
「マイナス」の財産分与はできない
負債の額が資産額を上回り「全体としてマイナス」になってしまう場合、どのように財産分与すればよいのでしょうか?
たとえば100万円の資産があるけれども生活のための負債が300万円残っていて、差し引きすると「-200万円」になってしまう場合などです。
この場合「借金を平等に分担すべき」と考えてしまう方が多数おられます。
たとえば200万円の借金がある場合、相手に100万円を負担させようとするのです。
しかし「マイナスの財産分与」は認められません。
たとえば夫が200万円の借金をしていて資産がまったくない場合、妻に100万円を払わせることはできません。
離婚後も夫が自分で200万円を払っていく必要があります。
住宅ローンがマイナスになる場合
住宅ローンについても同じことがいえます。
家の資産価値から住宅ローンの残債額を引いてマイナスになったら、家は財産分与の対象から外れます。
たとえば夫名義の1500万円の価値のある家があって夫名義の2000万円の住宅ローンが残っている場合、妻に250万円の住宅ローンを払わせることはできません。
家は夫が取得して、住宅ローンの残債は夫が全額払う必要があります。
相手に借金を負担させられる場合
ただし夫婦の一方が「連帯保証人」や「保証人」になっている場合には、マイナスになる場合でも支払いをしなければなりません。
保証人である以上、「自分の負債」として返済義務を負うためです。
たとえば住宅ローンがマイナスになる場合、主債務者が夫で妻が連帯保証人なら、夫が支払わないときに妻は全額の残債を払わねばなりません。
借金の財産分与における注意点
だけど、これは夫婦間での取り決めであって、債権者には主張できないから注意しよう。
借金の財産分与を行うときには、以下のような点に注意しましょう。
夫婦間で負担を約束できる
資産から負債を引き算してマイナスになる場合でも、夫婦間で分担割合を決めることは可能です。
たとえば夫名義の負債が300万円残るとき、離婚後に夫が150万円、妻が150万円を払うなどとする約束する場合です。
また夫名義の住宅ローンが残って離婚後には妻が家に住む場合、妻が家賃相当額のローン負担をするケースもよくあります。
負債の分担を債権者には主張できない
借金を財産分与対象にして平等に負担するとしても、それは夫婦の内部的な約束です。
借入先などの債権者には主張できません。
たとえば夫名義の300万円の借金を妻と2分の1ずつにして150万円ずつ返済するとしましょう。
このとき、妻による返済が滞れば債権者は夫に全額請求してきます。
夫が「妻が半額払う約束をしたので妻に請求してください」といっても聞き入れてもらえません。
住宅ローンについても同じです。
夫名義の住宅ローンを組んで妻が居住するので妻が住宅ローンを払うとしましょう。
妻が住宅ローンを払わないと銀行は夫へ残債を請求してきます。
夫が「妻に請求してほしい」と言っても意味がありません。
ただし住宅ローンの場合、払わないと最終的に家が競売にかかって住めなくなります。
妻が居住してローンを払う約束をしたら、妻が払わないと結局家を追い出されてしまいます。
債権者に主張するには、債権者の承諾をとって正式に債務者を変更してもらわねばなりません。
変更は簡単ではないので、多くの場合には債務者名はそのままにして離婚後も返済を続けていくことになるでしょう。
借金を財産分与する手順
話し合う
まずは資産や負債をどのように分け合うか、夫婦で話し合いましょう。
分与割合も含めて自由に決められるので、家を売るかどうかなども含めて納得できる条件を取り決めてください。
離婚公正証書を作成する
条件が決まったら、内容を書面にまとめ、できる限り公正証書にまとめましょう。
特に養育費を払ってもらいたい場合や財産分与・慰謝料を分割払いしてもらう場合、公正証書を作成する必要性が高くなります。
公正証書があれば、相手が支払わないときにすぐに差し押さえができるメリットがあります。
まとめ
資産や借金、どちらも財産分与できる物とできない物とが良くわかったよ。
借金がある場合の財産分与方法は複雑で、法的な知識がないと適切な対応が難しくなります。
自分たちだけで話し合っても正しい方法がわかりにくいでしょう。
困ったときには離婚に詳しい弁護士に相談してみてください。
福谷陽子
元弁護士・ライター。
弁護士としての活動した約10年間のうち、7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては債務整理案件を多数担当し、任意整理・個人再生・自己破産のみならず、過払金請求も手がける。
その経験をもとに、現在はライターとして法律関係の記事を執筆している。
■略歴
・京都大学法学部在学中、司法試験合格
・京都大学法学部卒業後、司法研修所入所
・弁護士登録・某法律事務所にて勤務
・独立し、陽花法律事務所を設立
・弁護士活動を停止し、ライターに転身
■ご覧のみなさまへのメッセージ
借金問題を抱えていると、追い詰められた気持ちになるものです。
「どうしようもない」「借りた自分が悪い」「借りたからには返さなければ」と律儀な思いを持ち、必死で返済を続けている方もおられるでしょう。
しかしどんなに頑張っても返済できない借金があるものです。
法律は借金返済できない方や苦しくなった方に救済手段をもうけています。
債務整理をすると嘘のように借金問題を簡単に解決できるケースが本当に多いです。
借金問題に悩んでいる時間はもったいないです。
債務整理は恥ずかしいことではないので、勇気を出して専門家へ相談していただきたいと思います。
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