完全成功報酬ってよく聞くけど、利用者側にデメリットは無いの?普通の料金形態とはどう違うの?

 

ウサギ
弁護士報酬の完全成功報酬ってどういう仕組みなの?
依頼者は弁護士費用を支払う必要がないのかな?
シカ
完全成功報酬とは、過払い金返還請求の時などによく利用される料金形態だね。
過払金が回収できた場合にのみその回収した費用の中から弁護士費用を差し引きますという仕組みなんだ。
今回の記事では、弁護士報酬の種類について、詳しく見ていこう。

弁護士の報酬というのは一般の人から見ると「よくわからないが、すごく高そう」というイメージなのではないでしょうか。

特に債務整理を依頼しようとする人にとって、報酬というのは非常に大切なポイントであり、報酬を支払えないから債務整理を諦めるなどということがあってはなりません。

大半の弁護士は適正価格の範囲内で報酬を設定しているはずですが、中には常識的に見ると高すぎるのではないか?という価格を設定している事務所もあります。

そこで、依頼者の側も正式依頼の前に、報酬についての知識を持つことが大切なのです。

本記事では特に債務整理事件に絞って、「基本的な弁護士報酬の考え方」や、弁護士事務所がウェブサイトなどで事務所のセールスポイントとしている「着手金なし、完全成功報酬」というシステムについても解説していきます。

債務整理における弁護士報酬の種類

債務整理における弁護士報酬にはどのような種類があるのか確認してみましょう。

まず現在の弁護士報酬に関する基本的なルールを解説します。

昔は弁護士の報酬に関しては日本弁護士連合会(以下、日弁連といいます)が定めた「報酬規程」というものが存在しました。

現在はこの報酬規程自体は2004年に廃止されており、原則として各事務所が自由に報酬を設定できることになっています。

ただ、2006年くらいから法曹界で受任が増加してきた「過払い金返還請求をはじめとする債務整理事件」において、非常に高額な報酬を請求する悪質な法律事務所が増加する状況が発生しました。

そこで日弁連では2011年に債務整理事件の報酬に関し、受任の仕方や報酬の上限について一定のルールを定めました。

「債務整理事件処理の規律を定める規程」とよばれるものです。(以下、「規程」といいます。)

この規程は主に「非事業者等任意整理事件=消費者や零細事業者の任意整理事件」の報酬を定めるものです。

事業者については「プロ」である以上、法律事務所の報酬が適正かどうかを見極められる目を持っているといえます。

しかし、非事業者である個人は事務所に言われるがままに支払ってしまうことも考えられることから、消費者保護の必要があります。

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弁護士の報酬は大きく分けると

  • 「成功したかどうかに関わらず受け取る報酬」
  • 「成功の程度に応じて受け取る報酬」

があります。

具体的には次のような費目があります。

  1. 着手金
    結果に関係なく、事件の受任時に依頼者から受け取る報酬。
  2. 報酬金
    成功の程度に応じて受け取る報酬。
    債務整理ではさらに細かく次の項目に分かれます。
    ア.解決報酬金
    業者(債権者)との事件が解決したことにより発生する報酬金。
    イ.減額報酬金
    業者(債権者)が当初主張していた債権額と実際に債務者が支払うことになった金額との差額を「減額分」とみなして、それを基に算定する報酬金。
    ウ.過払金報酬金
    過払い金が発生していた場合に、業者(債権者)から取り戻すことに成功した金額を基に算定する報酬金。
  3. 手数料
    成功と関係なく発生する報酬。

※「報酬」と「報酬金」は異なるものです。
「報酬」とは上記1から3までをトータルで示す呼び方で、「報酬金」とは報酬の中で上記2に属するもの。

上記のうち2の「報酬金」については、規程の中で「非事業者等の任意整理事件」に関して規制がかけられています。

  • 上記2のア、イ、ウ以外の報酬金を受領することは禁止。
  • 報酬の上限は以下の通り。
    「解決報酬金は1社あたり2万円以下が原則。商工ローンは5万円以下。」
    「減額報酬金は減額分の10%以下。」
    「過払金報酬金は訴訟によらない場合回収額の20%以下。訴訟による場合は回収額の25%以下。」
  • 個別手数料は原則受領禁止(送金代行手数料等)。

なお、規程では「非事業者等の任意整理事件の着手金」については上限の規制が設けられませんでした。

よって、知識のない消費者は着手金の高い事務所に依頼してしまい、トータルで高すぎる報酬を支払ってしまうことがないように、複数事務所を比較するなどの注意が必要です。

なお、規程10条で「任意整理事件」についての注意が細かく記載されていますが、「追加の着手金受領」「個別手数料」などの名目での受領も禁止されていることを依頼者側も知っておきたいものです。

完全成功報酬とは

では、法律事務所のウェブサイトなどで時々見かける「完全成功報酬」というシステムについて確認してみましょう。

上記の基本的な報酬の類型の中で「着手金」や「手数料」を受領せず、「成功した場合にのみ、成功の度合いに応じて報酬を請求する」というものです。

これは弁護士事務所側も報酬を受領せずに仕事に着手するリスクを負うことになるため、「過払い金返還請求」など、確実に成功が見込まれる案件で使われることが多いシステムです。

減額成功報酬とは

減額成功報酬とは、「最初に債権者が主張していた債務の残額と、利息引き直し計算によって算出された金額の差額」を依頼者の利益であると考え、「差額に対して〇%の報酬がかかる」といった定め方をするものです。

※利息引き直し計算・・・貸金業法改正前の高金利で行われていた消費者金融などの取引を適正な利息に直すための計算。

なお、利息引き直し計算をすることにより債務が減額される仕組みについてはこちらの記事を参照してください。

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ただ、減額成功報酬については法律業界でも問題視されている面があります。

利息引き直し計算をしたことによって債務が減った、というのは法律家が債権者と交渉したことなどによりもたらされた結果ではなく、単なる法の定めや判例によって一律にもたらされる結果だからです。

一部の事務所によって減額成功報酬を高額に定めることにより収益を増加させる動きが加速してきたため、それを抑制するために上記のような規制が設けられた経緯があります。

依頼者側も減額成功報酬の意味を知り、納得した上で依頼するようにしたいものです。

基本報酬とは

基本報酬とは「解決報酬金」とも呼ばれますが、債務整理の業務を行った際に最終的に和解が成立するなど解決に至ったことに対して「1社につき〇万円」など一律に定められる報酬です。

こちらも、債権者数が多くなれば数十万といった高額になる可能性があるため、例えば任意整理の業務では「1社2万円までが原則」と規制されています。

完全成功報酬と通常の料金体系の違い

ウサギ
完全成功報酬と通常の料金体系ではどんな違いがあるの?
シカ
完全成功報酬では、着手金や相談料を必要としないのに対して、通常の料金体系では、相談料や着手金、手数料などが発生する事になるよ。

完全成功報酬と通常の料金体系とはどのように異なるのでしょうか。

完全成功報酬は「成功」に着目し、成功した場合「のみ」報酬が発生するという仕組みです。

上記の繰り返しになりますが、成功報酬とは次のようなものです。

  • 「利息引き直し計算による減額」に成功した場合には減額した金額に対して〇%
  • 債権者に対し過払い金が発生しており、「過払い金返還請求」に成功した場合は返還額に対して〇%

このように定められますが、「完全成功報酬」といった場合には定額で支払う基本報酬がかからず成功した場合に限定して報酬が発生することになります。

これに対して通常の料金体系では

  • 相談料
  • 着手金
  • 成功報酬
  • 手数料
  • 日当(訴訟などで外部に出頭する場合)

のようになります。

上記の報酬体系の中には成功報酬も含まれていますが、成功報酬だけではなくその他の報酬も段階的に発生することになります。

完全成功報酬のメリット、デメリット

ウサギ
完全成功報酬には、どんなメリットやデメリットがあるの?
シカ
完全成功報酬の場合には、成功しなかった場合には費用が発生しない、報酬がわかりやすいというメリットがあるよ。
だけど、報酬が高く設定されていたり、債権者とトラブルに発生してしまう事も稀にあるから、注意しなければいけないよ。

完全成功報酬はメリットが多いように見えますが、デメリットもありますのでそれぞれどのようなものがあるか考えてみましょう。

完全成功報酬のメリットとは

完全成功報酬であれば、「うまくいかなかった際には報酬を払わなくてよい」というメリットがあります。

複数の項目がある場合に比べて報酬がわかりやすいという点も魅力です。

着手金無料、完全成功報酬であれば、もし手続きがうまくいかなかった場合には0円で良いようにも思われます。

ただ、実際には「最後までまったく報酬が発生しなかった」事案は非常に少ないと考えられます。

なぜなら、完全成功報酬を導入している事務所であっても、対象とする案件はそもそも「成功できる見込みが極めて高い」ものに限定している可能性があるからです。

上記に挙げたような「利息引き直し計算」によって債務を減額させるような事案は、一定の年数、一定回数の取引をしていれば法の定めによって必ず減額ができるため、法律家の力量を問わずに減額できるものといえます。

また、過払い金返還にしても、ある程度経験を重ねた法律家であれば相手方の債権者が「過払い金を取り戻せるだけの財力があるか」「和解に応じる業者であるか」を事前に察知することができます。

そのため悪質な法律事務所に当たってしまうと

  • 「利息引き直し計算によってあまり減額しないと見込まれる案件」
  • 「過払い金を取り戻すことが難しい業者」

など、成功報酬が取れないような案件と判断したら最初から受託してくれないといった対応になってしまう可能性もあるということです。

完全成功報酬のデメリット

完全成功報酬のデメリットは、成功報酬自体が他の事務所と比べて高額に設定されていることがあるということです。

結局、着手金無料と謳っていても成功報酬自体が高く設定されているため、トータルで見たら通常の報酬体系の事務所より高くついた、ということもあります。

また、成功しないと報酬が発生しないために過払い金返還をめぐる交渉で強引な手法を使い、債権者との間でトラブルを招く事例も稀にあります。

さらには、相談料、日当のような名目で追加の報酬を請求する事務所もあるようです。

依頼者側としては、依頼を決める時点で今回の案件の業務内容や報酬体系についてかなり細かい説明を受けてしっかりと理解、納得する必要があります。

完全成功報酬を取り入れている事務所はおすすめか

ウサギ
完全成功報酬を取り入れている事務所っておすすめって言えるのかな?
シカ
必ずしもおすすめとは言えないよ。
必ずトータルでかかる費用を比較して、弁護士事務所を決めるようにしよう。

完全成功報酬を取り入れている事務所は果たして「おすすめ」といえるのでしょうか。

上記の「メリット、デメリット」でも解説したように、着手金無料、完全成功報酬の事務所には受託の仕方や業務の進め方などで問題のある事務所も一部存在します。

そのような点から、事務所のウェブサイトだけを見て「お得」と判断してしまうことは非常に危険であり、依頼する事案や依頼先事務所により結果はかなり異なる可能性があることを知っておきたいものです。

依頼者側も事前に報酬の相場を調べることはもちろん、内容を相談後に概算見積もりを取った上で、正式依頼の際には複数事務所を比較検討してから決めることも大切です。

まとめ

ウサギ
完全成功報酬の仕組みが良くわかったよ。
弁護士に依頼する時には、完全成功報酬という言葉に惑わされてしまう事がないように、しっかりと情報収集する必要があるんだね。
シカ
費用だけで弁護士を選んでしまうと、弁護士と合わない、債務整理が得意な弁護士ではなかった、という事態に陥ってしまう事もあるから、必ず実際に面談をした上で弁護士を決めるようにしよう。
  • 現在では弁護士報酬は自由に決められるのが原則であるが、債務整理報酬に関して悪質な事務所が増加したことから、「債務整理事件処理の規律を定める規程」により上限が定められている業務もある
  • 完全成功報酬とは、過払い金の取戻等の業務で「成功した場合にのみ」報酬が発生するというシステムである。
  • 完全成功報酬を取り入れている事務所では成功報酬自体を高く設定している場合もあり、トータルでお得とはいえないことも多いため、事前の情報収集をしたり見積もりを取ってもらうことが大切である。

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西岡容子

青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。

平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。

「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。

債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。

■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年   青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格 
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設

■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087

■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属

■注力分野
債務整理
不動産登記
相続

■ご覧のみなさまへのメッセージ
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債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。

借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
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