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任意整理の失敗例と成功例

      2017/05/23

任意整理の失敗例と成功例

平成20年より以前くらいまでは、まだ軒並み消費者金融の金利は高い水準でした。よって、任意整理をすると大幅に借金が減る人も多く、中には数百万円という莫大な過払い金が出ることもあったのです。

当時は任意整理がうまくいかないということはそれほど多くなかったのですが、ここ数年では貸金業法改正による金利の低下、そして貸金業法の対応の変化により任意整理をとりまく状況もだいぶ変化してきています。

では、任意整理における貸金業法の対応の変化や、任意整理で失敗した例、うまくいった例を挙げつつその注意点を考えてみましょう。

平成20年以前の任意整理の状況

平成20年頃を境に、債務整理をめぐる状況は年々変わってきています。まず、以前の状況から見てみましょう。

大幅に債務を減らせる事例が多かった

どんな債務整理をする場合であっても、まともな弁護士(司法書士)であれば必ず前提として「利息引き直し計算」を行います。利息引き直し計算をすることで、最初に債務者が申告していた残債務額から大きく債務が減ることがあります。この仕組みを前提として解説しますので、わからない人はまず「任意整理で借金を減額する方法と具体例」からお読みください。

平成18年の貸金業法改正までは消費者金融の金利は非常に高く、年利29.2%という会社が当たり前に存在していました。さらに遡って昭和の後期には年利40.004%ということもあったのです。

消費者金融が利息を下げ始める平成20年より以前の任意整理においては、「利息引き直し計算」を行っただけで大幅に債務を減らせるケースが多かったのです。高金利の消費者金融と5年程度以上に渡って取引している人については利息を元本に充当していって元本が0になってもなお払い続けていたという、「過払い」になっていることもしばしばありました。

まだ100%過払い金を取り戻せることが多かった

「金利が高い貸金業者が多い=利息引き直し計算をすると債務が減ったり過払い金が発生しやすい」というだけではなく、発生した過払い金を容易に取り戻せることが多かったのも平成20年以前の特徴です

平成18年1月に過払い金に関する画期的な最高裁判決(いわゆる「シティズ判決」)が出るまではまだすんなりと取引履歴を開示できないこともあり、それ以前の弁護士(司法書士)は長い間貸金業者と戦ってきました。しかしシティズ判決の前後から利息引き直し計算や過払い金請求が飛躍的に楽になり、法曹界における「過払い金バブル」とも呼ばれる現象が始まったといえます。

多くの弁護士(司法書士)が2、3回貸金業者と電話やFAXでやり取りをするだけで数十万から数百万の過払い金返還に成功し、取り戻した過払い金を残債務が残る債権者への返済に充てたり、弁護士(司法書士)の報酬に充てることができるといった恩恵を受けていました。

平成20年以降(金利引き下げ以降)の任意整理の状況

100%の過払い金返還が比較的容易にできていた時期はそう長く続きませんでした。平成18年に貸金業法改正が成立し、平成22年までの段階的施行が行われて消費者金融の利息や債務整理への姿勢も変化を見せるようになってきたのです。

任意整理してもあまり借金が減らない例が出てきた

平成20年頃には大手の消費者金融も含め、かなりの数の貸金業者が平成22年の利息制限法改正を前に自主的に利息を引き下げるようになっていました。つまり、それ以降に利息の低い貸金業者と取引をした人は過去の取引を遡っても利息が減ることがなくなったのです

言い換えれば、任意整理による効果が以前ほど上がらないケースも増えてきたのです。

貸金業法が疲弊し、過払い金返還が以前より困難に

平成18年頃から怒涛のように行われた過払い金返還により、消費者金融は年々体力を失っていきます。相次ぐ支店の閉鎖やリストラ、中小の貸金業者や、街金と呼ばれた業者は次々と倒産に追い込まれました。

また、消費者金融業界最大手の武富士までもが会社更生法の適用という事態に陥り、いよいよ業界全体に危機感が広まることになります。その後、消費者金融業界では大手銀行の傘下に入ることでかろうじて生き残りをはかる会社も増えてきました。

このような状況になったことを背景とし、今まで任意整理を持ちかけても順調に和解に至っていた業者までもが分割払いを渋るようになってきました。リストラで大幅に人員が減った状態では、多くの債務者が長期の分割弁済をするとなると債権管理だけで社員の負担はとても重くなります。また、少しでも早く返済してもらってキャッシュを得たいという業者側の切実な事情があり、任意整理の交渉は特に中小の業者で次第に困難になってきました。

よって、今までなら難なく任意整理で解決した債務者が個人再生や自己破産を選択せざるを得なくなることも出てきてしまったのです

任意整理の失敗事例にはどんなものがあるの?

もちろん以前から任意整理が失敗してしまう事例はありましたが、以前からあった失敗パターンに加え、平成20年台に入ってからは貸金業者側の態度の硬化による失敗という要因も加わるようになったのです。

明らかに無理な状況で任意整理したことによる失敗

事例1.甲さん(自営業者)

会社名 債務者申告の残債務 取引期間 利息引き直し計算後の残債務
A社(消費者金融) 100万円 5年 60万円
B社(消費者金融) 50万円 5年 20万円
C社(消費者金融) 50万円 3年 40万円
D社(消費者金融) 20万円 1年 15万円
E社(信販会社・車ローン) 80万円 3年 80万円

上記の場合、利息引き直し計算をしても残債務は約215万円ありました。

収入が安定したサラリーマンであればぎりぎり、任意整理ができるラインだったかも知れませんが、甲さんは家族経営の自営業、しかも経営が極めて不安定で本来、返済を約束できる状況ではありませんでした

ただ自動車ローンがあったので、自己破産してしまうと引き揚げられてしまうという理由から、最初に受託した弁護士に「どうしても任意整理したい」と強硬に主張したのです。

この任意整理にかなり無理があることを理解できる弁護士であれば「自己破産でいくよう説得する」「どうしても任意整理でなければということなら受託しない」のどちらかの選択肢になったでしょうが、この事例ではまだ経験が浅いと思われる弁護士が任意整理させてしまったのです

結果、半年も経たずに返済が滞った甲さんは結局他の司法書士に依頼をして自己破産に切り替えました。

いったん、最初の任意整理の報酬をすべて支払ったものの、それが丸々無駄になってしまったという意味ではこの事例は最悪の失敗例といえます。

本人の虚偽申告による失敗

事例2.乙さん(契約社員)

会社名 債務者申告の残債務 取引期間 利息引き直し計算後の残債務
A社(消費者金融) 40万円 8年 -80万円
B社(消費者金融) 20万円 6年 -50万円
C社(消費者金融) 95万円 2年 80万円
D社(消費者金融) 80万円 1年 70万円
E社(消費者金融) 100万円 1年 90万円

事例1は甲さんと弁護士、両方に判断ミスがあって最終的に任意整理が失敗に終わったケースでしたがこちらの乙さんについては本人の虚偽申告を原因とする失敗例です

当初、乙さんは司法書士に対しA社、B社、C社の存在しか伝えていませんでした。そこで、A社とB社から取り戻した過払い金を使って司法書士報酬とC社の残債務を支払えば解決、となる予定でしたが、和解が終わってから乙さんはD社とE社の存在を伝えてきたのです。

もともと、若干精神的に不安定で一つの職場が続かない傾向があった乙さんにこれ以上返済負担が増えることは無理でしたので、他の司法書士に引き継ぐ形で自己破産することになりました。

事例1と同様、こちらも任意整理の報酬を無駄にしてしまったことになります。

債権者の状況悪化による失敗

事例3.丙さん(正社員)

会社名 債務者申告の残債務 取引期間 利息引き直し計算後の残債務
A社(消費者金融) 20万円 7年 -30万円
B社(消費者金融) 50万円 3年 50万円
C社(消費者金融) 65万円 2年 65万円
D社(消費者金融) 30万円 3年 30万円
E社(銀行・カードローン) 60万円 1年 60万円

丙さんの場合、A社以外の消費者金融はすでに法定利息の範囲だったので、利息引き直し計算をしても債務が減ることはありませんでした(E社は銀行のためもともと法定利息内)。

もし残債務が残った各社が比較的長期の分割払いに応じるような会社であれば丙さんは正社員で収入の安定性では問題なかったので任意整理できたのでしょう。しかし、これらの業者がいずれも経営の悪化により以前より短期間での条件でなければ和解を受け入れないとの方針になっていました

1年、2年など、要求された期間での支払は難しいということで丙さんは任意整理を断念し、個人再生に切り替えることになりました。

任意整理の成功事例

過払い金を伴う、理想的な成功事例

事例4.丁さん(契約社員)

会社名 債務者申告の残債務 取引期間 利息引き直し計算後の残債務
A社(消費者金融) 90万円 12年 -130万円
B社(消費者金融) 50万円 8年 -30万円
C社(消費者金融) 25万円 7年 -40万円
D社(銀行・カードローン) 40万円 2年 40万円

若干昔(平成22~23年くらいまで)に多かったケースではありますが、任意整理の効果が非常に大きかった事案です。

こういったケースでは、残債務があったとしても他の会社の過払い金を取り戻すことで完済が可能で、弁護士(司法書士)の費用も捻出できますのでむしろ本人の手元にはお金が残ることになります

ただ、平成22年に利息制限法改正が施行されて以降は、利息引き直し計算によって過払い金が出るケースは以前ほど多くはなくなりました。

将来利息カットにより完済の目途がついた事例

事例5.戊さん(正社員)

会社名 債務者申告の残債務 取引期間 利息引き直し計算後の残債務
A社(消費者金融) 30万円 3年 30万円
B社(消費者金融) 50万円 6年 50万円
C社(消費者金融) 50万円 5年 50万円
D社(銀行・カードローン) 70万円 2年 70万円

戊さんの場合、平成21年以降に取引を始めたため、いずれの会社もすでに金利は低い水準でした。こういった事例では利息引き直し計算による債務減額は望めないものの、弁護士(司法書士)を入れることによって「将来利息のカット」「分割払いの期間延長による負担軽減」という効果があります

戊さんの月々の支払は4社で5万円以上だったのですが、3万円程度まで減額することができて家計が楽になった実感を持てるようになりました。

任意整理をする時の注意点

では、任意整理を検討する際、無理や無駄がないようにするために注意するポイントを考えてみましょう。

相談の段階での弁護士(司法書士)への隠し事は厳禁!!

上記の事例2に挙げた失敗例のように、すべてを言いづらいからといって一部の債権者を隠したりすることは厳禁です

全債権者を把握しなければ弁護士(司法書士)サイドでも適切な債務整理の種類を検討することができません。初期段階での手続選択の失敗は任意整理の費用や時間すべてを無駄にしてしまいます。

自分の返済能力を過大評価しない

任意整理の危険な点は「貸金業者の方で、返済原資(給与など)を細かくチェックしない」ということです。つまり、月々いくら支払えるかを基本的には自己判断することになるため、見通しを甘くすると結局、返済計画の途中で挫折してしまう可能性が高いのです。

月々の出費以外の突発的な冠婚葬祭や車検などの費用も考慮に入れた上で十分にゆとりのある状態でなければ本来、任意整理するべきではないともいえるかも知れません

任意整理にこだわりすぎない

もし、返済をシミュレーションする段階で任意整理は無理そうだと感じたり、弁護士(司法書士)から他の手続きに切り替えるアドバイスを受けたら潔く諦める判断も大切です。

昔、たまたまその業者の任意整理がうまくいったという人の話はあまり参考になりません。貸金業者の対応は年々変化するものですから、以前に長期返済を認めていた会社が今もそうとは限りませんし、債務者の返済履歴によっても対応が違ってくるからです。

特に債務整理の案件を数多くこなしている弁護士(司法書士)のアドバイスは、過去の事例に基づいているためそれなりの根拠を持つものですから、任意整理を避けた方がよいと言われた場合はぜひともそれを受け入れる方向で考えたいものです。

任意整理の失敗例と成功例・まとめ

  • 平成20年より以前とそれ以降で任意整理をとりまく状況は変化した。
  • 近年は貸金業者の経営状態の悪化により和解が難しいこともある。
  • 任意整理に失敗し、費用を無駄にしないためには最初の手続選択を誤らないことが大切。
  • 債務整理の経験が豊富な弁護士(司法書士)のアドバイスには過去の事例などに基づく根拠がある。

大切なことは、債務整理の事例を多く経験している専門家に依頼をすることです。下記の記事にて、債務整理を専門としている法律家をまとめていますのでよろしければご覧ください。

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西岡容子

西岡容子

熊本にて夫婦で司法書士事務所を営む。10年以上の実務経験で、債務整理の経験も豊富。現場での経験を活かしてユーザーのためになる確かな記事を執筆中。
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