債務整理の森

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警備員が任意整理するケース

 

警備員が任意整理するケース

警備員という仕事は一般企業の従業員が行っていることが多いことからもわかるように、とりわけ何か特別な資格を要するわけではありません。ただ業務の形態上、他人の財産を守る役割を果たすことも多々あり、自己破産をした人(自分の財産管理に失敗した経験を持つ人)では不適切な場合もあります。

よって、自己破産をした人が一定期間つくことができない、いわゆる「職業制限」の中には警備員も含まれているのです。

では、警備員が自己破産はせず「任意整理」によって債務整理した場合はどのような状況になるのか、職場にはバレないのか、仕事はそのまま続けられるのかなどを考えてみましょう。

自己破産によって制限される職種

自己破産することにより、特定の職業に就くことができなくなる場合があります。では、どのような職種が制限を受けるのか、いつまで制限が続くのかを確認してみましょう。

警備員も含め他人の財産に関わる職業は制限される

自己破産をした人は、他人の財産を管理するような業務に就くことを一時的に制限されます。たとえばその代表的なものに「士業」があります。

士業は業務上、数百万円、もしくはそれ以上の単位で他人の財産を預かることもあり、いったん自己の財産管理に失敗しまった人がそのような大金を管理する可能性のある仕事をすることには問題があると考えられるからです。具体的には弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士、宅地建物取引主任者などがそれにあたります。

士業以外で職業制限にかかるものの代表格としてこのページで解説する警備員があります。警備員はやはり多額の他人の財産を守ることを業としているからです

ただ、注意しなければならないのは医師や看護師は国家資格を要する職業ではあるものの、自己破産による職業制限にはかからないということです。医療職に従事する者はもっぱら身体、生命に対する比重が高く、財産という面においてはあまり関与することがないからです。

実は、職業制限がかかる仕事はかなりその種類が多いのですが、代表的なものを挙げてみましょう。
(ここに挙げたものがすべてというわけではありません)

  • 弁護士
  • 司法修習生
  • 弁理士
  • 司法書士
  • 土地家屋調査士
  • 不動産鑑定士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 行政書士
  • 中小企業診断士
  • 通関士
  • 宅地建物取引主任者
  • 旅行業務取扱管理者
  • 公証人
  • 証券外務員
  • 取締役(欠格事由ではない)
  • 後見人
  • 後見監督人
  • 保佐人
  • 補助人
  • 遺言執行者
  • 警備員
  • 商品投資販売業
  • 証券金融会社の役員
  • 信託会社
  • 信用金庫等の役員
  • 貸金業者
  • 質屋
  • 労働者派遣事業者とその役員

職業制限はずっと続くわけではない

自己破産したら一生職業制限に縛られるわけではありません。むしろ、世間一般で考えられているよりも制限がかかる期間はずっと短いと思ってよいでしょう。

実際には破産手続開始決定から復権(免責許可決定の確定)までということになりますが、同時廃止(※)の場合で早ければ3カ月くらい、管財事件でも早ければ半年くらいで職業制限が解けることもあります

※なお、同時廃止と管財事件がどのようなものかわからない人は、「自己破産とは?メリットデメリットとその後の生活」を参照してください。
このように職業制限がかかる期間は本当に一時であるため、その期間さえどうにか凌げれば退職しなくても済むという場合も多いのです。

警備員が任意整理、個人再生するのは問題ない

では、自己破産以外の方法で債務整理する時はどうなるのでしょうか?基本的に任意整理、個人再生には職業制限そのものがありませんので、まったく問題なく手続きすることができます

よって、自己破産による職業制限を避けたいという債務者が他の手続きを希望することもあります。ただ、もともと自己破産をしなければならない状況の人が無理して任意整理を選択するというのは現実として非常に難しい場合が多いことも覚えておかなければなりません。

任意整理においては、利息引き直し計算(※)をした後の債務をそれ以上減額することはできないため、人によっては100万、200万という負債を(分割とはいえ)支払っていかなくてはなりません。職業制限を避けたいために無理に任意整理をして失敗するというパターンになるのであれば、費用面を考えても最初から自己破産を選択しておいた方がよほどましだったということになってしまうのです。

また、自己破産を避けて個人再生を選択するのも難しいケースが多いでしょう。個人再生は利息引き直し計算後の残債務から、さらに裁判所が認めれば減額をすることが可能ですが、最低限100万円以上を原則として3年間で支払っていく手続きですから、そこには安定した返済の原資が要求されます。

よって、任意整理や個人再生を選択できる可能性があるのは、最初からある程度安定した収入があり、数年にわたる返済に耐えられる人ということになるのです
※利息引き直し計算の意味がわからない人はまず「任意整理の引き直し計算方法」からご覧ください。

警備員の任意整理は職場にバレないのか?

では、多くの人が債務整理の際に気にする「職場バレ」について、手続きの方法が「任意整理」だった場合はどうなるのか考えてみましょう。

任意整理では勤め先から書類をもらう必要はない

任意整理とは、債権者と債務者があくまでも任意で和解する手続きですので裁判所の関与は一切ありません。ただ通常、弁護士(司法書士)に頼んで和解交渉をしてもらうことになり、なかなか債務者本人が任意整理を持ちかけても貸金業者は取り合ってくれないと思っておいた方がよいでしょう。

任意整理は私的手続であることから和解内容、手続きの進め方などにおいても比較的フレキシブルです。具体的には、他の債務整理と同じようにまず受任した弁護士(司法書士)から貸金業者に受任の旨と取引履歴の開示請求を通知し、取引履歴が業者から送られてきたら利息引き直し計算を行い、それに基づいて任意整理の可否が判断されます。

ここから先はもっぱら、債務者本人の「月額いくらまで支払えるか」という申告と、それに基づいた弁護士(司法書士)の判断になっていきます。貸金業者側から「弁済の原資は何ですか?」という質問がされることもありますが、交渉にあたっている弁護士(司法書士)から「給与です」とか「給与プラス親族の援助です」とか答えるだけでよく、通常それより突っ込んで「源泉徴収表を提示してください」などと言われることはあまりありません。

つまり、勤め先に「○○の書類をください」とお願いしに行く必要はなく、自分で言わない限り任意整理がバレるきっかけはないと考えられます

ただ、バレやすいシチュエーションといえば、(比較的小さい職場の場合ですが)給与前借りを社長にお願いしにいくような行動をしてしまった場合です。「あいつはそれほどお金に困っているのか?」と思われると色々と勘ぐられ、場合によっては事実を問い詰められるようなことにもなります。

また、同僚に借金を申し込むようなことがあるとやはり疑われることになるのは言うまでもありません。

職場の中で債務整理の情報が出回っていることも

職場において自分の債務整理のことが知られるというのは悪いことばかりではありません。もちろん、債務整理したことにより冷たい目で見られるような職場も多いでしょうが、逆に周囲が心配し、本人が同じことを繰り返さないようにサポートするような雰囲気の職場もあるということです。

実際、弁護士(司法書士)のところに相談に来る債務者の中にも「社長がとても親身になり心配してくれていて、これから定期的に債務整理手続の進み具合を報告してほしいと言っている」という事例もあります。

また、職場の中に債務整理経験者が複数おり(それ自体はあまり好ましい状況ではないのですが)、同僚に借金のことを相談したら「自分も実は債務整理したことがあって・・」という話になり、手続きのメリット・デメリットや良い弁護士(司法書士)はどこかなど有益な情報が得られたということもあります

自分ひとりで考え込んでいたら取り返しがつかないほどの事態になっていたであろう人が、同僚の「弁護士(司法書士)に相談すれば解決できる」という一言によって早く相談に行くきっかけを得ることができたということもあるのです。

警備員が任意整理以外で債務整理する場合の注意点

警備員が個人再生する場合を考えてみましょう。個人再生では、自己破産とは異なり上記の職業制限がないので職を失う心配をする必要はありません。ただ、個人再生においては「職場バレ」の心配が若干あるといえます。

個人再生とは、裁判所を通じて行う手続きで、利息引き直し計算をした後の元本を法律の制限範囲内で減額してもらえるというものですので、任意整理よりも債務者の経済的立ち直りの効果は高い方法です。ただ、決められた金額を基本的に3年間の分割で払わなければならないと決められており、任意整理ほどフレキシブルな返済方法を取れないこと、そして膨大な書類を裁判所に提出する必要があることが難点です。

源泉徴収表や給与明細書など収入に関する書類や、預金通帳など資産に関する書類、そして本人だけではなく同居の配偶者などの分まで出さなければならないなど、かなり手続きでハードルの高い面があります。

特に「職場バレ」の心配が大きいのが「源泉徴収表」および「退職金見込証明書」を出さなければならないことです。源泉徴収表であれば元より職場からもらったものを保存していることもあるでしょうし、失くしていても他の理由をつけて出してもらうこともできるでしょうが、退職金見込証明書は通常あまり使うものではありません。

会社の経理、総務担当の人が気づかないこともあるでしょうが、知人が債務整理した経験があるなど、知識のある人であれば勘付いてしまうこともあります(もちろん、担当者が良識のある人であれば気づいても簡単に口外することはないでしょう)。


ただ、こういった書類を会社に請求する際の口実としては、「住宅ローンの仮審査を受けるので」などというものがありますし、退職金規定がある会社であれば就業規則を出すことで足りる場合もあります

また、警備員が自己破産する場合は前述の職業制限にかかるわけですが、理解のある会社であればいっとき他の部署に配属してもらって復権後にまた元の業務に就くという方法もあります

手続き面においては個人再生の場合と同様の書類を出さなければなりませんので、会社が債務整理を知りつつも後押ししてくれるような雰囲気ではない場合は、書類を出してもらう時にバレない工夫をしなければならないということです。

債務整理は解雇の理由にはならない

相談者の中には、「債務整理したら会社をやめなくてはならないのか?」という心配をしている人も少なくありません。

もちろん、自己破産の場合は職業制限にかかり、今までと同じような業務が一時的にできなくなることはあるのですが、それが即、解雇につながるわけではありませんし、そもそも債務整理したことは解雇の正当な理由にならないのです

たとえば保険外交員の場合、ただしに資格取り消しとはならないものの大手企業は特にこまめに官報をチェックしており、自己破産をした社員について退職勧告をしていることもあります。しかし警備員の場合は会社自体のチェックが保険業界ほど厳しくないため、会社が気づかないことも多いのです

万一「債務整理したのであれば辞めてもらうしかない」などと言われたら依頼先の弁護士(司法書士)に相談し、安易に退職勧告に応じないようにしなければなりません。

職場にバレずに任意整理するには

前述のように、任意整理において職場バレの心配はほとんどないといえます。

ただ、急に飲み会等の付き合いが悪くなった、給料の前借りを頼むようになったなど、お金に困っている様子を悟られてしまう行動は結構あるものです。今までの生活を大幅に変えなければ任意整理できない状態であること自体がそもそも危険です。

任意整理は3年から5年のようにまとまった期間、毎月の返済を怠らないようにしなければならず、並行して自分の生活も成り立たせなければならないのですからくれぐれも無理は禁物ということです。

警備員の場合、職業制限にかかりたくないから自己破産できないというのは切実な理由ですが、任意整理を選択することに無理がある場合、途中で返済が滞って結局最終的に自己破産しなければならない状況に陥る危険もあるということを知っておきたいものです。

警備員が任意整理するケース、まとめ

  • 警備員も含め、他人のお金を管理する可能性がある仕事をする人は自己破産すると職業制限にかかることがある。
  • 職業制限は破産手続開始決定から復権までなので人によっては2、3カ月で済む。
  • 任意整理であれば職業制限にはかからない。
  • 任意整理においては裁判所への書類提出が必要ないため、職場バレの心配は極めて少ない。
  • 自己破産による職業制限を避けようとして任意整理する場合、返済計画に無理がないかどうかという点にくれぐれも気をつける。
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西岡容子

西岡容子

熊本にて夫婦で司法書士事務所を営む。10年以上の実務経験で、債務整理の経験も豊富。現場での経験を活かしてユーザーのためになる確かな記事を執筆中。
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