【第2回】借金玉の「人生の潤いと文化の話」
債務整理について記事を書いて、と言われて書くシリーズ2回目です。とはいっても、債務整理についての法律的な話とか、具体的なハウツーなんかは僕が書くよりプロに尋ねたり自分で情報を集めたりして貰った方がいいので、前回に引き続き僕は「借金」にまつわる思い出話をします。
何故人は借金地獄に陥るのか。僕は事業のためにたくさんの借金をしたことがあります。それは従業員に給料を払うためであったし、あるいは事業を広げるためであってトータルで言うと「儲けるため」の借金でした。もちろん、僕の名前が「借金玉」である通り、その事業は失敗に終わったのですが。この借金は目的がはっきりしています。いわゆる「リスクテイク」の借金です。
でも、僕が見て来た借金苦に喘ぐ人たちの借金の動機は大体の場合そういうものではありませんでした。今日はそんな話をしたいと思います。
生きていくのに最低限必要なお金
僕は最近バイクを1台買いました。中古で40万円ほど。生活にどうしても必要だなぁ、という理由での購入です。これは、僕にしては清水の舞台から飛び降りるような思いの買い物でした。数千万の資金を振り回して事業をやっていた人間として、あるは32歳の男として些かキモが小さいなぁと思いますが、僕のお金に対する感覚はそんな感じです。
事業というのは「この事業をやりたければこれだけの投資が必要で、これだけのリターンを見込む」というものです。社長の仕事というのは、ものすごく雑に一般化してしまえば「お金を使ってお金を稼ぐこと」と言えます。そんなわけで、僕の事業に関するお金の感覚と生活に関するお金の感覚はまるで別物で、2万円のギターを買うにも数週間悩みこんでしまうくらい僕は個人的なお金の使い方に慎重です。
これは、僕が「マトモに食えない」時期を結構長く過ごして来たからで、「最低限のお金でそこそこ楽しく暮らす」というのが習い性になっているからです。現在も家賃十万円ちょっとの部屋に同居人と二人で暮らしていますし、一か月手取りで15万円あれば結構楽しく暮らせます。こういう生活をしているとあまり「借金」をする機会はありません。
この「生きていくために最低限必要なお金」は人によって全く違います。僕が故郷の北国、僕がノーススラムと呼ぶ場所で暮らしていた時には、「最低限必要なお金」について考えることがとても多かったことを思い出します。その頃僕は仲間と暮らしていたし、スラムでシェアハウスをやっていると住人がどんどん増えるので、多くの人間の破滅的な「お金の使い方」をたくさん見ました。
人生の潤いは高くつく
例えばお酒、例えばギャンブル。そういうものを「生きていくのに最低限必要」だと感じるでしょうか。僕は必要ありません。でも、場合によってはこれが「生きるために最低限必要」となることはあると思います。この意味が伝わるでしょうか。
例えばこういうことです。僕は「月に5000円の本代」とか「インターネットの回線代」が生きるために最低限必要です。どれだけ収入が減ってもここだけは僕は削らないと思います。「これを奪われたら生きている意味がなくなっちゃうよ」と思います。少しニュアンスが伝わって来たでしょうか。そう、人はパンのみに生きるにあらず、というやつです。
人間が生きていくには喜びが必要ですし、文化が必要です。これがゼロの状態で生きられる人というのはほとんどいないし、そんな人生を生きたいとも思わないでしょう。どんなに生活が苦しくても、人生には潤いが必要です。しかし、「人生の潤い」というのは場合によっては非常に高くつきます。
僕の育ったノーススラムには「遊び」の数があまり多くありませんでした。若い男が集まって遊ぶとなれば、酒を呑むかギャンブルを打つかになりがちで、更にカネがなければないほど者ほどこの傾向は強くなりました。長く楽しめる趣味「深い」趣味というのは概してエントリーコストもハードルも高い。「その辺にあってすぐ遊べる文化」というのは貴重なものだったのです。ちなみに、現在はみんなソシャゲーをやっていると風の噂で聞きました。
僕がわりと安く「人生の潤い」を手に入れる術を持っていたのは、たまたま幼いころに読書の習慣を身に着けていたこと、そしてインターネットが好きだったこと。この二つにつきます。どちらも時間を無限に溶かす趣味ですが、さほどお金はかかりません。ウィキペディアを読んで過ごすあの時間が僕は大好きです。でも、こういう僕の趣味は仲間から「おかしな奴」と思われていました。2005年頃、僕がインターネットに夢中になっていると、よく仲間に「それ楽しいの?」とよく言われました。とても楽しかったです。僕が生活を切り詰めてパソコンを購入していると、仲間は僕を奇異な目で見たものでした。
人生の潤いとは文化である
僕が見て来た多くの「借金」の理由は「人生の潤いに必要なコストが高すぎる」ということでした。例えば、酒を呑むにも自宅に友人を招いて呑めば3000円で済むものが、夜の街に出て派手に飲み歩いてしまうと、一晩で3万円なんてすぐに溶けます。しかし、「街に出て派手に呑む」以外の呑み方を知らない友人は、ノーススラムにもたくさんいました。
僕が「シェアハウス」をやっていたのは、冷蔵庫に発泡酒を入れておけばいつでも結構楽しく呑めたからです。リビングには大体いつでも話し相手がいました。パチンコ屋に行かなくても、呑み屋に行かなくても、そこが「人生の潤い」でした。実際、これは多くの連中にとってもそうだったようで、色んな人間が僕のシェアハウスには入り浸っていました。
シェアハウスというのは「強制会話発生装置」です。冷蔵庫は一個しかないわけですから、誰かが発泡酒を取りにくれば、「じゃあ俺も」となります。そのままなんとなく喋りつつ呑んでいれば、時間が自然に流れていきます。僕がハイボールを呑んでいると、そこから炭酸水を買い置きする文化が生まれたりします。ハイボール、ちょっと良いウィスキーで作っても結構安いですよね。
文化というのは人と人の交流で広がります。誰かが持ち込んでくれないと、なかなか新しい文化に触れることは出来ません。固定的なメンバーでパチンコに行ってその後呑みに行く、という「人生の潤い」しかないところはたくさんあります。ノーススラムも基本的にそういう場所でした。「それしか無いのだからそれが必要なんだ」という切実さが、あの多重債務者の破滅的な行動の根源にはあるのです。
あなたの人生の潤いについて考えてみましょう
さて、翻ってあなたの「人生の潤い」はどうでしょうか。「とてもお金がかかっているのはわかっているが、これがなければ暮らせない」というものがある人は、他の何かを探す必要があると思います。よく「浪費を減らせ」というアドバイスがありますが、僕は本質的に「浪費」などないと思います。それは、「生きるために必要な潤い」なのです。ただ、その「潤い」の手に入れ方が上手ではない。そういうことだと思います。
幸い、インターネットの時代になって情報というのは探そうと思えば探せるようになりました。あなたが自分の生活様式が破滅的で、自分が厳しい債務を抱えた状態にあると感じているなら、まずは前回書いたように「プロを頼る」と。そして次に、自分の「人生の潤い」について考えてみてください。生活費なんてのは所詮固定費なので、切り詰めるには限界があります。もちろん、生活費に致命的な欠陥があるならそれは直すべきですが、僕が知る限り、多くの人の破滅理由は「人生の潤いを高く買いすぎている」でした。
「これは浪費だ、絶たなければいけない」という考え方はとても辛いものです。人は結構他人の「人生の潤い」を過小評価します。「浪費」と切り捨て、「そんなの必要ないだろ」と怒ります。でも、僕は言い切ります。それは必要なんです。潤いのない人生を生きることはできないのです。
文化というのは、実を言えば結構その辺に転がっています。インターネットの時代になって「その辺」の距離は無限に近いほど広くなりました。でも、目を凝らさないとなかなか見えません。楽しいことというのは探さなければ見つからないものです。僕も「これがたくさんあればあるほど生き残れる可能性が上がる」という実感があるので、日々探し続けています。
あなたが良き人生の潤いを見つけられることを、心から願っています。楽しいことを探しましょう。やっていきましょう。
最後になりますが、「人生の潤い」を高くしすぎて借金苦に悩んでいる人は、プロに相談してみてはどうですか?
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