債務整理の森

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病気で借金が返せなくなった!どうしたらいいの?専門家が解説

 

クマ
借金があるのだけれど、病気になって返済できなくなってしまったんだ。
どうしたら良いのかな?
シカ
病気により借金返済が困難になってしまった場合には、まず、債権者に連絡して返済を待ってもらえるかどうか、相談することが大切だよ。
今回の記事では、病気により借金返済が困難になってしまった場合の対処法について、詳しく見ていこう。

人生には色々と予期せぬ出来事が起こるものですが、突然病気が発覚するというのもその一つです。

特に住宅ローンのような大きな借金をする際は何十年先の返済まで見越して計画を立てているはずですが、病気で大きく減収すればその計画が狂ってしまうことにもなります。

では、万一病気にかかったことがわかって借金を返済するのが厳しい状況になったらどうすればよいか、返済だけではなく生活面も含め考えてみましょう。

病気で借金が返せなくなってしまったら

最初に基本の確認ですが、病気で入院したり仕事を辞めなければならないことになっても、それだけが理由で借金がなくなることはなく、返済義務だけが残ってしまいます。

もしも病気で大きく減収したり、退職せざるを得なくなった場合は絶対に債権者に対して何も言わずに放置するということをしてはいけません。

なんの相談、連絡もなく返済が滞った場合は、分割払いしていた債務は「期限の利益(分割で支払える権利)」を失い、一括返済を求められることもあります。

一括で支払えない場合には督促を経て「裁判」などの手続きがされ、勝訴判決のような「債務名義」と呼ばれる書面を取られると、債務者の預貯金や給与など財産を差し押さえられることもあります。

債権者にすぐに連絡

病気により返済し続けることが難しいと感じたら、すぐに債権者に連絡し、まずはリスケジュール(返済計画の見直し)について相談してみましょう。

どのような対応をされるかは、債権者がどのような会社か(銀行、消費者金融、クレジット会社など)、現在の債務者の状況がどうなっているか(長期入院なのか?退職するのか休職後に復帰できるか)、今までの返済状況などで異なります。

今まで真面目に返済し続けた債務者であれば、状況に配慮して利息の見直しや若干の返済猶予、返済期間の延長については認めてもらえることもあるでしょう。

ただ、期待のしすぎは禁物ですので、もしリスケジュールができない場合のことも考えておきましょう。

すぐに返済できない場合には

クマ
病気が長期化しそうだから、今後借金を返済していくことは困難なんだ。
借金を返済出来ない場合の対策を教えて!
シカ
借金返済が困難な場合には、債務整理を検討してみよう。
債務整理には、借金を全てチャラにする自己破産だけではなく、返済型の任意整理や個人再生もあるよ。

では、病気の影響が長期化して返済も難しく、生活にも困るという状況ではどのような対処方法が考えられるのでしょうか。

債務整理を検討

減収の期間が短く、貯金で補いながら返済できるような場合はまだ良いのですが、長期休養や退職などで収入の見通しが立てられない場合は借金そのものを0にしてもらう必要が出てくることもあります。

債務整理のメニューは自己破産のような「清算型」手続き以外に、任意整理や個人再生といった「返済型」の手続きがあります。

しかし返済型手続きをしようと思えばやはりいつ頃収入が回復するか、そしてそれが持続できる見込みがあるかがわかる必要がありますので、病気からの回復時期を予測できないような場合には自己破産が適しているといえます。

自己破産については、「支払不能であること」が条件であり、具体的に「〇〇万円以上の借入れをしている」などという基準があるわけではなく、あくまで本人の収支バランスにより手続きができるかどうかが決まってきます。

そこで、自分のケースでは自己破産が可能なのかどうか?という見通しにつき、あらかじめ弁護士に相談してみることをおすすめします。

とりあえず相談だけということであれば無料で受け付けている事務所も増えていますし、その後の手続き報酬は事務所により異なります。

どうしても弁護士費用が捻出できない経済状態の人は、「法テラス」という国の機関が制定した「法律扶助」という制度を利用して費用の立替えをしてもらえることがあります(ただし条件があります)。

法テラスを利用するには

「法テラス」とは正式名称を「日本司法支援センター」といいますが、市民の法律トラブル全般について法務省が所管する「法律問題解決のための案内所」です。

つまり、こちらが直接手続きをするというよりも

  • 「まず一次的な相談を受けて適切な法律家等を紹介する」
  • 「法律や手続きに関する情報を提供する」
  • 「条件を満たした人に費用の立替えを行う」

という機能を持っています。

「法テラス」公式サイト 

法テラス公式サイトのトップページにも注意喚起がされていますが、近年法テラスを名乗る不審な電話もあるようですので、先方から電話がかかってきて「法律家を紹介する」などと勧誘があった場合は話に乗らないように気をつけなくてはなりません。

相談したい場合は上記の公式サイトから問い合わせをするのが確実です。

法テラスの相談窓口で電話、メール等で相談する方法もありますが、弁護士や司法書士で法テラスと契約を結んでいる事務所もありますので、そちらで「一般法律相談の援助」を受けることもできます(資力の要件があります)。

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療養中の生活を考える

クマ
借金を返済できないだけじゃなくて、生活を送るのも困難なんだ。
何か利用できる制度はないかな?
シカ
会社員の場合には、傷病手当を利用することで、療養中でも給料の3分の1程度を受け取ることができるよ。
治療費が高額になってしまった場合には、高額医療費制度や、高額医療費貸付制度、限度額適用認定などの利用を検討してみよう。
その他、仕事が原因となっている場合には、労災を利用することができるし、傷病手当も利用できなかったり、治療が長期化してしいまい、収入がない場合には、生活保護を利用するという方法もあるよ。

では、借金自体については法律家の手を借りるとしても、療養している間に働けず収入がない、そして医療費がかさむなどの問題についてはどう対処したらよいのか考えてみましょう。

傷病手当金を申請する

「傷病手当金」という制度は、公的な健康保険に加入している人が一定の要件を満たすと受給できる給付です。

日本の公的保険制度には、会社員等を対象とした「健康保険」と、自営業者等を対象とした「国民健康保険」があります。

これらのうち、傷病手当金の対象となるのは前者の「健康保険」に加入する人です。

条件や給付期間としてはこのようになっています。

「被保険者が病気や怪我のために仕事を連続して3日以上休み、十分な給料を受けられない場合に、4日目から最長1年6カ月支給される」


支給額についてはこのように定められています。

「支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額(※)を平均した額/30日×2/3」

※標準報酬月額・・・社会保険料の計算用を行いやすくするために段階を設けて設定された計算用の報酬額

もう少し平たく言えば、おおよその月給の3分の2を最大1年半、支給してもらえるということです。

医療費の負担を減らすには

また、中には医療費が多額になってしまう病気もありますが、そのような時に利用できる制度を知っておきたいものです。

「高額療養費」という制度は、月間の医療費に限度を定めて、それを超えた場合は後で請求することにより返金を受けられる制度です。

限度額がいくらになるかは、前述した「標準報酬月額」により段階的に定められています。

ただ、高額療養費はいったん医療機関で支払いを行い、その後請求、審査という段階を経て返金されるため3カ月くらいの時間がかかります。

一時的な立替えが難しい人は「高額療養費貸付制度」の利用を検討しましょう。

これは、高額療養費支給見込額の8割までを「無利子」で貸し付けてもらえる制度です。

また、医療機関等の窓口での支払額を自己負担限度額までに抑えてもらう「限度額適用認定」という制度もあります。

協会けんぽ支部であらかじめ自分の限度額を示す「限度額適用認定証」を交付してもらい、医療機関の窓口で健康保険証とともに提示すれば適用を受けることができます。

労災を利用する

業務上や通勤途上における労働者の病気や怪我、障害、死亡等については「労災保険」による給付がされる場合があります。

労災保険は原則として1人以上の労働者を使用する事業所は強制加入であり、保険料は全額事業主負担となっています。

病気や怪我と労務の因果関係が認められる場合、具体的には主に次のような状況下で支給の対象となります。

  • 業務の時間内や残業中に業務に従事している場合
  • 昼休みや就業時間前後で業務には従事していないが、当該病気や怪我などが事業場の設備や管理状況に起因する場合
  • 出張や社用などで事業場の外で業務に従事している場合
  • 合理的な経路で通勤している場合

労災保険の給付は種類が多いため一覧にまとめます。

給付の名称

給付内容

業務災害の場合

通勤災害の場合

療養補償給付

療養給付

労災病院等で直接、現物支給として療養を給付

休業補償給付

休業給付

業務上、通勤途上での病気や怪我で休業したため賃金を受けない日が4日以上ある場合は、4日目から給付基礎日額の60%相当額を支給

傷病補償年金

傷病年金

業務上の病気や怪我により療養し、療養開始後1年6カ月後に傷病が治っておらず、傷病等級1級から3級に該当する場合に支給

障害補償給付

障害給付

病気や怪我が治った後に障害が残った場合に支給

介護補償給付

介護給付

労災事故により介護を要する状況になり実際に介護されている場合に支給

遺族補償給付

遺族給付

業務災害または通勤災害により死亡した場合、遺族に対して年金を支給

葬祭料

葬祭給付

業務災害または通勤災害によって死亡した労働者の葬祭を行う者に対して請求に基づき支給

※給付基礎日額・・・原因となった病気や事故発生の直前3カ月に労働者に支払われた賃金額をその期間の暦日数で割った1暦日当たりの金額。

なお、これらの制度につきさらに詳細な条件等は下記のサイトからも確認できます。

全国健康保険協会 

厚生労働省 「労働保険について」

生活保護を検討する

長期間の療養など病気のため収入が大幅に減ったり途絶えたりして日々の生活も立ち行かない状態になったら、選択肢の一つに入れたいのが「生活保護」です。

日本人の場合、「生活保護を受けることは恥だ」と考える人も少なくないのですが、病気や怪我の時こそこのような制度が意味を持ってくるため、利用できる条件を備えた人は臆せず市役所の保護課などに相談したいものです。

ただ、生活保護については借金が残った状態で相談に行くと「まず借金の整理をしましょう」と指導されます。

債務整理には「返済型」の手続きもあると上に説明しましたが、任意整理や個人再生などの「返済型」の手続きは生活保護受給中にすることは基本的にタブーです。

なぜなら保護費として支給された金銭はもともと税金であるため、そこから返済することは許されないという考え方になるのです。

よって、生活保護の受給に先立ってまずは自己破産の手続きをすることになります。

生活保護レベルの収入状況に置かれた人については、法テラスの法律扶助で立て替えられたお金の返還が免除されることもありますので、費用面を心配しすぎて相談をためらうことがないようにしましょう。

生活保護についてはマスコミで一時期「水際作戦」が話題になりましたが、これは生活保護受給者の数をなるべく抑えたい役所(福祉事務所)側が相談者を追い返すというものです。

こうなることを避けるためにはあらかじめ生活保護に通じた弁護士に相談し、できれば同行し適切に状況を説明してもらうのが望ましいということになります。

そのためやはり法テラスへの相談を最初に行う方が申請への道筋がスムーズになる可能性が高いでしょう。

いずれにせよ、一番してはならないのは困窮した状況を誰にも相談せず「放置」してしまうことです。

電話やメールなどでも受け付けてもらえる窓口がありますので一刻も早く相談することを心がけましょう。

まとめ

クマ
病気で借金が返済できなくなってしまった場合でも、様々な制度を利用したり、債務整理を検討することで、借金に追われる事なく生活できるんだね。
安心して治療に専念できるよ!
シカ
自分自身でどの制度が利用できるのか、どの債務整理が良いのかを検討するよりも、弁護士などの専門家に依頼する方が、スムーズな手続きが可能だから、まずは弁護士に相談してみるのがおすすめだよ。
  • 病気で借金を返済できる目途が立たなくなったら、すみやかに債権者に連絡してリスケジュールなどの相談をし、決して放置することがないようにする。
  • リスケジュールでも解決できない場合は債務整理の相談を弁護士に行う。
  • 生活自体が立ち行かない場合、高額療養費や労災など各種の給付制度や生活保護などを利用することを検討する。
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西岡容子

青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。

平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。

「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。

債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。

■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年   青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格 
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設

■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087

■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属

■注力分野
債務整理
不動産登記
相続

■ご覧のみなさまへのメッセージ
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