債務整理は電話のみでもできるの?
弁護士に債務整理を依頼する場合、電話応対のみでも可能なの? 電話のみでも債務整理が可能とアピールしている弁護士事務所も少なくないね。 だけど、電話のみで債務整理を完結させる場合には、様々な点で注意が必要となるんだよ。
電話のみでの債務整理はどんな点に注意したら良いのかな? 実際に電話のみでの債務整理はお勧めなの?? よし!では早速、債務整理を電話で依頼する注意点などを見てみよう。
弁護士や、司法書士に会うことなく、電話のみで債務整理手続きをすることは可能なのでしょうか?
結論を先に書くと「可能」なのですが、それを大々的にアピールしている事務所には疑問が残ります。
そのあたりについて、詳しく書いてみましたのでご参考にしてみてください。
弁護士や司法書士に会わずに電話のみで債務整理することはできるのか?
少人数の弁護士事務所、司法書士事務所は最初から最後まで本職が直接相談者の対応をしてくれるところもあります。
しかし、大きな事務所になればなるほど面談から依頼、手続きまで事務職員がやることも多く、相談者が法律家に会わないまま解決まで至ることもありえるのです。
法律家と面談しないで借金に関する事件を受託、処理することは「違法」とまでは言えません。
しかし、「会わなくても大丈夫」とまで言い切れるものでもありません。
もしも、一切会わずに受任できるという状態になれば、依頼者がきちんと手続きを理解していなかったり、事務職員が理解や経験不足のため相談者の質問に適切に答えられなかったり、費用の面で行き違いが生じたりと、相談者にとって不利になることも出てきます。
そこで、弁護士も司法書士も、専門家を統括する各連合会が専門家たちの事件処理を律するような内部の規則を作っているのです。
債務整理の業務については各連合会が指針を出している
全く会わずに債務整理をする事を禁止されているわけではないんでしょ? 弁護士連合会では、弁護士と依頼者が会って案件を進める事が義務付けられているんだけれど、例外として、依頼者に会わずに債務整理を進めるような場合もあるんだ。
弁護士であれば日本弁護士連合会、司法書士であれば日本司法書士会連合会という組織に加入することが義務づけられています。
強制加入団体というのは、そこに加入しなければ弁護士業務、司法書士業務自体をすることができないのです。
そして、会員はその中で定められた規則を守る義務を課せられています。
貸金業者への過払い金返還訴訟が過熱し、取引履歴を取ることで、依頼者と契約をするか否かを判断するような、専門家としてのモラルに欠ける事務所も出てきたことから、依頼者の利益を害することがないようにガイドラインが定められるようになりました。
たとえば、日本弁護士連合会(通称:日弁連)は「債務整理事件処理の規律を定める規程」というものを定めています。その中で、
「債務整理事件処理の規律を定める規程」
- 弁護士は、依頼主と会わずに債務整理事件の依頼を受けてはいけないのが原則です(弁護士と会って依頼をするのが原則です)。
- 原則として、受任する弁護士が自ら個別面談をして、事件の依頼主の事情を聴かなければなりません。
のように、専門家自らの面談義務があることを明示しています。
また、同規程の中にある広告に対する規制の中で
弁護士と面談する必要があることを広告に表示するよう努めること
となっており、広告を見た人に対し、「原則弁護士と面談しなければならない」ことを伝える努力義務も課しています。
一方で、日本司法書士会連合会も、「債務整理事件の処理に関する指針」を出しており、その中で
債務整理事件の依頼を受けるにあたっては、依頼者その他法定代理人と直接面談して行うものとする。
としています。ただし、こちらは例外規定を設けており、
- 債務者と以前から面識がある時
- 債権者(ヤミ金)からの返済取り立てが激しく(ひっきりなしに電話したり、家に来るなど)早急に止めさせる必要がある時
- 離島などいわゆる「司法過疎地(法律家が極端に少かったり、ゼロの地域)」に居住しているが、早急に取り立てを止める必要がある時
のような場合には、面談に代わる方法でも認められるということです。
ただ、やはり倫理的に見れば消費者金融や闇金などの取り立てが激しいので時間的余裕がなかった、という理由で会わずに受託したのであれば、後日あらためて面談するのが望ましい進め方であると解釈できます。
法律家に会わずに行った債務整理の効力はどうなるか?
依頼者と会わずに債務整理を勧めた場合でも、債務整理が認められないって事はないんだよね? そうだね。 だけど、実際に会わずに債務整理を進める事で、債務整理が失敗となってしまう事もあるんだよ。
では、上記のような理由がないのに専門家が一度も本人に会わずに電話などで打ち合わせしながら処理し、そのまま和解したり、破産手続きを終了させたりした場合、その手続きの効果はどうなるのでしょうか?
決して、法律的に見て効力が発生しないというわけではなく、債権者との関係で有効に和解が成立していますし、裁判所によって認められた免責(借金をチャラにする)も有効です。(規程を破ったことに対するペナルティを、弁護士や司法書士が懲戒という形で受ける可能性はあります)
ただ、効力が発生しているからそれで良いというものでもなく、すべてを事務職員のみで進めるようなやり方だと、
- 手続きの途中で法律的な説明が不十分なことによる誤解が生じてトラブルになる
- 手続終了後に依頼者が後悔する事態になる危険
- 弁護士費用の支払い方法やタイミングの食い違い
などもありえます。
また、電話連絡やメールのみだと、専門家と話せたとしても顔を見られるわけではないため、図解しながらの説明が難しかったり、相談者の理解度を表情で確かめながら説明するなどのきめ細やかな対応ができなくなります。
特に影響が大きいと考えられるのが手続き選択における判断ミスがあった場合です。
破産以外の方法も取り得るケースで破産させてしまったり、逆に支払能力が足りないのに無理に任意整理させてしまう事もありますし、過払い報酬のみに対応する事務所であった場合など、状況によっては取り返しがつかない事態になります。
法律事務所によっては、交渉が上手く進まない事も考えらます。
全国対応の事務所は、中身をよく見極めて依頼することが大切
実際には会って債務整理を進めるべきなんでしょ? なのに全国対応可能としている弁護士事務所は、それだけで怪しいと判断できるって事なのかな? 全国対応をしている事務所でも、各地方に店舗が拡大している場合もあるし、わざわざ会いにきてくれるような弁護士もいるから、弁護士事務所について、しっかりと調べた上で依頼することが望ましいと言えるね。
では、遠方の依頼者に対して全国対応をうたっている事務所は、実際のところどうなのでしょうか?
インターネットや新聞、テレビ、ラジオなどで宣伝している全国対応の弁護士、司法書士事務所の中には非常に優れているところと、ずさんな執務をしているところが両方あるのが実情です。
たとえば、遠方から法律相談や依頼をしようとした時に、飛行機や新幹線で直接会いに来る準備があり、相談者からの情報の聞きもれがないように聞き取り用のフォーマットが整っていたり、きめ細やかな説明があるような事務所であれば少なくとも相談過誤(誤った事件処理をしてしまう)の危険は少ないことが考えられます。
中には、遠方の人でも簡単に事件処理の経過を確認できるようにWEBで進行状況を見られるようになっている事務所もあります。
一方で、弁護士事務所で開設している、借金お助け相談窓口などを利用して問い合わせても、まったく専門家が出てくる気配がなく、事情の聞き取りも雑、すべて流れ作業で事務職員がこなし、報酬に対する説明もあいまいだったり、依頼したはずなのに全然音沙汰がないなどであれば注意する必要があります。
弁護士選びに失敗しないためには、最初の無料相談などの際に疑問だと思ったことをそのままにしないこと、特に報酬のことはしっかり書面で確認し合うこと、事務職員だけで委任契約を結ばせようとするようであれば、弁護士に会って説明を受けたい旨を伝えてみることです。
着手金だけを支払って後の手続きがスムーズに進まなければ依頼した意味がありません。
相談者の側も、決して受け身の対応をするのではなく、自ら良い事務所を選び取ろうとする姿勢、努力が大切であるといえます。
このあたりの事は、はたの法務事務所さんに取材をしに行った時にも少し触れています。
参考にしてみてください。
まとめ
電話のみでの債務整理はできるだけ避けた方が良いんだね。 それでも依頼せざるを得ない場合には、弁護士選びを慎重に行う事が大切なんだね。 債務整理が失敗となってしまう事が一番の不安要素となるから、弁護士選びは非常に大切であると考えよう。
内容をまとめると、
- 任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求それぞれ電話のみでも可能である
- 電話のみで債務整理を完結することは可能ではあるが危険も伴う
- 会わずに受任する場合は弁護士・司法書士選びを慎重に行う
- 「電話のみ」であることをアピールしてくる事務所には注意
西岡容子
青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
■注力分野
債務整理
不動産登記
相続
■ご覧のみなさまへのメッセージ
通常、お金のプロである債権者と、一般人である債務者の知識レベルの差は歴然としており、「知らない」ことが圧倒的に不利な結果を招くこともあります。
債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。
借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
なぜなら大まかにでも知識があれば法律家の話がよく理解できますし、不明な点を手続き開始前に質問することもできます。
法律家に「言われるがまま」ではなく、自分の意思で、納得して手続きに入るためにも当サイトで正しい知識をつけていただけたら幸いです。
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