生活保護の条件

 

シカ

生活保護って誰でも受給することができるの?

ミミズク

最低生活費に足りない収入の人は、受給することが可能だよ。

だけど、受給するには、様々な条件があるんだ。

今回の記事では生活保護を受ける条件について、詳しく説明するね。

タイトル

人生にはいつ何が起こるかわかりません。

病気や障害のため働けなくなる、高齢者なので就職先が見つからない、離婚して自分の稼ぎではどうしても子供を養えないなど、さまざまな事情で生活が立ちゆかなくなることがあります。

そのような時、国が日本国民の生活、人としての尊厳を守るために作られている制度が「生活保護」です。

現在の受給者数は約210万人ほどであり、特に高齢者世帯は増加傾向にあります。

ただ、生活保護については世間での誤解や偏見も多く、役所でさえも間違った運用をしてしまっているのが現状です。

では生活保護の趣旨や、どうすれば生活保護を受けられるのかについて、代表的なポイントを確認しておきましょう。

生活保護の趣旨

解雇、就職難、病気、怪我、死別や離別などで収入が途絶えてしまった、働いても生活費や医療費を賄えないといった状況で活用できるのが生活保護です。

中には「生活保護の世話にだけはならん!」と頑固にその利用を拒む人もいます。

特に戦前、戦中生まれくらいの世代は我慢強く、健康を害するぎりぎりの状態まで生活を切り詰めてしまって行政に助けを求められない人も多いものです。

しかし、生活保護というのは憲法に基づく国民の権利であり、国には国民に最低限度の生活を保障しなくてはならない責任があるのです。

つまり、生活保護制度とは

  • 憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」を国民すべてに保障するため
  • 国民の自立の助長

ということをその趣旨としています。

生活保護は生活に困窮した原因を問わずに利用できるものであり、「現に困っている経済的状態」を判断して、保護が必要と認められれば誰でも受給することができます。

生活保護の趣旨

また、外国人であっても一定の要件を満たせば受給できることがあります。

このような国の制度としては他に児童手当などもあり、包括して「扶助費」という呼び方をすることもあります。

保護基準額は法律で具体的に定められているわけではありませんが、毎年、厚生労働大臣が消費支出の伸び率に合わせて決めています。

生活保護の実施機関


シカ

生活保護は、誰が管理しているの?

ミミズク

それぞれの市町村の福祉事務所で管理されているんだよ。

生活保護は国の責任で行われる事務です。

厚生労働省、厚生労働大臣の担当になりますが、実際の事務を行うのは地方公共団体の長(都道府県知事、市長、福祉事務所を管理、設置する町村長)となります。

それらからの委任を受けて福祉事務所が具体的な業務を行い、それに対する協力機関、補助機関として民生委員などがあります。

生活保護を受給する条件とは


シカ

生活保護の受給条件を詳しく教えて!

ミミズク

最低生活費を下回る収入である事、援助をしてくれる親族がいない事、30万円をこえている財産をもっていない事などの条件があるんだ。

受給条件を詳しくチェックしていこう。

では、さらに具体的にどのような人なら「困窮状態にある=生活保護を受給できる」と認められるのでしょうか。

生活保護は言うまでもなく「国民の税金」です。

よって、やはり「生活に困窮している」と認められるための一定の条件が出てきます。

原則として本人の働く能力を活用している、本人名義の資産を生活費に充てているなどの努力をした上で、それでも生活が立ちゆかない場合のみ生活保護の対象になるということです。(これを「保護の補足性」といいます)

つまり「生活保護を受けることになったら支給金額は〇〇円」と一律に決まっているわけではなく、所得者である場合には、収入や手当で足りない部分が保護費として賄われる、という考え方になります。

保護費の内容としては基本的な生活扶助の他に住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助などさまざまな種類があります。

生活保護基準額の例 (厚生労働省WEBサイト 「生活保護制度に関するQ&A」より引用)

東京都区部等地方郡部等
3人世帯(33歳、29歳、4歳)158,380円129,910円
高齢者単身世帯(68歳)79,790円64,480円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)119,200円96,330円
母子世帯(30歳、4歳、2歳)188,140円158,170円

※児童養育加算等を含む。

いったん条件を満たして受給し始めたとしても年に数回、ケースワーカーが家庭訪問を行い、状況が変わっていないかを確認することになります。

能力を活用しても最低生活費を下回る収入しか得られない


生活保護の運用でとても難しい問題として「働く能力の活用」があります。

  • 働ける人は職業訓練によって職を得る方向に
  • 高齢者や身体的事情で働けない人は生活保護を

という点については誰しも異論がないことでしょうが、この2つの類型にはあてはまらない人も出てくるため判断に困る場面が出てくるのです。

「若く健康で一般的には『働ける人』の類型に入るような人が、不況のために長期間就職活動をしていてもどうしても職が決まらず、ついには路上生活に入り、携帯を持つことも電車代を出すこともできないため就職活動そのものができなくなった。」

このような場合はどうでしょうか。

厚生労働省はこういった「就業のための努力を怠っていないが、職を得られない人」も生活保護の対象になるとの見解を打ち出しています。

就業努力

しかし、生活保護申請の現場(保護課、福祉事務所などと呼ばれる部署)では必ずしもそのような運用はされていません。

通常、若く体に障害などがない人であれば生活保護を申請しても多くの場合「水際」で追い返されているのが現状です。

こういった場合に生活保護を受給しようとすれば「就業のための努力を最大限にしている」という状況を細かく説明していくこと(就職活動の記録などを細かくつけておく)によって現場の職員に理解してもらう努力をしてもらうことが必要になってきます。

他に利用できる法律や制度がない

生活保護とは、他に利用できる年金や手当などの制度があるのであればそちらが適用された後に受けられることになります。(「他法優先」の原則)

資産や財産があると受けられないのか?


生活保護の受給を希望する場合、原則的に自己名義の資産を保護に先立って活用しなければならないということには誰も異論をさし挟む余地がないでしょう。

しかし難しいのは、保護に先立って全財産を処分しなければならないのは合理的ではなく、現実的に受給者の自立を妨げることもあるという点です。

では、どこまでの範囲の資産なら保有し続けられる可能性があるのでしょうか。

資産

持ち家でも受給は可能?

「持ち家があると生活保護を受けられない」というのは法律や行政手続きを知らない人にも一般的に知れ渡っている知識でしょう。

しかし、どのような規模の持ち家でも保有できないというわけではありません。

生活する人の人数と家の広さなどとのバランスなどを考え、分不相応と思われるものでなければ残せることもあります。

自己判断で売却してしまうことはせず、まずは福祉事務所に状況を相談し、残せるかどうかを確認してみましょう。

生命保険がある場合でも受給は可能?

生命保険をかけている人の場合、生活保護を受けるからといって一律に解約しなければならないわけではありません。

保険には死亡や入院など一定の事態に備えるための機能と、貯蓄という機能の2つがありますが、保障が主体になっている商品であれば保有が認められることが多くなります。

ただし、保険料を保護費から支払うことになるため、手厚すぎる保障内容のものは認められないことがあるのは言うまでもありません。

解約返戻金(つまり貯蓄部分)があるものについてどの程度まで認められるかということですが、一般的に最低生活費の3カ月分(30万円程度まで)が目安になります。

また、当然のことですが、保険金の受取など保険のメリットを享受するのは「保護を受ける世帯の構成員」でなければならず、別居の親族など別世帯のために保険をかけることはできません。

※最低生活費の計算方法については、厚生労働省のウェブサイトからPDFをダウンロードすることができます。

自動車を持つことはできないのか?

生活保護を受ける際、自動車を保有することは原則として禁止されていますが、これもケースバイケースで必要と認められれば持ち続けることができます。

大まかに分けると次の2つの場合です。

  • 事業用として自動車が必要(個人タクシーの経営者など)
  • 身体障害のため、自動車で通勤や通院している

ただし、後者については次の5つをすべて満たす必要があります。

  • 障害者のために定期的に使用する
  • 他の交通機関の利用が困難
  • 処分価値が少ない(=安い)
  • 維持費が他から賄われる
  • 本人のために本人または家族などが運転する

このように、かなり厳しい条件が課せられていますので、単に「ないと不便」という程度の理由ではなかなか認められないことを覚悟しておかなくてはなりません。

貯金を持っていてはいけないのか?

預貯金をすべて使い切ってからでなければ生活保護申請ができないとするのは明らかに現実的ではありません。

預貯金については、原則として「最低生活費の2分の1まで」は保有が認められます。

もし、それを超える預貯金があり、生活保護の申請を妨げている状態なのであれば「買い替えが必要な家電の購入」などに充てて預貯金を減らし、そのタイミングで申請に踏み切るという方法があります。

生活を援助してくれる人がいない

扶養義務は強制されるものではない

この点については大いに誤解されているところですので、正しく理解しなければなりません。

生活保護には「扶養義務の履行の優先」という原則がありますが、福祉事務所(保護課)は決して民法上の扶養義務者(親族)に対してであっても扶養を強制できるということはありません。

生活保護申請に行った際に「親族に扶養してもらえるかどうかの調査をしなければ申請を受理することはできません」などと言われるのもよくある対応ですが、これは間違っています。

いったん申請を受理し、そこから親族への扶養照会をするという手順で行えばよいため、扶養の可能性のある親族がいるからその場で追い返すという対応はありえないのです。

「扶養義務の履行の優先」の意味は、もし、現状で親族等に援助してもらっている、あるいは今後親族側に扶養する意思があるという状況であればそちらが優先されるということです。

扶養照会

なお、扶養照会とは次のようなものです。


 

〇〇県〇〇市〇〇1-2-3         平成〇年〇月〇日    

〇〇 〇〇様            〇〇市福祉事務所長  印

 

          扶養照会書        

 

あなたの長男にあたる〇〇 〇〇さん(住所 〇〇〇〇)は生活保護法による保護を申請していますが、生活保護法では民法に定められた扶養義務者による扶養は生活保護に優先して行われるものとされております。

つきましては、保護の決定実施上必要がありますので、あなたからどの程度扶養できるかについて、別紙扶養届出書により平成〇年〇月〇日までにご回答ください。


 

これに対して、照会をかけられた者は次のような書面を返信します。


 

平成〇年〇月〇日

〇〇保健福祉センター所長

住所                              

氏名            印 電話              

 

1 経済的な援助

(1)引き取って扶養する。

(2)引き取ることはできないが、全面的に生活の面倒を見る。

(3)毎月仕送りをする。(平成  年  月から月額〇〇円を送る。)

(4)毎月物品         を援助します。(平成  年  月から。)

(5)次のような事情ですから、扶養援助できません。(できない理由を書いてください。)

2 その他の援助

(1)日常生活の世話(掃除・洗濯・買い物・炊事など)ができますか。

ア. 週  回 イ. 月  回 ウ. 年  回 エ.できない。

(2)様子を見るために、時々訪問することができますか。

ア. 週  回 イ. 月  回 ウ. 年  回 エ.できない。

(3)訪問することはできないが、電話や手紙で連絡を取ることができますか。

ア. 週  回 イ. 月  回 ウ. 年  回 エ.できない。

3 緊急時の連絡先

(1)私あてに連絡してください。

(2)次の人に連絡してください。

住所             続柄         

氏名             電話(   )   -      

4 あなたのご家庭の状況を書いてください。

氏 名続柄   年齢職業・勤務先・学校収入(月額)備 考
世帯主

※収入については、できれば給与明細書等の証明書の添付をお願いします。

   さんほか1名 は、上記のうち、働いている方の扶養家族に入っていますか。

(はい お名前         ・いいえ)

扶養家族に入っている場合、家族手当等の額はいくらですか。(月額        円


 

扶養する側はどのくらい面倒を見るべきなのか

親子ともに成人している場合、もし親族が扶養するとなるとどのくらい援助するのが妥当なのでしょうか?

もちろん、扶養する側の年収や家族の状況などあるため一概には言えませんが、社会通念上期待される程度の仕送りをすればよいと考えられます。

援助できない、あるいは少額しか援助できる状況ではないという時は扶養照会に対して「扶養できない、あるいは月○○円くらいが限度」など、事情を書いて返送すればよいのです。

それに対して福祉事務所が援助の金額や方法などを決めたり強制したりすることはもちろんできません。

扶養の範囲

家族に対し扶養照会をしてほしくないときは

上記のとおり、基本的には「扶養義務の履行の優先」の原則から、扶養できる親族がいる場合には福祉事務所から「扶養照会」を出し、扶養ができるかどうかを確認しなければなりません。

しかし、民法で定められた扶養義務のある人に対して、扶養照会を送ってほしくないということもあるでしょう。

中には扶養照会があると知って生活保護申請を断念してしまう人もいるくらいです。

例えば、DVを原因として夫から逃げてきたので夫にはもう連絡しないでほしいというのが典型的な例でしょう。

そのような場合は今までの事情を福祉事務所に説明し、扶養照会してほしくない旨の希望を伝えて理解を求めるべきでしょう。

母子加算の受給条件とは


シカ

母子家庭の場合、生活保護の金額が加算されるって本当?

ミミズク

そうだね。

地域によって金額は異なるけれど、2万円前後加算されることが多いんだ。

母子加算とは、「ひとり親家庭」に対して基本的な「生活扶助」に加算して支給されるものです。

母子加算という名前ではありますが母子家庭だけが対象なのではなく「父子家庭」であっても受給することができます。

母子加算の趣旨とは「ひとり親家庭特有の事情(たとえばいわゆる「ワンオペ育児」)」で発生する費用を賄い、子供の貧困を防ぐというものです。

児童の人数や地域によっても異なりますが(※生活保護には、暮らしている地域に等級がついておりそれにより支給水準が決まる)、約2万円前後が加算されることになります。

母子加算

ひとり親家庭であることが条件になってくるので、たとえばシングルマザーだった女性が男性と交際を始め、その男性を家に住まわせたとすると、母子加算が(状況次第では保護受給自体も)停止されることもあります。

なぜなら、生活保護には「世帯認定」というものがあり、戸籍上の関係に関わらずそこが何人世帯で、誰の収入から生活費が出ているのか?という生活実態をもとにして受給の可否を判断するからです。

よって、意図せずに給付金の「不正受給扱い」をされることがないよう、世帯の状況(特にお金の流れ)が変わった場合にはすぐ福祉事務所に相談しなければなりません。

障害者加算の受給条件とは


シカ

その他にも生活保護が加算される事ってあるの?

ミミズク

障害がある場合にも、生活保護が加算されるんだ。

だけど、母子加算と障害者加算は同時受給できないから注意しよう。

障害者加算とは、一定の等級条件にあてはまる障害者を対象に、障害者特有の出費(たとえばタクシーの利用)を補うため、基本的な生活扶助に加算されるものです。

  1. 身体障害者障害程度等級表1、2級に該当する者等
  2. 身体障害者障害程度等級表3級に該当する者等

1の該当者の方が2よりも支給額は高く2万円台後半くらいですが、居住する地域により異なります。

2の該当者は1万円台後半くらいでやはり居住する地域により異なります。

なお、上記の「母子加算」と「障害者加算」を併給することはできません。

障碍者加算

母子加算、障害者加算とも詳しい金額などは厚生労働省ウェブサイトに掲載されており、PDFファイルをダウンロードすることもできます。

申請の段階でハラスメント等があればすぐ弁護士に相談

ハラスメント

シカ

福祉事務所で相談したら、受給できない理由もはっきりと伝えてもらえずに追い返されてしまったんだ。

どうしたら良いのかな?

ミミズク

福祉事務所できちんと相談にのってもらえないような場合には、法テラスを利用して弁護士に同行してもらうのが安心だよ。

生活保護申請の手続きでは、上記のようにさまざまな支給条件があり、場合によっては条件にあてはまるのかどうかの判断が難しい場面もあります。

上記のとおり「支給条件」の解釈を福祉事務所の職員自身が間違っており、本来であれば支給を受けられるはずなのに申請者が門前払いを食らうといった状況も珍しくありません。

さらに深刻な問題となっているのが、申請(またはその前の相談)段階で行われるハラスメントです。

「その程度の暴力はよくあること。そんな理由で離婚したのですか?」

「女性ですから収入の良い仕事もありますよね?」

など、福祉事務所の職員やケースワーカーから心無い言葉の暴力を受けた、というケースもあります。

もし、このようなことを言われるのはおかしいのでは?とか、やむにやまれぬ状況であるにも関わらず上手にそれを説明できないといったことで困っているのであれば弁護士にあらかじめ相談し、申請に同行してもらうという方法もあります。

相談する費用すらないという人は法テラス(法の絡む問題で困った人が利用できる国の機関)の無料相談もありますのでそのような制度を上手に利用しましょう。

生活保護の条件、まとめ


シカ

生活保護は誰しも受給できるわけではないんだね。

受給条件について、詳しく知ることが出来たよ!

ミミズク

生活が困窮しているけれど、我慢して生活をしている人は少なくないんだ。

たとえ生活保護の受給条件にあわなくても、福祉事務所で相談することで、解決策が見つかることもあるから、まずは、福祉事務所で相談してみよう。

  • 生活保護とは、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を国民に保障するとともに、個々の自立を助長するという趣旨で設けられている制度である。
  • 生活保護はあくまでの個人の就労能力や資産などを活用した後に最後の砦として利用する「補足性」を持った制度である。
  • 生活保護を受けるための具体的条件として「本人の能力や資産が活用されている」「他に活用できる年金や手当などがない」「生活を援助できる人がいない」といったことが挙げられる。
    しかしこれは福祉事務所等から親族に対して「本人への援助やその方法」を強制できるという意味ではない。
  • 生活保護を受ける前提として、保有が許されない財産もあるが、決して全財産を処分してからでないと保護を受けられないわけではない。
  • 一定の条件を満たすと基本的な生活扶助の他に「母子加算」「障害者加算」を受けることができる
  • 生活保護は福祉事務所自身もその運用を誤っていることが多く、特に水際での申請排除や相談におけるハラスメントなどがあれば弁護士に相談し、状況によっては相談への同行をしてもらう方がよいこともある。

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西岡容子

西岡容子

熊本にて夫婦で司法書士事務所を営む。10年以上の実務経験で、債務整理の経験も豊富。現場での経験を活かしてユーザーのためになる確かな記事を執筆中。

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