自己破産における反省文の書き方とは?専門家が解説します
今回の記事では、反省文はどんな時に必要になるのか、反省文の書き方についても見ていこう。
「反省文」というと、学生が校則違反などをした時に書かされる作文のようなものを思い浮かべるでしょう。
ただ、自己破産で言うところの反省文は、そのようなものとは少し趣が異なります。
破産法等の用語から言えば「反省文」という言葉は存在しません。
あくまで便宜上の呼び名であり、正式な自己破産の添付書類というより必要な場合にのみ作成が求められるものです。
では、反省文とはどのような場合に必要になるのか、反省文を求められたらどのように書けば良いのかなどを確認してみましょう。
自己破産手続きに必要となる反省文とは
冒頭に書いた通り、破産法上「反省文」という正式な書類はありません。
つまり、反省文は全債務者に必須ではないのです。
ケースバイケースで「この債務者には反省文が必要」と判断された場合に裁判所や破産管財人、申立代理人弁護士のアドバイスに応じて提出するものです。
(より詳細な本人からの聞き取りを求める場合、裁判所からは文章ではなく直接の面談を求められることもあります。)
ただ、反省文を求められるケースは実際にはそう多くはありません。
各地方裁判所や裁判官の考え方によるところもあると思うので〇%のように断定的なことは言えないのですが、レアケースであることは確かです。
具体的にどのようなケースで反省文が必要になるのかは後述します。
反省文と陳述書の違い
反省文と似ているものとして、自己破産手続きの必要書類に「陳述書」というものがあります。
陳述書は、
- 借り始めた時期
- いつ、いくらくらい、どの会社から借りたのか
- 生活状況はどうだったか
- 行き詰まり始めたのはいつくらいか
- 自己破産を決意した時期はいつか
など、どちらかと言えば事実の報告に重点を置いたものです。
もちろん、最後の部分で「自分の金銭や生活の管理が至らなかった」などの反省を述べることもあるのですが、陳述書では「反省しています」という言葉や感情自体をメインの内容として求められているのではありません。
そこにはあくまで淡々と事実を記述していきます。
裁判所は陳述書に目を通して債務者のお金の流れがどうなっていたのか、ここに書かれていることが客観的資料(預金通帳など)と矛盾していないかどうかなどを確かめます。
たとえば借金の目的が「生活費」と書かれているのに明らかに生活費相当を大幅に超える借入れをしていたり、不適切な時期に特定の債権者への返済をしている事例もあるため、そのような場合は説明を求められます。
もし、そこに免責の可否に影響してくるような事柄があればより免責手続きを慎重に行わなければならないため、陳述書は参考資料としてとても重要な意味を持っているのです。
これに対して「反省文」はどちらかといえば情緒的な部分のウエイトが大きくなります。
お金の流れや生活の部分の記述もしますが、
- 自分の金銭管理が甘かったことを反省しています
- 現在このような収入なので、今後こういった家計収支にして健全な生活を目指します
- 収入アップのためこのような会社への転職を検討しています
- 二度と同じことは繰り返しません
といった、事実と感情を交えた記述になることが一般的でしょう。
反省文が必要になる場合とは
上記のように、反省文がはすべてのケースで必要になるわけではありません。
主に必要なのは、「免責不許可事由がある(=大幅なギャンブルや債権者を騙して借り入れるような、簡単に免責してはならない事情がある)」場合に限られるでしょう。
破産法252条1項に定められた「免責不許可事由」
1号 |
債権者を害する目的で財産を隠す、壊す、不利益に処分するなど |
2号 |
破産手続開始を遅らせる目的で不当に債務を負担する、安価での処分行為をする |
3号 |
特定の債権者を優遇するような担保供与、債務を消滅させる行為をする |
4号 |
浪費又は賭博その他の射幸行為により著しく財産を減少させる |
5号 |
詐術により信用取引を行う |
6号 |
業務や財産状況に関する帳簿を隠す、偽造や変造をする |
7号 |
虚偽の債権者名簿を提出する |
8号・11号 |
調査協力義務違反行為をする、破産手続上の義務違反行為をする |
9号 |
破産管財人などの職務を妨害する |
10号 |
7年以内に再度の免責申立てをする |
そしてこれらに該当する中でも特に悪質と思われるケースについて、より詳細な事情聴取と債務者本人の反省を求めたい場合のみ提出することになります。
反省文を作成するメリット
反省文を書くのは誰しも気が乗らないものですが、ここでしっかりしたものを提出することで、本来免責が難しいと思われたケースで免責が認められたり、免責までの期間が短縮する可能性もあります。
決して手を抜くことなく綿密に作成、推敲したものを提出しなくてはなりません。
自己破産手続きにおける反省文の書き方
では、より具体的に反省文作成にあたってのポイントを見てみましょう。
反省文を作成する時の構成
反省文に限らずどんな文章でも同じですが、全体として構成がわかりやすいことが必要です。
話があちこちに飛んだり、前後がわからなくならないように、
- 「まずは大タイトルと大まかに書く内容を決める(全体のストーリーを想定する)」
- 「そこから細目に入っていく」
ということが大切です。
たとえば「ギャンブルで大半の資産を失った」ケースで説明すると、大まかな構成としてはこのようなイメージになるでしょう(もちろん必ずこの通りにしなければならないものではありません)。
- 借金をするようになったきっかけ
- 借りる際の心情や生活状況など
- 今回、自分がしてしまったことの重大さに対する反省
- 現在、具体的に行っている家計改善策や、依存症治療などとともに、免責への理解を求める訴えかけ
反省文を作成するポイント
反省文を書かせるそもそもの趣旨というのは、
「本来であれば免責が難しいと思われる案件について、なるべく裁量免責に持ち込むことができるように、本人に重大な背信行為等をしてしまったことをしっかりと認識させ、反省させる」
というものです。
※裁量免責・・免責不許可事由があるため本来であれば免責が難しい事件につき、事情を鑑みて裁判官の判断で免責を許可すること。
つまり、「自分のしたことは債権者の権利を侵害している等、本来であれば免責は受けられないかも知れない」としっかり認識していることを伝えることです。
書いてあることに虚偽がない、正直でなければならないのは言うまでもありません。
そして反省の文言とともに、具体的にこれからどう生活を改善しようとしているのかなるべく詳細に記述することが大切です。
通り一遍の反省の言葉だけでは説得力がないため、今後は真摯に自分の行動を正していくことを説明し、理解してもらわなくてはならないのです。
必要となる文字数はどのくらい?
特に〇文字以上必要、という決まりがあるわけではありません。
ただ、あまりに短い文章では反省の気持ちが伝わりませんし、かと言って冗長すぎても結局何が言いたいのかわからなくなることがあります。
要するに、ポイントを的確に押さえて言いたいことが伝われば文字数そのものにこだわる必要はないのですが、普段あまり事務作業が必要ない仕事で文章を書き慣れていない人は、自分で書くとなかなか進まないこともあるでしょう。
申立代理人弁護士や司法書士と事前の打ち合わせで何を盛り込むかをしっかりと話し合い、自分の反省の気持ちを伝えた上で、文章の起案自体は法律家に任せる方がうまくいく可能性が高くなります。
自己破産手続きに必要となる反省文の作成例
上手く書けない時には、弁護士に相談してみよう。
では、あくまで参考程度ではありますが反省文の一例を見てみましょう。
ポイントを押さえた反省文例
ギャンブルで財産の大半を失った人の反省文の例です。
私は〇〇年に就職した不動産会社で営業の仕事をし始めました。
〇〇年には同じ職場の女性と結婚もして子供も生まれ、平凡ではあるものの安定した生活を送っていました。
営業成績としては支店の中でもまずまずで、悪くないサラリーマン生活を送っていたのですが、〇年頃から営業成績が伸び悩むことが増えてきました。
休日もお客様のところに通ったりして信頼関係を築き、契約を取るための努力をしてきましたが思ったように契約が取れません。
朝礼で成績の悪い社員は他の社員の前で叱咤されるのですが、後輩からも見下されているような気がして自尊心を傷つけられることも多くなっていきました。
そんなある日、同僚に誘われて入ったパチンコ店でたまたま大勝してしまったのです。
そこが自分にとって、ギャンブル生活の入り口になりました。
勤続年数だけは長いのに給料もボーナスも上がらない自分は、家に帰っても妻子に対して合わせる顔がなく、仕事が終わった後もパチンコ店に入り浸るようになりました。
仕事がうまくいかないことや、この頃実親の認知症や子供の自閉症が発覚したことなどで自分は全てから逃げたくなっていました。
日常生活の嫌なことが、パチンコをしている時だけは忘れられるのです。
のめり込んでくると段々、この負けを取り戻さなければという強迫観念が出てきてしまい、パチンコ店の近くの消費者金融でお金を借りてはつぎ込むという生活になっていました。
妻には借金で作ったお金で生活費をどうにか渡していたのですが、借りられる上限いっぱいまで借りてしまってどうにもならなくなり、彼女がずっと不審に思っていたことから問い詰められてある日すべてを打ち明けました。
マイホーム資金として貯めていたお金を使い込んでしまった上に、パチンコで作った借金が300万円あること、仕事と偽ってパチンコ店に入り浸っていたことなどです。
もちろん妻は激怒しましたがその後色々インターネットで調べてくれ、弁護士の先生のところに相談に行くことを提案してくれました。
先生は自己破産で解決できる可能性があるが、原因の大半がギャンブルなので免責が難しくなることや、法的な手続きと並行してギャンブル依存症の治療も選択肢に入れた方が良いことをアドバイスしてくださいました。
窮地に立たされた時に逃げる方向に動いてしまう自分の弱さは、今回のことで十分に自覚しました。
こんなことで借金をゼロにしてほしいと考えるのは債権者に対して非常に申し訳なく自分勝手であることは十分理解しております。
しかし、現在、精神科医のところでカウンセリングを受け、自分の行動や考え方の傾向を変えていく具体的な努力をしております。
その点をご考慮いただき、今回だけは債権者の皆様にご容赦いただき、免責をお許しいただくことはできないでしょうか。
伏してお願い申し上げます。
コピーではなく、自分の言葉で語ることが一番大切
反省文ではとにかく裁判官に「ここまで反省しているなら裁量免責を認めても良いかも知れない」と思ってもらえることが大切です。
そのためには、どんなに立派な文章でも借りてきたような言葉では全く説得力がありません。
ひとまず自分で反省の気持ちを文章にしてみて、法律家に読みづらい部分を直してもらったり全体を整えてもらう作業を依頼すると良いのではないでしょうか。
まとめ
- 反省文とは破産法所定の書類ではなく、提出しなければならないケースは非常に限られる。
- 自己破産手続きに必要な「陳述書」は基本的に淡々と事実を述べた部分が多いという意味で反省文とは異なる。
- 反省文を書く上では、自分の言葉で真実を、真摯に述べることが大切であるが、文章の体裁などは法律家に依頼して読みやすく調えてもらうと良い。
西岡容子
青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
■注力分野
債務整理
不動産登記
相続
■ご覧のみなさまへのメッセージ
通常、お金のプロである債権者と、一般人である債務者の知識レベルの差は歴然としており、「知らない」ことが圧倒的に不利な結果を招くこともあります。
債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。
借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
なぜなら大まかにでも知識があれば法律家の話がよく理解できますし、不明な点を手続き開始前に質問することもできます。
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