楽天モバイルなどの格安スマホ、滞納したらどうなるの?専門家が解説
今回の記事では、格安スマホを滞納するとどうなるのか、新たにスマホを契約する場合の対処法について、詳しく見ていこう。
普段のスマホの料金が高くて家計を圧迫しているという家庭も多いのではないでしょうか。
そんな時、最近テレビのCMなどで認知度が高まってきた「格安スマホ」が視野に入ってくることもあるでしょう。
大手キャリアについては滞納すると利用停止や強制解約などがありますが、格安スマホについてはどのような取扱いになっているのでしょうか。
また、滞納を解消できない場合はどのように対処したらよいのでしょうか。
通話会社での滞納情報は共有される
貸金業者や銀行の借金を一定期間滞納すると「信用情報機関」という会社が保有するデータに「事故情報」として記録されてしまいます。
ここに事故情報が記録されるとそれが抹消されるまでの期間は「他の貸金業者等」も含めて正規業者からの借入れができなくなる可能性が高くなります。(本人の勤務先等の属性や借入申込額等によっては審査に通ることもある)
※信用情報機関・・・個人の借金の情報を管理する機関。
現在、日本には「KSC」「JICC」「CIC」の3社がある。
銀行、信販会社、消費者金融などが加盟会社となっており、各社が自分の貸し付ける顧客の情報を提供し、各社が情報を共有している
※事故情報の掲載期間は、事故の内容(長期滞納、債務整理、自己破産など)、また掲載先信用情報機関によって異なります。
ただ、携帯電話の通話料金の滞納情報はこれら一般の信用情報機関とは別であることに注意が必要です。
通話料金滞納に関する情報は一般社団法人「電気通信事業者協会」(TCA)という機関により管理されています。
TCAの公式サイトには「不払い情報を交換する事業者」として以下の業者が掲載されています。
- NTTドコモ
- KDDI(au)、沖縄セルラー電話
- ソフトバンク
- UQコミュニケーションズ
- ウィルコム沖縄
- サジェスタム
- ラネット
- ヤマダ電機
- ノジマ
- 日本通信
- オプテージ
- 東日本旅客鉄道
- ニフティ
- トーンモバイル
- ビッグローブ
- TOKAIコミュニケーションズ
- アクセル
- SORAシム
- Link Life
- ドリーム・トレイン・インターネット
- ジェイコム東京
- ジェイコム埼玉・東日本
- ジェイコム千葉
- ケーブルネット下関
- ジェイコム九州
- 土浦ケーブルテレビ
- ジェイコム湘南・神奈川
- ジェイコムウエスト
- ジェイコム札幌
- 横浜ケーブルビジョン
- ジュピターテレコム
- スマートモバイルコミュニケーションズ
- ちゅピCOM
- 楽天モバイル
- BTV
- LINEモバイル
- STNet
- 長崎ケーブルメディア
これらを見るとわかりますが、大手業者から中小業者まで相当な数が網羅されており、どこか一つの会社を滞納しているうちは(=携帯ブラック)他の会社も滞納情報を把握できてしまうため、新たな契約はできないことになります。
つまり、「A社の回線料金を滞納して携帯を止められているが、新たにB社と契約すればよい」というわけにはいかないのです。
また、MNP乗り換え(今の番号を維持したまま他のキャリアに変更すること)ももちろんできないことになります。
ブラックの過去がある場合には
上に説明したように、「通常の貸金業者の滞納情報」は「携帯の通話料金の不払い情報」とは別個のものです。
前者については「滞納自体が解消されたとしても、その後も一定の期間はブラック情報が残る」ことになります。
しかし後者の通話料金については「料金を支払えばブラック情報が削除される」ことになるため、強制解約(これについては後述します)まで至らなかった人が滞納分を完済すれば、新規の契約は他に支障となる事由がなければ問題なくできることになります。
整理すると、TCAについては
- 回線料金滞納が解消されていない間
- 滞納が続いて強制解約となった場合はその後5年間
記録が残ることになります。
この期間は新規回線契約ができないと考えておきましょう。
なお、「回線契約」と「スマホ端末を分割購入する契約」は別物ですが、分割購入については下に解説します。
格安スマホを滞納するとどうなるのか
最悪の場合、差し押さえになってしまう事があるから注意しよう。
格安スマホだからといって、大手キャリアと滞納時の対応が違うわけではありません。
料金を滞納した場合には督促(確認)の後、利用停止、それでも支払がなければ契約が強制解除されることになります。
どのくらいの期間で停止や解約までいってしまうのかは会社により対応が異なります。
延滞料金が発生する
最初に契約する際に、口座振替やクレジットカード等、支払方法を指定しているはずですが、支払日にその方法で支払うことができなかった場合は何らかの形で督促が来ます。
楽天モバイルの場合には最初に「〇月分が未払いです。払込請求書を送付しますのでそちらを使って支払ってください。未払いの場合には〇月〇日より利用停止します。」というメールが来ます。
その後「払込請求書」が送られてきますのでそれを使ってコンビニエンスストアで支払わなくてはなりません。
なお、延滞利息や遅延損害金についてはそれぞれの通信会社で規定が異なります。
すみやかに滞納の解消をすれば延滞利息がかからないこともあります。
利用停止になる
最初の督促を無視していると、所定の期日に利用停止の措置が取られます。
楽天モバイルの場合は公式サイトで次のような対応をすることが明示されています。
利用月から翌々月の下旬までに支払いが確認できない場合は楽天から案内が来て、対応しなければ利用停止となる。(9月利用分なら11月下旬まで)
この段階ではまだ「契約解除」ではないため、滞納分を解消すればまたその電話番号で利用できる状態になります。
楽天モバイルでは上記の「払込請求書」で支払った場合、10分から15分くらいで復活します。
Yモバイルの場合、店頭やオンラインで滞納分を支払った場合は30分程度で復活しますが、銀行やゆうちょに行って請求書で払った場合は再度利用できるまで2日~7日待たなくてはなりません。
LINEモバイルの場合、使っている回線や滞納解消した時間帯により異なりますが、遅くとも翌日中には復活します。
強制解約になる
楽天モバイルの場合は公式サイトで次のような対応をすることが明示されています。
利用月を含めて4か月目に入っても支払いの確認ができない場合は楽天から案内が来て、対応しなければ契約解除となる。
もし強制解約になってしまった場合は同じ番号はもう使えなくなりますし、上記の通りTCAのデータにも5年間載り続けてしまうことになります。
よって、督促の段階で放置することは絶対に避けなくてはなりません。
差し押さえになる可能性も
携帯料金の督促は、通常の貸金滞納と同じ法的な意味を持ちます。
たとえ利用停止や強制解約になったとしてもすでに発生している料金は「未払いの債務」ですので支払義務を免れることはできず、いまだ支払われない部分については引き続き督促がされます。
ただ、一定期間を過ぎると携帯キャリアから弁護士事務所やサービサーに「債権回収業務」を委託され、そちらからの督促となることもあります。
そして、督促に応じないでいると債権者側は裁判などの強硬な手段で回収をはかることになります。
裁判になった場合はたとえ被告(滞納者)が欠席したとしてもそのまま裁判は進行するため、最終的に原告の訴えが認められれば勝訴判決を取られてしまいます。
もし勝訴判決等を取った場合には「債務名義」となり、それを使って預金や給与の差押えができる状態になります。
給与の一部が差し押さえられたら勤務先から直接債権者に支払われることになりますので、人によっては即、生活が圧迫されることになってしまいます。
よって、裁判所からの期日呼び出しなどを無視していても、事態はさらに悪化するだけなのです。
万一、裁判や支払督促に関する郵便が裁判所から来た場合にはきちんと受け取り、自分ができる対応(遅れるが少しずつ支払う、どうしても支払えないので債務整理を弁護士に相談する等)を債権者に伝え、差押えられる前に解決するようにしなくてはなりません。
新たに契約したい場合には
すでに強制解約になってしまっている場合や、端末ローンが残ってしまっている場合には、信用情報に記録が残っている期間、新たに端末ローンを組むことはできないよ。
いったん強制解約になってしまうと、その会社自体と再度契約することは期間を置いても無理なことが多いでしょうが、TCAの保有期間「5年」を過ぎており、従来の滞納が解消されていれば他のキャリアとは契約できる可能性が高いといえます。
ただし、「回線契約を締結できるかどうか」と「端末を分割購入できるかどうか」はまた別の話です。
回線契約については上記の通り「TCA」のデータでブラックになっているかどうかがポイントになるため、強制解約となっていない滞納については滞納を解消すれば(=データが消えれば)すぐ新たな契約ができる可能性が高くなります。
一方で、「端末の分割購入」については注意が必要です。
端末の価格は決して安いものではないため、多くの人は分割払いで購入することでしょう。
その際に、「CIC」などの信用情報機関への情報提供の同意書にサインをしているはずです。
つまり、クレジットカードで商品を分割購入したのと同じ状態になっているので、もし分割払いの代金を滞納した場合、一定期間過ぎると信用情報機関にその情報が記入されてしまいます(俗に「ブラックリスト」と呼ばれるものです)。
各信用情報機関に記録される情報とその保有期間は次のとおりです。
「ブラックリスト」と聞くとマイナス情報だけが記載されるようなイメージですが、正常入金等も含めたすべての借入返済情報が記載されます。
信用情報機関 |
記録内容 |
期間 |
KSC |
入金の有無、延滞・代位弁済・強制回収手続等 |
契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間 |
官報に公告された破産・民事再生開始決定等(免責決定等の情報は掲載されない) |
当該決定日から10年を超えない期間 |
|
CIC |
報告日、残債務額、請求額、入金額、入金履歴、異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日、終了状況等 |
契約期間中および契約終了後5年以内 |
JICC |
入金日、入金予定日、残高金額、完済日、延滞等 |
契約継続中及び完済日から5年を超えない期間(ただし延滞情報については延滞継続中、延滞解消の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年を超えない期間) |
債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等 |
当該事実の発生日から5年を超えない期間 (ただし、債権譲渡の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年を超えない期間) |
いったんブラック情報が記載された場合、その信用情報機関の規定で情報を保有し続けるとされている期間は新たな端末の分割購入契約はできないことになります。
もし、回線料金滞納は解消したが端末の分割購入の滞納が原因でブラックになってしまった人の場合は「端末を現金一括購入」などの方法で調達しなければならないことになります。
滞納を解消できなければ弁護士に相談する
携帯代を支払えない場合にはどうしたら良いのかな…
継続してそのまま携帯を利用できる可能性もあるから諦めてはいけないよ。
このように、普通の貸金と比べてスマホの代金だから取立てなどが緩いということは決してないため、後回しにすることはできません。
現代の暮らしではスマホは贅沢品ではなく、すでに生活に密着した必需品になっていますので、使えなくなることによる支障はとても大きなものです。
スマホ代金の滞納がどうしても解消できない人は多くの場合、他の会社にも借金を抱えています。
そのような場合はスマホ代金だけではなく債務全体を解決していく必要があります。
滞納が続いて強制解約になる前に対処方法を弁護士に相談し、適切に債務整理すればスマホが使えなくなる状態をどうにか回避することも可能です。
現在使っているスマホについては、他の債務が支払えずに自己破産する場合であっても
- 回線料金の滞納分を解消している
- 端末の分割購入代金の返済は終わっている
の条件を満たしていれば継続して利用することもできます。
督促を放置した結果最悪の事態になってしまった、という状況だけは避けるようにしましょう。
まとめ
強制解約になる前に知ることができて良かったよ!
- スマホの回線利用料についての滞納データは、通常の貸金の信用情報機関とは別に、一般社団法人「電気通信事業者協会」(TCA)という機関により管理されており、格安スマホも含め各キャリアが情報を共有している。
- 格安スマホの料金を滞納すると大手キャリアと同様に「利用停止」や「強制解約」となるが、どのくらいの期間でそのような措置が取られるかは各社で異なる。
- 滞納した料金をそのまま放置すると、たとえ利用停止や強制解約になったとしても支払義務は残り、裁判等でキャリアが勝訴すれば差押えなどされてしまうこともあるため、滞納を解消できる見込がない人は早めに弁護士に相談する方がよい。
西岡容子
青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
■注力分野
債務整理
不動産登記
相続
■ご覧のみなさまへのメッセージ
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債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。
借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
なぜなら大まかにでも知識があれば法律家の話がよく理解できますし、不明な点を手続き開始前に質問することもできます。
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