官報で自己破産者が検索できる?家族や職場にバレるリスクを解説
今回の記事では、官報とは一体何なのか、官報を日頃から閲覧している人はどんな人なのか、詳しく見ていこう。
自己破産することのデメリットについてはネットなどでも色々な噂が飛び交っていますが、それらにはデマも多く、総合的に見ると自己破産のデメリットは世間で考えられているより少ないといえます。
ただ、気にする人が多いデメリットとしては「自己破産すると官報に住所、氏名が掲載されてしまう」ということが挙げられます。
では、この「官報」というのはどんなものなのか、そして掲載されると他人から簡単に検索されてしまのか?などを確認してみましょう。
官報とは
官報とは政府の発行する新聞であり、法令などの情報を公式に伝達する手段となっています。
現在、行政機関の休日を除いて毎日発行されています。
紙の官報はこのようなイメージです。
※独立行政法人国立印刷局 ウェブサイトより画像引用
この中に、「破産手続開始」という欄があり、債務者の住所、氏名、破産手続開始決定の年月日などが記載されます。
破産手続開始についての掲載内容はこのようになります。
「同時廃止」の場合
※同時廃止とは・・破産手続の種類。
債務者に配当できるような財産および免責不許可事由(詐欺的借入等)がないため、破産手続開始決定と同時に破産を廃止(手続きを終わらせる)すること。
通常この後すみやかに免責の手続きに移り、手続き全体が非常に早く終結する。
「管財事件」の場合
※管財事件とは・・・破産手続の種類。
債務者に配当できる財産があったり免責不許可事由(詐欺的借入等)がある場合に破産管財人が選任されて配当や調査などが行われる。
これらが終結すると免責手続きに移るが、全体として手続きが長期化することもある。
管財事件の場合は破産管財人弁護士が選任されるためそちらの名前や、債権者の権利を守るための財産状況報告集会等の情報が入ります。
官報に記載されている内容とは
官報には上記のような破産、個人再生等の情報以外に、法令の公布、裁判所の人事異動、会社の決算報告等が掲載されています。
官報は、国民(個人や会社)がその権利を行使したり義務を履行するという意味でも重要な事項を告知する役割を担っています。
例えば、会社が合併や資本減少等の重大な手続きを行う際に債権者に異議を述べる機会を与えたり、ある人の相続人がわからない場合に被相続人(亡くなった人)の債権者が債権を申し出るといった目的でも公告がされます。
もちろん現実的には、それらの事柄に関係する人たちが官報をちゃんと見ているかは疑問ということにもなるでしょう。
しかし、関係者に正当な権利行使の機会を与えた後に法律関係を確定させるべき事柄については、同時にそれらの手続きを速やかに行いたいと希望する側の権利も守らなくてはなりません。
そのため正式に紙面で知らせた、要するに「やるべきことはやった」ということを形に残すために官報公告という制度が存在しているのです。
官報を入手するには
では、官報情報を知りたい人がこれを入手する方法としてはどのようなものがあるのでしょうか。
紙媒体の官報は全国48箇所に「官報販売所」と呼ばれる、国立印刷局との取次店契約を結んだ書店等が取り扱っているため、そちらで購入することができます。
また、購読は「全国官報販売協同組合」のホームページから申し込むこともできます(定期購読も可能)。
購読は「紙媒体」ですることも、また、「インターネット検索(官報情報検索サービス)」を選択することもできます。
インターネット検索を利用すると昭和22年5月3日から当日分までが閲覧できます。
では、もう少し詳しく見てみましょう。
官報情報検索サービスとは
金融機関など、法人単位で定期購読している場合は紙媒体を利用することも多いでしょうが、個人が官報を閲覧する方法としては官報情報検索サービスを利用するのが便利な方法です。
官報情報検索サービスには2つの検索方法があります。
「日付検索」は、発行された日付を指定して、官報種別(本紙や号外等)単位で検索できます。
また、「記事検索」は、キーワード検索により全文を検索して記事単位で検索できます。
官報情報検索サービスは、まず「全国官報販売協同組合」のホームページから入力フォームを記入し送信する等の一連の手続き(ホームページ参照)を行った後で、IDとパスワードが発行されます。
料金は次のとおりです。
冊子官報購読者割引料金 |
冊子官報購読者以外の料金 |
|
日付検索のみ |
無料 |
1,672円 |
日付検索+記事検索 |
528円 |
2,200円 |
官報を利用する人とは
その他にも、闇金業者がダイレクトメールを送るために、官報の情報を閲覧しているんだ。
官報は、そもそもその存在を知らない国民も多く、広く購読されているとは言えません。
役所関係などで定期購読していることもありますが、単に「置いてある」だけで職員が毎回中身をじっくり見ていることも少ないでしょう。
ただ、官報の内容により利害関係が生じてくる業種では「見ている可能性がある」と考えられます。
自己破産により資格制限を受ける業種
自己破産によるデメリットは一般に考えられているより少ないのですが、その中の一つとして「破産者には一定期間職業制限がかかる」ということがあります。
職業制限の対象としては、もっぱら他人のお金を取扱う職種となり、「士業」「警備員」「生命保険募集人」などです。
その他もかなり多くの職種が職業制限の対象となっています。
ただ、職業制限の期間は「破産手続開始決定~復権(免責許可決定の確定など)まで」となっているため、上に挙げた「同時廃止」の事例なら1カ月程度で済む人もいます。
金融業者や警備会社
金融業者や証券会社など「貸金業取扱主任者」「投資顧問業」など制限の対象となる職種を抱える会社はやはり官報をチェックしていることがあるようです。
警備会社は警備員採用にあたり、破産していないことを示す下記のような「身分証明書(市区町村役場で発行するもの)」を提出させ、欠格者ではないことを証明させています。
身分証明書
本籍 東京都〇〇市・・・・
本人氏名 山田 太郎
生年月日 昭和〇年〇月〇日
1.禁治産又は準禁治産の宣告の通知を受けていない
1.後見の登記の通知を受けていない
1.破産宣告又は破産手続開始決定の通知を受けていない
上記のとおり証明する。
令和〇年〇月〇日
〇〇市長 〇〇〇〇
闇金業者
官報の破産者情報を貴重な情報源とするのが「闇金業者」です。
破産者は破産することにより最大約10年間は「ブラックリスト(信用情報機関の事故情報掲載)」により通常の貸金業者や銀行等から借り入れができない状態になります。
そこで、闇金業者は他から借りられない破産者をカモにして、集中的に貸し付けを行うのです。
闇金はそもそも正式な貸金業登録をしていない業者ですので、当然利息や損害金等も法を守っていないですし、平気で手荒な取立てをしてきます。
彼らは元から完済できるような利息の設定をしていない(年利1,000%など)ため、返しても返しても完済になることはまずありません。
無理な利息で借りさせ、徹底的に追い込んで債務者から絞り取れるところまで絞り取るのが特徴です。
官報に掲載された人は特にこのような業者からのDMなどに注意しなくてはなりません。
万一借りてしまった場合でも違法な闇金業者には「元金すらも」返済する義務はないことを覚えておきましょう。
官報掲載により、家族や職場に自己破産がバレてしまうのか
では、官報に掲載されたことにより、業者のような専門家以外の身近な人たちへの影響はどうなるのでしょうか。
バレる可能性は極めて低い
一般家庭の人が官報を見ている可能性は極めて低いといえます。
仮にたまたま他の目的で買うことがあったにしても、破産者の情報はかなりたくさんの数が掲載されているため、隅から隅までチェックする可能性と考えるとさらに低くなります。
ただ、官報掲載のこととは関係なく「同居家族」については自己破産する場合には内緒にすることができないという点に注意が必要です。
同居で生計をひとつにしている家族というのは、借金についてもいわば「運命共同体」と考えられています。
よって、元々破産手続きを行う段階で配偶者や家計にお金を入れている子供などの収入に関する資料(通帳コピー、源泉徴収票、給与明細等)も提出しなくてはならないのです。
もし借金があることを家族に内緒にしている人は最初にしっかり話し合いをして手続きへの協力をお願いすることが不可欠となります。
家族がこのような手続きに恐怖心を抱きやすいタイプだったり、自分では言いづらい、うまく説明できないという人は、まず弁護士のところに相談に行き、弁護士から家族に手続きの詳細を話してもらうのもひとつの方法です。
一方で別居の家族、親戚、近所、友人知人といった関係であればほとんど知られるリスクはありません。
親族等であれば、万一今後連帯保証人を頼まれたような場面で信用力の問題から受けることができなくなるので、何らかの金融事故があったことを疑われる可能性はあるかも知れません。
ただ、「保証人にはならない主義だから」という理由をつけるなどして断ることはできますし、実際にそういった人も多いため、絶対にバレるとも言い切れません。
職業制限がかかる場合には要注意
上で警備会社の例を挙げましたが、制限にかかる職種に就職や転職をしようとする場合、会社側が破産者ではないかをチェックするという例はあります。
自己破産手続中に就職活動をする場合は、一応、職種が制限にかかるものであれば「復権(免責の確定など)」まで応募を待つ方が良いでしょう。
まとめ
自己破産をする時には、家族へは必ず事前に相談した上で手続きを進めるようにしよう。
- 官報とは政府が発行する新聞であり、破産者に関する情報はここに載せられる。
閲覧するには官報販売所で紙媒体を購入する他、所定の料金を払ってインターネットで検索することもできる。 - 官報を見ている人はごく限られた職種ということになるが、職業制限にかかる職種に就こうとしている人は採用されない可能性があること、また、官報に掲載されると闇金業者のターゲットになりやすいことに気をつけなければならない。
- 官報掲載により周囲の人に自己破産がバレる可能性は非常に低いが、同居家族であればそもそも自己破産手続きを内緒ですることはできない点に注意が必要である。
西岡容子
青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
■注力分野
債務整理
不動産登記
相続
■ご覧のみなさまへのメッセージ
通常、お金のプロである債権者と、一般人である債務者の知識レベルの差は歴然としており、「知らない」ことが圧倒的に不利な結果を招くこともあります。
債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。
借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
なぜなら大まかにでも知識があれば法律家の話がよく理解できますし、不明な点を手続き開始前に質問することもできます。
法律家に「言われるがまま」ではなく、自分の意思で、納得して手続きに入るためにも当サイトで正しい知識をつけていただけたら幸いです。
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