債務整理の森

債務整理を依頼する際の弁護士の選び方と、それぞれの弁護士の口コミや評判を検証し解説します。

自己破産による職業制限

 

クマ
自己破産の手続きをする事で、就けなくなる職業があるって本当?

ミミズク
お金に関わる職業である場合、自己破産が原因となって、就けなくなってしまう職業があるんだよ!

クマ
じゃあ、すでにその職業に就いている場合に自己破産をしたらどうなるの?

ミミズク
よし!それじゃあ今回は、自己破産により就けなくなってしまう職業や、仕事を継続できるのかを詳しく説明するよ!

自己破産を選択するにあたって「現在の仕事を続けられるのか?」ということは大きな問題です。

では「自己破産」と「職業」の関係や、自己破産によりできなくなる職種について考えてみましょう。

債務整理すると会社を辞めなくてはならないのか?

時々、「自己破産(またはその他の債務整理)すると今の会社をクビになってしまうのでは?」という不安を持っている人がいます。

しかし、債務整理と会社の解雇は通常連動しておらず、債務整理と同時に会社を辞めてしまった人というのは「債務整理のことが社内の人にばれて居づらくなってしまった」などで自分から退職を選んでしまったという経緯であることも多いと思われます。

就業規則の中に「自己破産した者は懲戒解雇」と明記されている会社もあります。

もちろん、会社側の立場に立てば、やはり金銭管理に失敗した人をそのまま雇用し続けるのは抵抗があるということもあるでしょう。

顧客から現金を預かるようなことがある業務であれば横領の心配などもありますのでなおさらのことです。

ただ、このような規則がある会社であっても自己破産が発覚したら即、従業員をクビにすることはできないのです。そのようなことをすれば(下記の「自己破産により就けなくなる職種」を除いては)「解雇権の濫用」にあたります。

会社が従業員を解雇する場合は「合理的な理由」が必要であり、それがないのに解雇すれば解雇自体が無効となります。

労働契約法第16条では次のように規定されています。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

自己破産を含めた債務整理がこの「合理的理由」に該当しないというのは、法律や労働の専門家の間ではほぼ常識になっているでしょう。

つまり、いくら就業規則に上記のような規定があったとしても、もしそれを理由に解雇された場合、「解雇無効」として争うことも可能ということです。

(ただ、その状況までいってしまったら既に会社との関係はかなり悪化しているといえるので転職を考えた方が合理的なこともありますから、何としてでも会社に残るべきかどうかはケースバイケースといえるでしょう。)

債務整理をした後、生活を健全な状態に戻すためにも仕事を続けることは非常に大切です。

給与がアップするなどの前向きな転職でない限り、業制限にかかる職種以外の人は「辞める必要はない」ということを認識した上でしっかり働き続けて定収を確保したいものです。

クマ
自己破産をしたからといって、すぐに仕事を辞めなければいけないわけではないんだね。自己破産による職業制限はいつまでとなるの?

ミミズク
どんな職業であると、自己破産に関係があるのか、その時期についても詳しくチェックしてみよう!

自己破産者が制限される職業

どんな職業・職種が制限されるのか

そして、問題となるのは「自己破産に伴って制限される職業」です。

たとえばいわゆる「士業」と呼ばれる弁護士、司法書士、税理士などは「欠格事由(その事由が存在することで当該職業に就けないもの)」に該当することになります。

また、「保険外交員」や「証券外務員」など、他人のお金を預かることが日常的である職種は破産手続開始決定によって業務が制限されることがあります。

制限がかかる職種は特殊なものも含めるとかなり膨大な種類がありますが、主な職種を確認してみましょう。

  • 「貸金業者・貸金業務取扱主任者」
  • 「外国証券業者の役員」
  • 「行政書士」
  • 「警備業者、警備員」
  • 「一般建設業・特定建設業」
  • 「公証人」
  • 「公認会計士・公認会計士補」
  • 「公庫(中小企業金融公庫等)役員」
  • 「司法修習生」
  • 「司法書士」
  • 「(信託法における)受託者」
  • 「質屋」
  • 「信用金庫の会員・理事・監事・支配人」
  • 「社会保険労務士」
  • 「証券業・証券仲介業者及びその役員」
  • 「税理士」
  • 「測量業者」
  • 「宅地建物取引士」
  • 「教育委員会委員」
  • 公安委員会」
  • 「通関業・通関士」
  • 「土地家屋調査士」
  • 「外国法事務弁護士」
  • 「一般廃棄物処理業者・産業廃棄物処理業者」
  • 「風俗営業者・風俗営業の営業所管理者」
  • 「不動産鑑定士・不動産鑑定士補・不動産鑑定業者」
  • 「弁護士」
  • 「弁理士」
  • 「生命保険募集人・損害保険代理店」
  • 「後見人・後見監督人」
  • 「遺言執行者」
  • 「投資顧問業」
  • 「旅行業者・旅行業者代理業者」
  • 「旅行業務取扱主任者・旅行業務取扱管理者
  • 「一般労働者派遣事業者・特定労働者派遣事業者」
  • 「中小企業診断士」
  • 「管理業務主任者」

ひとつ、注意しておきたいのが「会社の取締役」です。

昔の商法では「自己破産し、復権していない者は取締役の欠格事由にあたる」とされていました。
しかし、現在ではこの規定は廃止されています。

ただし、取締役というのは、会社から委任されてその業務を行う地位にあるため、取締役が自己破産すれば「委任契約の終了事由に該当する(民法653条2号)」ため、いったんはその地位を失います(もし受任者の破産によって委任契約が終了しないという特約があればそれは有効)。

しかし、上記の欠格事由がなくなったため、復権を得ていない者であっても再び取締役に選ばれた場合は即、就任することが可能です。

制限される期間

では、具体的にいつからいつまで職業制限にかかるのでしょうか。

実のところ、一般的に考えられているほど長期間制限されるわけではありません。

いったん破産した人はずっと「破産者」なのでは?と思ってしまう人もいるでしょうが、法律的な意味で「破産者」と呼ぶ場合、それには始まりと終わりがあります

職業制限は法律的な意味での「破産者」対して課せられるものですので、破産者でなくなれば職業制限は解除されるのです。

具体的に「破産者」と呼ばれる(=職業制限がかかる)始期と終期は次のようになります。

  • 職業制限が開始する時期は「破産手続開始決定」の時
  • 職業制限がなくなる時期は「復権」の時

破産手続開始決定

「破産手続開始決定」とは、どのタイミングで出されるのでしょうか?

申立人は「破産・免責申立書」や「添付書類」を準備し、裁判所に書類を出しますが、その後裁判所がひととおり書類をチェックして破産手続を開始するべきか判断した上で出します

単純な事案であれば早くて1週間程度で出されることもありますが、裁判所の案件が多い時期や事案が複雑な場合は1カ月近くかかることもあり、ケース毎に異なります。

復権

破産者は「復権」をもって破産者でなくなりますが、いつ「復権」するのかという話の前提として、復権とはどのような状態を指すのかを確認してみましょう。

復権には「当然復権」「裁判による復権」の二種類があります。

  • 当然復権

当然復権」にはいくつかの法的事由がありますが、中でも代表的なのが「免責許可決定の確定」です。

自然人が破産した場合、単に破産手続きをしただけでは債務をチャラにすることはできず、免責の手続きを経て初めて借金から逃れることができます

免責決定がおりた場合はその許可決定の確定をもって「復権」とされます。

復権までの期間も、破産手続きが「同時廃止」「管財事件」のどちらに振り分けられるかでかなり違ってきます

同時廃止は申立てから2、3カ月程度で復権までいくことが多いのですが、管財事件の場合は半年、もしくは不動産の売却などがあれば1年といった長期間かかることもあります。

※同時廃止と管財事件については「自己破産とは?メリットデメリットとその後の生活」に詳しく解説していますのでこちらを参照してください。

  • 裁判による復権

では「裁判による復権」とはどのようなものでしょうか?

自己破産では、「免責が不許可になる(=最終的に借金をチャラにすることができない)」という事案がごくレアケースではあるものの存在します

それは、「免責不許可事由」と呼ばれる状況が存在する場合であり、その中でもさらに悪質で免責することが許されないと裁判所が判断した事案が最終的に「免責不許可」となるのです。

時々誤解されているのですが、「免責不許可事由が存在する=必ず免責不許可」というわけではありません。
たとえ免責不許可事由があったとしてもほとんどの場合、破産管財人の意見等を受けて裁判所は「裁量免責」という措置を取るため、免責される事案の方が圧倒的に多いのです。

※免責不許可事由について詳しくは「自己破産が認められない免責不許可の場合とその対策に詳しく解説していますのでこちらを参照してください。

では、実際に免責が認められなかった場合を考えてみましょう。

そのようなケースでは復権のタイミングがないため、そのままにすればずっと破産者のまま=職業制限が続くことになってしまいます

よって、もし免責を受けられなかった破産者がその後、破産債権者に対して残債務全部を弁済するなどしてその責任を免れるようなことがあれば(現実には難しいでしょうが)、破産者の申し立てにより復権を認めることとしています。

※なお、「復権」といわゆる「信用情報機関のマイナス情報(ブラックリスト)が消えること」は別物です。
復権したからといって融資やクレジットカードの審査に通るようになるわけではないことに注意しましょう。

クマ
自己破産後、すぐに対応を迫られてしまうような職業もあるの?

ミミズク
弁護士や、保険外交員などは、自己破産の手続きを行う事で、就業継続が難しいと言われているよ。

制限される職業の場合はどうなるのか?

たとえば、士業、貸金業務取扱主任者などの資格業は欠格事由に該当するといったん仕業登録や、主任者登録を抹消しなくてはなりません

ただ、合格したこと自体が帳消しになるわけではないため、復権してからまた再登録する形になります。

ですが、全ての資格が自己破産により、登録抹消となるわけではありません
建築士や理学療法士や作業療法士などは、自己破産に関係ありませんから、登録抹消は必要ありません。受験資格や、受験の合否も、申請者が自己破産をしていても関係ありません。

ただ、事実上、資格業のように「物」ではなく「信用」を売るタイプの仕事であれば、休業の理由が顧客に知れてしまうと、登録申請者が復権、再登録したからといってすぐ前の状態に戻るのは難しいことも多いでしょう。

保険外交員の場合も深刻な状況になることがあります。

生命保険会社の保険外交員は、「生命保険募集人」の登録をしなければ仕事をすることができないことになっていますが、保険業法280条に定められている「当然に登録が失効する場合」の中に破産手続開始決定は含まれていません。

よって、破産したからといって絶対に仕事をすることが不可能なわけではありません

しかし新たに登録しようとしている場合は同法289条1項1号により「破産者で復権していない者は登録を拒否しなければならない」とされているため、業務ができないこととなります。

そして、こちらは各保険会社単位での話ですが、おそらくすべての保険会社で「破産手続の開始」を解雇事由としています。
保険会社の場合、破産によって掲載される「官報の公告」もしっかりチェックされていることが多く、破産手続開始と同時に解雇されてしまうこともあります。

上に「自己破産を理由とする解雇は労働契約法16条により解雇権の濫用にあたる」と解説しましたが、保険会社の場合、職業制限にかかる性質の仕事である「生命保険募集人」を前提として雇用しているため、自己破産を理由に解雇しても解雇権の濫用にはならないのです。

クマ
自己破産をしたことを隠すことはできないのかな?何か対策はないの?

ミミズク
勤めている職業によって、対応が変わってくるんだ。配慮してくれる会社もあるから、すぐに退職をする必要はない事が多いんだよ。

制限される職業に就いている場合の対策

もし、これから自己破産しようとしている人が職業制限にかかる場合、どのように対策すればよいのでしょうか。

いくつかの選択肢が考えられます。

  • 個人再生手続きに切り替えることを検討する。
  • 独立開業しているような資格業の場合、事実上そのまま業務を続けることもできると思われるが、万一バレた場合は所属会からの懲戒を受ける危険が大きく、信用商売である以上それは決してすすめられない
  • 保険外交員の場合、解雇のリスクを承知した上で、会社に内緒で破産手続きと同時に外交員の仕事を続ける(ただ、多くの場合は官報公告により会社にバレるので転職を考える方が合理的なこともある)。
  • 雇用されている者については、会社に事情を話して理解を求め、復権を得るまで職業制限と関係ない部署等に配属してもらうか休職扱いとしてもらう

債務者の職業がどのような職種か、どの程度の規模の会社なのか、そして個人再生に切り替えられる余地があるのかなど、債務者ごとの事情によってできる対策は異なります

中には「どうしても個人再生します!」など頑なになっている債務者もいるのですが、やはりそこはプロである弁護士(司法書士)の意見を聞いた上で慎重に考えていかなくてはなりません

クマ
自己破産をする場合には、現在の職業も考慮しなければいけないんだね。

ミミズク
弁護士や、社会福祉士に相談して債務整理を取り入れる事で、自己破産のデメリットだけではなく、今後の生活についても相談に乗ってもらう事ができるよ。自己破産による失敗を防ぐためには、信頼できる弁護士を探すようにしよう!

自己破産の職業制限、まとめ

  • 通常の仕事では、自己破産を理由とした解雇は「解雇権の濫用」にあたり、就業規則に規定があっても解雇無効を争うことができる
  • 職業制限にかかる期間は破産手続開始決定から復権までの間である。
  • 制限がかかる職業の場合、「自己破産を回避し、個人再生等を検討する」「(おすすめできる対策とは言えないものの)そのまま黙って仕事を続ける」「会社に説明して部署替えや休職等の配慮をしてもらう」などの対策が考えられる。

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