債務整理の森

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支払督促とは?きたらどうする?流れや対応策を専門家が解説

 

ウサギ

なんだかいつもと違う督促状が、裁判所から届いたんだ。

支払督促って書いてあるんだけど、通常の督促状とどう違うの?

シカ

裁判所から届いた支払督促は、すぐに給料や財産の差し押さえとなってしまう事が多いから、注意が必要だよ。

ウサギ

裁判所から支払い督促が届いたらどうしたら良いの

シカ

よし!

では早速、裁判所から届く支払い督促とはどのような物なのか、届いた場合には、どのように対応すれば良いのか、詳しく見てみよう。

支払督促という言葉からは「債権者から督促状が来ることだろう」という連想はできるでしょう。

しかし、裁判所から送られてくる「支払督促」は単なる催促の手紙という程度の意味ではなく、非常に効力の大きいものであり、対応を間違えると大変な事態になります。

では、法的手続の用語としての「支払督促」とはどのようなもので、これを受け取ってしまった場合の正しい対応策はどのようなものかを考えてみましょう。

支払督促とは何?


支払督促とはどのようなものか

支払督促をかみ砕いて定義すると、

「金銭や有価証券(株式など)のように同量・同質のものであれば代えが利くような物を給付させる性質の請求において、債権者の申立てにより、その内容を詳しく審査することなしに裁判所書記官が『支払督促』という命令を債務者に出して支払いを促す手続き」

ということになります。

本来「お金を返せ」「いや、返さない」という争いになった場合は「民事訴訟」の手続きを経るのが適切ということになりますが、民事訴訟をしようと思うと期日を設けて滞納者を呼び出し、証拠を調べたり弁論させたり、時間や費用がかかります。

債務者が争ってこないだろうと見込まれる事案では、このような手間暇かかる訴訟手続きをするよりも「四の五の言わずにとにかく支払え」という支払督促の方が当事者にも裁判所にも手っ取り早いことになります。

とはいえ、もちろんすべての事案で債権者が正しいとは限らないわけですから、債務者に反論の機会が準備されており、ここで反論すれば普通の訴訟に移行していきます。

そのような意味で支払督促は債権者から見れば非常にスピーディで簡易な手続きということになるのですが、債務者はその分準備の時間がないわけです。

来てしまった支払督促に対し、何も言わずに放置すれば相手の言ったままの請求内容を認めたことになりますし、異議申し立てを言えば訴訟になって戦う余地が出てくることになります。

ただ、下で説明しますが、考えなしにむやみに異議を述べたところで結局訴訟で戦える材料がなければ意味がないのであり、異議を述べるのであれば専門家の手を借りながら戦略的に動かなければならないのです。

いわゆる「督促状」との区別

債権者が私的に発する「督促状」と、上記の手続きで裁判所が発する「支払督促」はその性質をまったく異にするものです。


私的な督促状であれば、仮にそのまま放置しても訴訟提起→判決→判決確定というプロセスを経なくてはならないため、「すぐ差押え」とはならないでしょう。

しかし、支払督促は、スケジュールが機械的に決まっており、もし債務者が裁判所からの支払督促を無視しているとその後債権者の申立てによって「仮執行宣言」というものが付加されます。

この「仮執行宣言付支払督促」があると、申立人即、差押えに移ることができますので通常の訴訟よりずっと流れがスピーディということになります。

支払督促の流れ

では、さらに具体的に「支払督促が行われる際の流れ」を見てみましょう。

これらの各プロセスについて詳しく解説します。

①支払督促の申立て

これは基本的な話なのですが、訴訟や裁判所に申し立てる手続関係はどこの裁判所にしてもよいのではなく、申し立てられる先の裁判所の管轄地が法によって定められています(裁判籍)。

「貸金の請求を目的とした支払督促」を「個人の債務者」に行う場合であれば債務者の住所、もしくは居所、それらがわからなければ最後の住所」 となるので、多くの場合は債務者の住所地の簡易裁判所に対して申立てが行われます。(実際に裁判になった場合、「どこの裁判所で行うか?」ということは裁判費用等を大きく左右するポイントです。)

申立ての際には、債権者は次のことを明らかにします。

  • 当事者の表示
  • 請求の趣旨(具体的な請求金額)、原因(その請求が発生する根拠となる契約)

現在はオンラインでの支払督促手続きもできるようになっています。

②支払督促の発付、③支払督促の送達

債権者が支払督促を申し立てると、「債権者の申立てが適法である」「申立書の記載により請求の理由があると認められる」ことを確認した上で、裁判所書記官は債務者に支払督促正本を送達します。


この書面の別紙として、当事者の表示や請求金額、その原因となる契約などが記載された書面がついてきます。

上記のように、支払督促は「特別送達」という方式で行われます。

特別送達は、支払督促の他にも、少額訴訟の場合にも利用されます。

これは、一般の郵便物とは異なり、送達の事実が差出人に伝えられる特殊な形式です。

当事者を呼び出すわけでもなく、あくまでも書類上だけで裁判所書記官が判断するので、この時点で申立ての背後にある事情(両者の主張する金額の食い違い、時効が成立しているなど)は考慮されません。

支払督促が認められない(却下処分がされる)場合とは、形式的に見て明らかに要件を満たしていない(印紙が貼られていない、請求が現在ではなく将来のものである、賭博など不法な原因に基づく請求であるなど)時なので、逆にそれさえクリアすれば債権者の言い分が通ってしまうことになります。

債務者の立場から見れば「自分の言い分は聞いてもらえないまま、支払えという文書が一方的に送られてくる」ということもあるため、次の「督促異議」がとても重要になります。

督促異議申立て

「督促異議」というのは、半ば一方的に出された支払督促に対して債務者が「いや、こんな契約をした覚えはありません」とか、「支払う約束はしたが、今は払えないので話し合って分割払いにしたい」などという言い分がある時に異議申立書を出しておくべきものです。

督促異議は、支払督促の送達を受けた日の翌日から2週間以内に行わなければなりません(必着)。

督促異議申し立て書を提出した後は、答弁書の作成を行う事になり、通常訴訟に移行します。

ここで、通常の債権者からの督促状と同じように放置してしまうと、いよいよ次は強制執行が可能になる「仮執行宣言の申立て」がされることになるので、差押の危機が間近に迫ってきてしまうことになります。

もし、適切な時期に督促異議が出されたら「通常の訴訟」に移行し、そちらで弁論などをした上で判決や和解といった手続きを踏むことになります。

④仮執行宣言申立て、⑤仮執行宣言の発付、⑥仮執行宣言付支払督促正本の送達

支払督促を出したものの債務者から督促異議が出されなかった場合、債権者は支払督促に「仮執行宣言」をつけてもらうよう申立てをすることができます。

この「仮執行宣言」というのは、専門的に言うと「支払督促に執行力を付与する裁判」ということになりますが、もう少し簡単に言えば、「支払督促を、ただちに強制執行(差押等)ができる形にする手続き」ということです。

ちなみに、債権者が仮執行宣言の申立てをできる期間は「債務者への支払督促送達後2週間を経過したとき(つまり督促異議の期間が終わった時)から30日以内」となっています。

仮執行宣言付支払督促とは、上記の支払督促に次のような文言がついているものです。

この仮執行宣言がつけられると裁判所書記官は、債権者、債務者双方にこれを送達します。

ここからは非常にスピーディに強制執行の手続きが進んでしまうため、もう時間的猶予はありません。

⑦確定により⑧強制執行の申立てへ

仮執行宣言付支払督促の送達翌日から2週間以内に督促異議が申し立てられなければこれが確定し、いよいよ債務者の財産を差押える(強制執行)ことができる状態になります。

支払督促が来ると財産を差押えられる?

このように「仮執行宣言」をつけることによって、最初に出された支払督促が「執行力」を持つものになります(=すぐに差押さえできる状態になります)。

差押えの対象にできるのは「不動産」「動産」「給与」「預貯金」などになります。

支払督促までされてしまった人が不動産や高額の動産を持っているということはどちらかといえばレアケースなので、一般的には給与差押えや預貯金の差押えが多くなるでしょう。

特に給与の場合、下記のような構図になりますので、必然的に職場に知られてしまうことになる点に注意が必要です。

借金があることや、債務整理をすることなどは決して解雇の理由にはならないので「職場にバレたらクビになるのでは?」という心配をする必要はありませんが「精神的な意味で実質的に職場に居づらくなる」という状況は十分考えられます。

そのような意味でも、分割などで支払える状況にある人はできるだけ仮執行宣言を付けられる前に対応し、返済の目処を立てておくべきでしょう。

また、預貯金の差押えがされてしまった場合、現在口座にある分のみが差し押さえられるのであり、次に入金されてくる分までまとめて差し押さえられるわけではありません。

そして、口座自体がその後使用できなくなるわけでもありません。

しかし、入金された後のタイミングで二度目の差押えの手続きがされればその分もおろせなくなってしまいますので、借金の問題が解決するまでは差押え対象となった口座の使用を控える方がよいでしょう。

支払督促が来たらするべきこと

ウサギ

裁判所から支払督促が届いてしまったら、まずは何をすれば良いの

シカ

その督促状が、本物かどうかを見分け、本物である場合には、すぐに弁護士事務所に相談に行こう。

では、いざ自分のところに「支払督促」が来てしまった場合、注意するべきことや対応するべきことを確認しておきましょう。

「架空請求」「詐欺」との区別をつける

世の中にはメールによる「支払督促」や文書による「最終通告書」など、正式な裁判所からの文書ではない「悪徳業者による騙し」が横行しています。

もちろん、それに対する警戒が必要なのは言うまでもありませんが、なんでもかんでも「詐欺」と判断して無視してしまうと取返しのつかないことになります。

では、その見分け方を知っておきましょう。

  • 裁判所から、「特別送達」として来ていれば本物
  • 普通郵便やメール、ハガキで来ていたら詐欺の可能性が高い(ただし、本当に自分の借金の請求であることも考えられる)。

特に、消費者金融などの貸金業者から、サービサー(債権回収会社)に「債権譲渡」がされているケースもあり、そのような場合は聞き覚えがない会社からの手紙であることも多いため紛らわしいものです。

借金自体には身に覚えがあるというのであれば、その手紙の連絡先に電話などをする前に弁護士(司法書士)のところに手紙を持参して相談するべきです。

(先に手紙の連絡先に連絡してしまうと、「良いカモ」とみなされ同様のことが繰り返される危険がある

まず、異議を出すこと

上記の流れ図で確認したように、いったん送達された支払督促に対し、債務者が反応しなければ相手の言ったとおりの内容で仮執行宣言が付けられそのまま強制執行に至るおそれがあります。

よって、最初に支払督促が届いた段階で「すぐに」対応の方法を検討し始めなければならないことだけは間違いありません。

ただ、むやみに異議を出してもいざ裁判になったら戦えませんから、どのような手段で反論するのかを考えておかなくてはなりません。

督促異議を出すことができる期限は、支払督促を受け取った翌日から2週間ですので、とにかく時間がないことだけは確かです。

よって、「支払督促が届いたら、即、弁護士(司法書士)のところに持っていく」という対応が大切になってきます。

反論手段がないかどうかを検討

支払督促に対して、債務者が何かを反論する場合、さまざまなパターンがあります。

  • 契約そのものに覚えがない。
  • 支払督促に記載されていた「支払い済み金額」より、自分はもっと支払っているはずだ。
  • 請求の内容そのものは認めるが一括では厳しいので分割にしたい、または減額してほしい。
  • すでに時効が成立している。
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これらをむやみに主張しても、裁判になればやはりその主張を立証(証明)する必要が出てくることもあります(立証責任が債権者、債務者どちらにあるかは主張する内容によります)。

よって、自分はこのように反論したい、その主張が可能なのだろうかということも含めて事前によく弁護士(司法書士)と協議するべきでしょう。

内容が事実なら債務整理すべきことも

支払督促の内容が事実であり、反論はないが分割にしても支払える見込みがない、減額してもらえそうにもないという場合は「債務整理」を早期に検討しましょう。

特に、支払督促を出した金融業者以外にも借金がある場合はそのまま放置すれば他の業者も同じような事態になる可能性があるので、急ぐ必要があります。

支払督促は債権者から見たら「通常の裁判より使い勝手がよい」手続きですが、債務者から見たら時間的猶予がないという意味で「警戒すべき手続き」なのです。

とにかく早期に弁護士(司法書士)へ相談するべきであることを覚えておきたいものです。

支払督促がきたらどうする?対応策、まとめ

ウサギ

支払督促が届いたら、迅速に対応しなければいけないんだね!

シカ

裁判所から支払督促が届いてしまうような事態に陥ってしまう事がないようにすることが何よりも大切だけれど、万が一届いてしまった場合には、弁護士に相談し、弁護士回答を得ることが大切だよ。

  • 支払督促とは、裁判よりも簡易な手続きでスピーディに強制執行まですることができる手続きである。
  • 「一般の督促状」と「裁判所の支払督促」は、特別送達かどうか、裁判所から送られてきているかどうかで区別できる。
  • 支払督促に異議を述べずに仮執行宣言が付されるところまでいくと、強制執行により財産を差押えられる可能性がある。
  • もし、身に覚えがない、分割払いにしたい、時効が成立しているはずだなどの反論があれば必ず「督促異議」を出しておく。その際は反論方法を弁護士(司法書士)にあらかじめ相談しておく方がよい。
  • 支払督促の内容が事実だがどうしても支払えないのであれば、早期に債務整理を検討するべきである。
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西岡容子

青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。

平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。

「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。

債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。

■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年   青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格 
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設

■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087

■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属

■注力分野
債務整理
不動産登記
相続

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