債権譲渡通知書とは?債権回収業者から書類が届いた時の対応方法について
債権譲渡通知書が届いたんだけれど、すぐに支払いをした方が良いよね?!
ちょっと待って! 支払いをする前に、その債権譲渡通知書が本物かどうかを確認する必要があるよ!
えっ?! 債権譲渡通知書には偽物があるの?!
そうなんだ。 債権譲渡通知書を送りつけてくる詐欺グループもいるから、まずは債権譲渡通知書が本物かどうかを調べてみよう。 今回の記事では、債権譲渡通知書の見極め方について、詳しく説明するね!
- 借金を払わないで放置していていたら「債権譲渡通知書」が届いた
- 債権回収会社とは?詐欺ではないのか?
- 債権譲渡が本物かどうか確認する方法はある?
消費者金融やカード会社などからの借金を長期にわたって滞納していると取引先から「債権譲渡通知書」が届いて債権者が変更される可能性があります。
今回は、「債権譲渡」とは何なのか、債権譲渡通知書が本物かどうか見分ける方法について、解説していきます。
債権譲渡通知書とは
債権譲渡通知書は、債務者に債権譲渡を知らせる書類
債権譲渡通知書とは一体どのようなものなのでしょうか?
これは「債権譲渡」が行われたことを証明するための書類です。
債権譲渡とは、「債権」を別の人に譲ることです。
無償で譲るケースも有償で譲るケースもありますが、一般には有償で譲渡されるケースが多いです。
ただ債権譲渡が行われても、債務者がそのことを知らなければ、誰に支払って良いかわからない状態となってしまいます。
権利のない人に支払いをしても債務は消滅しないので、債務者が「支払い損」になってしまう危険も発生します。
そこで債権譲渡が行われたら、必ず債務者に「債権譲渡通知」を行い、債権譲渡の事実と新たな債権者を連絡しなければなりません。
法律上、有効な債権譲渡通知が行われない限り、債務者に対して債権譲渡の事実を主張することはできず、新たな債権者は債務の取り立てをすることができません。
そして、債務者に債権譲渡を知らせるための書類が「債権譲渡通知書」です。
債権譲渡の成立と対抗要件について
債権を譲渡するには決まりみたいな物はあるの?
よし!成立要件や対抗要件について、詳しく見てみよう。
債権譲渡については「成立」と「対抗要件」を分けて考える必要があります。
「成立」とは、有効に債権譲渡が行われることです。
一方「対抗要件」とは、債権譲渡を債務者や第三者に主張するための要件です。
以下でそれぞれについてみていきます。
債権譲渡の成立要件
債権譲渡は、もともとの債権者(譲渡人)と新しい債権者(譲受人)との間の契約によって成立します。
この契約を「債権譲渡契約」と言います。
債権譲渡契約の方法については、特に法律上定められたルールがありません。
口頭などでも成立します。
ただし実際にはトラブルを避けるために「債権譲渡契約書」という契約書を作成するのが一般的です。
債権譲渡契約は、譲渡人と譲受人との2者間の契約なので、債務者が承諾したり契約書にサインしたりしなくても有効です。
債権譲渡の対抗要件
ただし有効な債権譲渡契約を行って債権譲渡が成立しても、対抗要件を満たさない限り、新たな債権者は債務者に支払い請求することができません。
債権譲渡の対抗要件を備える方法は、法律によって厳格に定められています。
債務者による承諾
1つは、債務者本人が債権譲渡を承諾することです。
債務者が、債権の譲受人を真実の権利者と認めて債務の支払いをすれば、その支払いは有効です。
ただし新たな債権者が実際には債権譲渡を受けておらず、勝手に債権譲渡を受けたと主張しているだけの無権利者だった場合、支払いをしても基本的に債務は消滅しません。
債務者は、もともとの債権の所有者からあらためて支払い請求されたときに拒むことができず二重払いになってしまうおそれがあります。
譲渡人からの確定日付のある通知
もう1つは「譲渡人からの確定日付ある通知」です。
つまり、もともとの債権者から「確定日付」の入った方法で債務者に通知書を送れば、その後は債権の譲受人が債務者に権利を主張できるようになります。
ここで重要なポイントは「譲渡人からの通知」という点と「確定日付のある通知」という点です。
譲渡人からの通知
まず債権譲渡通知は、債権の「譲渡人」から行われる必要があります。
債権の譲渡人は、債権譲渡によって権利を失う人です。
また債務者と直接貸金契約などを締結していたはずですから、債務者としてもよく知っている相手です。
そのような、権利を失うべき立場の人が自ら「債権譲渡を行いました」と通知連絡したのであれば信用性が高いですし、そのような通知をしながらも後に「やっぱり間違いでした」と言って再度請求することは認められないので二重払いの危険を避けられます。
そこで債権譲渡通知書が届いたら、「もともとの債権者名義」で送られてきたものかどうかをチェックしましょう。
もしも聞いたことのない債権回収会社の名義などで送られてきていたら、怪しいと考えた方が良いです。
もともとの債権者に状況を問合せましょう。
確定日付のある通知
次に「確定日付」のある通知で債権譲渡通知が行われる必要があります。
確定日付とは、「いつ債権譲渡を行ったか」という日付です。
ただし債権者が勝手に日付を書けばよいというものではなく、郵便局や公証役場できっちり確定した日付を入れてもらう必要があります。
一般的には内容証明郵便を使って債務者宛に債権譲渡通知書を送り、有効な債権譲渡が行われたことを知らせます。
そこで債権譲渡通知書が届くときには、通常内容証明郵便で送られてきます。
債権譲渡できない債権について
譲渡できない債権もあるのかな?
そうだね。 事前に債権を譲渡しないという契約を結んでいる場合には、債権譲渡は出来ないんだよ。 その他にも譲渡できない債権があるから詳しく説明するね。
債権は、基本的に債権者と譲受人が合意することによって譲渡できます。
ただし、中には譲渡できない債権があるので、確認しましょう。
譲渡禁止特約があるケース
1つは、「譲渡禁止特約」がついている債権です。
譲渡禁止特約とは、債権者と債務者との間で締結される「債権譲渡をしない」という約束です。
一般的には債権を発生させる際に「この債権については譲渡を禁止する」と取り決めをしますが、後日に話し合いをして譲渡禁止特約をつけることも可能です。
もしもお金を借りる際などに、「債権譲渡はしない」と約束をしてきちんと契約書に書いていたら、債権者がその約束に違反して債権譲渡をしても、異議申し立てを行い、無効を主張することができます。
性質上債権譲渡できないケース
たとえば以下のような債権は、その性質上債権譲渡ができないと考えられています。
- 賃借権
- 使用借権
- 雇用契約で働いてもらう雇用者の権利
- 慰謝料請求権
- 養育費などの扶養請求権
法律上債権譲渡が禁止されるケース
以下のような権利は、法律上債権譲渡が許されません。
- 給与の請求権
- 生活保護の受給権
- 年金受給権
- 遺留分減殺請求権
- 財産分与の請求権
もしも知らない相手や現在の債権者から、上記のような債権を譲渡したという通知が届いても無効ですので、「譲受人」と主張する人に支払いをしないよう注意しましょう。
「債権譲渡通知書」が届くタイミング
借金を延滞すると、すぐ債権譲渡通知書が送られてくるの?
ほとんどの金融機関の場合、延滞をしてから数か月経過してから債権譲渡通知書が送られてくるよ。
借金返済を滞納して「債権譲渡通知書」が届くのはいつのタイミングになるのでしょうか?
ケースにもよりますが、債権譲渡が行われるのは、借金を滞納してから相当な日数が経過してからです。
通常借金返済を滞納すると、2、3か月くらいが経過して借入先から「期限の利益喪失通知書」が送られてきて、一括請求を求められます。
早い場合には、その後速やかに債権回収会社などに債権譲渡が行われます。
一方銀行カードローンなどの場合には、銀行から一括請求書が送られてきた後、保証会社が代位弁済します。
その後保証会社が裁判を起こし、それでも取り立てができない場合に債権譲渡が行われます。
借入先がクレジットカードや消費者金融などで保証会社がついていない場合、元の債権者が何度か督促状が送られてきて、それでも支払いがない場合に債権譲渡が行われます。
または裁判を起こされて、取り立てができないまま長期間が経過したときに債権譲渡されるケースもあります。
以上のように債権譲渡されるタイミングは、早くて借金滞納後2~3か月、遅い場合には1年や2年が経過してからになるケースもあります。
支払督促が来ないからといって、時効援用を狙っている人もいるかもしれませんが、忘れた頃に債権譲渡通知書が届く可能性もあるので、油断してはいけません。
債権譲渡された場合のデメリット
債権が譲渡されると、債務者にとって何か不都合なことはあるの?
取り立てが厳しくなってしまう場合がほとんどだね。 その他にも詐欺であるかどうかの判断がつきにくい事もあるから注意が必要だよ。
債権譲渡をされると、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
強硬な取り立てが行われる
まず債権譲渡されたからといって、借金の支払金額が増えるわけではありません。
ただ債権の譲受人である債権回収会社はお金を払って債権を譲り受けているわけですから、何としても債権を回収しなければならないと考えています。
そこで、もともとの債権者よりも強硬な手段で取り立てを行う可能性が高くなります。
たとえばしつこく電話や手紙による督促が行われたり、裁判を起こされて給料や預貯金、自宅などを差し押さえられたりするリスクもあります。
債権譲渡後にも未払いの債権には遅延損害金がかさんでいくので、支払いを遅延するほどどんどん返済すべき金額が雪だるま式に膨らんでしまいます。
詐欺の業者である可能性
債権譲渡が虚偽であり、詐欺の業者が勝手に債権譲渡通知を送ってきている可能性もあります。
実際債務者を狙った悪質な詐欺の事例も多々あります。
その場合、偽物の業者に支払いをしても債務を消滅させることはできません。
もともとの債権者にも支払いをしなければならないので、二重払いになってしまう可能性が発生します。
債権譲渡通知書が届いた場合の対処法
じゃあ、債権譲渡通知書が届いたらどうしたら良いの?
内容証明郵便を利用しているかどうか、借り入れ先から送られてきているかどうか、譲渡先の業者が実在しているのかどうかを調べてみよう。
債権譲渡通知書が届いたとき、不利益を受けないために以下のような対応をとりましょう。
詐欺ではないかを確かめる
まずは、その債権譲渡が虚偽でないことを確かめる必要があります。
法律上、営業行為として債権を譲り受けて他人の代わりに行使をして良い業者は限定されています。
適法な債権回収業者は、要件を整えた上で国に申請して認可を受けています。
認可を受けていない「闇」業者は違法ですし刑事罰も課されます。
国の認可を受けた適法な債権回収業者は法務省によって発表されているので、以下のサイトでチェックしましょう。
また認可を受けた債権回収業者には「法人番号」という番号があります。
債権回収業者から債権譲渡通知書が届いたら、上記のページをみて適法な業者かどうかを確認しましょう。
また、債権譲渡通知書は、通常「内容証明郵便」を使って送られます。
普通郵便やハガキなどで「債権譲受告知書」などの表題で書類が届いたらたいていは詐欺ですので、応答すべきではありません。
また債権譲渡通知書は、もともの借入先(銀行やクレジットカード会社など)から送られてきます。
「〇〇債権回収」などの会社からいきなり「債権譲り受けのお知らせ」などが届いたら詐欺の可能性があるので、もともとの債権者に状況を問い合わせましょう。
詐欺だった場合の対処方法
債権譲渡通知が届き、それが詐欺だった場合には、通知書の送り主に対して連絡を入れるべきではありません。
いろいろなことを言われたり脅されたりしてお金を払わされてしまうおそれがあります。
基本的には放っておいて良いですが、しつこい場合や不安な場合には警察や弁護士などに相談をして、しかるべき対応をとってもらいましょう。
詐欺ではなかった場合
一方本当に債権譲渡が行われ、権利者から債権譲渡通知が送られてきている場合には、支払わねばなりません。
放っておくと債権回収会社から裁判を起こされて、簡易裁判所から差し押さえ命令が下されるおそれもあります。
ただ債権譲渡通知が本物かどうかは自分一人では判断がつきにくいものです。
万が一詐欺だった場合、損をするのは債務者です。
そこでやはり一度は債権譲渡通知書を持参して弁護士や法テラスを利用して専門家に相談することをお勧めします。
その上で、支払いが必要ならば支払いをしましょう。
負債が膨らみ過ぎて支払えない状態になっているならば、自己破産や個人再生などの債務整理によって解決することもできます。
債権譲渡通知書が届いても裁判を起こされていても、債務整理によって借金から逃れることはできるので、諦めずに早めに法律家に相談してみてください。
中には、破産者に債権譲渡通知書を送り付けるヤミ業者も存在しますから、十分注意しましょう。
まとめ
債権譲渡通知書が来たからといって、慌てて返済してはいけないんだね。 詐欺かどうかを確認する方法が良くわかったよ!
債権譲渡通知書が送られてくるという事は、長い期間延滞が続いているということだから、借り入れを返済できない場合には出来るだけ早く弁護士事務所に相談に行って、弁護士回答を得るのがお勧めだよ。
借金をきちんと返済できていない場合、滞納者の名簿などが出回るのでいろいろな詐欺の業者からの通知や連絡も届きやすくなります。
騙されると状況がさらに悪化してしまうので、自己判断で行動する前に、弁護士に相談しましょう。
福谷陽子
元弁護士・ライター。
弁護士としての活動した約10年間のうち、7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては債務整理案件を多数担当し、任意整理・個人再生・自己破産のみならず、過払金請求も手がける。
その経験をもとに、現在はライターとして法律関係の記事を執筆している。
■略歴
・京都大学法学部在学中、司法試験合格
・京都大学法学部卒業後、司法研修所入所
・弁護士登録・某法律事務所にて勤務
・独立し、陽花法律事務所を設立
・弁護士活動を停止し、ライターに転身
■ご覧のみなさまへのメッセージ
借金問題を抱えていると、追い詰められた気持ちになるものです。
「どうしようもない」「借りた自分が悪い」「借りたからには返さなければ」と律儀な思いを持ち、必死で返済を続けている方もおられるでしょう。
しかしどんなに頑張っても返済できない借金があるものです。
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債務整理をすると嘘のように借金問題を簡単に解決できるケースが本当に多いです。
借金問題に悩んでいる時間はもったいないです。
債務整理は恥ずかしいことではないので、勇気を出して専門家へ相談していただきたいと思います。
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