公務員の自己破産・借金はバレるのか?処分内容や注意点を解説
公務員が自己破産をすると、仕事をやめなければいけないの?
そんなことはないよ!
公務員であっても、自己破産によって仕事を辞める必要はないんだ。
だけど、公務員の種類によっては、職業制限を受けてしまう事もあるよ。
今回の記事では、公務員が自己破産をするとどのような影響があるのか、詳しくチェックしていこう!
- 公務員が自己破産したら職場にバレる?
- 公務員が自己破産したら懲戒免職されるのか?
- 公務員が自己破産すると、昇進や昇給できなくなる?
公務員でも、さまざまな事情によって借金を抱えてしまうことがあるものです。
そんなときに気になるのが「解雇」「懲戒」「職場バレ」ではないでしょうか?
実は公務員が破産しても懲戒事由にはなりませんし解雇もされません。
職場にバレるリスクも低くなっています。
以下では、公務員が自己破産した場合の取扱いや効果、不利益を受けないための注意点を解説していきます。
自己破産しても免職にならない
自己破産は懲戒事由に該当しない
公務員の方は、自己破産すると「懲戒免職」されるのか心配されるケースが多々あります。
しかし、自己破産は公務員の懲戒事由に該当しません。
懲戒とは、重大な非行を行って職場に迷惑をかけた従業員に対して懲罰を与えることです。
自己破産の場合、「借金をして免責(借金を0にすること)してもらった」というだけであり、職場に迷惑をかけたわけではないので懲戒事由に該当しません。
免職だけではなく、戒告や減給などの他の懲戒処分を受けることもありません。
自己破産を知られなかった場合はもちろんのこと、たとえ職場に知られても、懲戒されることはないので安心しましょう。
自己破産の「資格制限」にも該当しない
自己破産には「資格制限」というルールがあります。
資格制限とは、自己破産の手続き中に一定の職業に就けなくなる制限です。
資格制限の適用対象となっている仕事に就いていたら、免責が下りるまでその仕事をできなくなるので、仕事を辞さねばならない可能性もあります。
一般の公務員は、資格制限を受ける職業に該当しません。
地方公務員でも国家公務員でも同様です。
警察官、消防署員、教員、自衛官などを含め、どのような公務員も自己破産によって辞める必要はありません。
エリートと呼ばれる国家一種でも同様です。
公務員でも資格制限を受ける職種とは
公務員でも一部の職業は資格制限を受けます。
以下のような特殊な業種です。
- 公証人
- 人事院の人事官
- 国家公安委員会委員
- 都道府県公安委員会委員
- 地方公営企業金融機関の役員
- 労働保険審査会の委員
上記に該当する場合には一時的に職を辞さねばなりませんが、該当しない場合にはこれまでと全く変わらず仕事を続けられますし、職場に自己破産を報告すべき義務もありません。
職場に自己破産がバレる不利益について
公務員が自己破産をすると、どんな影響があるの?
職場にいづらくなってしまう事があるんだ。
その他にも、エリートコースから外れてしまうようなケースもあるね。
公務員が自己破産をしても仕事を続けることは可能ですが、職場に知られると以下のような不利益が及びます。
職場の雰囲気悪化による自主退職
職場で自己破産したという噂が広まって居心地が悪くなることが多々あります。
自主退職に追い込まれて仕事の継続が厳しくなる可能性もあるため、なるべくならば職場に知られたくないものです。
昇進昇給について
公務員は勤務年数に応じて昇給していく仕組みなので、自己破産によって昇進や昇給が難しくなる心配は民間企業と比べると小さくなっています。
ただ、エリートコースに乗ることが難しくなり、職種によっては10年20年後に同僚と差がついてしまう可能性は充分に発生します。
職場に公務員の自己破産がバレるケースとは
公務員が自己破産をすると、必ず職場にバレてしまうの?
共済組合から借り入れをしている場合や、互助会の積み立てをしている場合には、職場にバレてしまう可能性が高いんだよ。
公務員が自己破産したとき、職場にバレるのはどういったケースなのでしょうか?
共済組合から借り入れをしている場合
もっとも多いのは「共済組合」から借入をしている場合です。
共済組合から借入があると自己破産がバレやすい理由
共済組合とは、公務員が自主的に作っている健康保険や年金などの福利厚生の機関です。
「公務員共済」と呼ばれ、非常に強固で優遇されています。
公務員は、公務員共済から極めて有利な条件で融資を受けられます。
住宅ローンや教育ローン、車のローン、カードローンなどの民間企業と比べて驚くほどの低金利で、無担保無保証、無利子のローンなどもあります。
このように破格の条件となるのは、利用者が全員公務員で返済が給与天引きなのと、共済自体が営利目的ではないからです。
貸付金を確実に回収できる上利益を追求していないので、破格の条件を提示できます。
ところが共済組合から借入をしているときに自己破産をすると、共済組合からのローンも「自己破産の免責」対象にしなければなりません。
そうなると、弁護士や裁判所から共済組合に連絡が行われます。
共済組合は職場そのものではありませんが、職場と密接な関係を持っています。
たとえば共済組合に破産の連絡が行われて給与天引きを止めるときには、共済組合から職場の給与計算担当者に連絡が行われます。
その時点で給与計算担当者には自己破産を知られてしまい、そこからさまざまな方面に噂が広まる可能性があります。
共済組合からの給与天引きについて
自己破産をするときには、支払いができなくなった時点ですべての債権者に対する支払いを平等に停止しなければなりません。
そうしないと「偏頗弁済(偏った弁済)」と評価されて、免責を認めてもらえない可能性が発生します。
通常は、弁護士が債務整理手続きに介入した時点ですべての返済を完全にストップします。
しかし公務員共済の場合、実際に破産申立をして破産手続き開始決定が出るまで給与からの天引きを止めてくれないケースが一般的です。
そうなると裁判所で「偏頗弁済」扱いされて、管財人をつけられて余分に支払われたローン返済分の取り戻しが行われる可能性があります。
このように共済組合から借入があると、以上のように非常にいろいろな問題が発生します。
共済のみを自己破産から外すことはできない
そうはいっても共済組合のみを外して自己破産する方法は認められません。
自己破産には「債権者平等の原則」があるからです。
これは、すべての債権者を平等に扱わねばならない決まりです。
共済組合を外して他の負債だけを整理すると偏頗弁済となって免責を認められなくなる可能性が高まります。
これから共済組合を利用したいと考えている場合、共済組合では、個人信用情報機関の事故情報を調べる事はありませんが、自己申告により借入状況等申告書を作成する事になるため、自己破産後に共済組合の利用は難しいと考えておきましょう。
互助会で積立をしている場合
公務員の方は「互助会」を利用されているケースもよくあります。
互助会とは、加入者が月々お金を積み立てておいて、会員に冠婚葬祭などがあったときに必要な費用を支払ったり、休職時に補償金を渡したりする相互補助のための会です。
市町村職員の互助会や教職員の互助会などいろいろな互助会があり、公務員は自分が所属する職種の互助会に入っているものです。
互助会に加入していると毎月給与から一定額が天引きされて積み立てられますが、積立金は、自己破産の際に「財産」と評価されます。
しかし自己破産ではおおむね20万円を超える財産があると、管財人によって債権者に配当されます。
そこで長期間互助会に加入していて積立額が大きくなっている方が自己破産すると、管財人が互助会に連絡をして解約し、積立金を取り戻したことをきっかけに職場に破産がバレる可能性が高くなります。
なお、互助会の積立について知られたくないからといって裁判所に隠すのはNGです。
そのような「財産隠し」をすると「免責不許可事由」となって、免責決定を受けられなくなる可能性があるからです。
互助会積立は通常給与からの天引きになるので、給与明細書を見れば一目瞭然です。
「こちらの積立金はどうなっていますか?」と裁判所に聞かれるので、隠し通すことは不可能です。
互助会からも積立額に関する資料を取り寄せて裁判所に提出し、正直に自己破産手続きを進めていきましょう。
官報公告について
自己破産をすると、「官報公告」が行われます。
これは政府が発行している「官報」という誌面に破産者情報が掲載されることです。
破産すると、2回ほど破産者名や住所、破産裁判所や事件番号、破産管財人などの情報の個人情報が掲載されます。
官報はネットでも閲覧できるので誰でも見ることができますし、役所などでも売られていたり定期購入されていたりします。
ただし現実に官報に目を通している人はほとんどいません。
公務員であってもわざわざ官報の末尾の自己破産者情報をチェックしている人などほぼいないので、官報公告によって職場に知られるリスクは、あまり考える必要がありません。
税金や借金を滞納している場合
公務員であっても、不動産投資などを行っていて税金を支払えていない方も中にはおられます。
FXや仮想通貨などで大きな利益が出たために税金を支払えていない方もいるでしょう。
また借金を滞納して債権者から裁判を起こされ支払命令が出てしまうケースもあります。
このように税金や借金を滞納していると、職場に知られるケースがあります。
「給与差し押さえ」をされる可能性があるためです。
全額は差し押さえられませんが、一部を差し押さえられると当然国税局や裁判所から職場に連絡されます。
すると給与計算担当者を始めとした同僚に税金や借金滞納を知られてしまいます。
闇金から借り入れをしている場合、職場や家族にわざと借金をばらされてしまうような事もあります。
退職金の評価額について
退職金は、財産として自己破産に組み込まなければいけないの?
退職するまでにどの位の期間があるかによって、自己破産に組み込む退職金の金額が変わってくるんだよ。
詳しく説明するね!
公務員が自己破産するときには「退職金」にも注意が必要です。
自己破産をすると、退職金は「財産」として評価されるので、配当の対象になるからです。
退職金の評価方法は、ケースによって異なります。
退職が遠い将来のケース
退職が遠い将来の場合、退職金の評価は「退職金の見込額の8分の1」となります。
つまり「もし今退職したらいくらの退職金を受け取れるか」という評価の金額の8分の1が財産評価額です。
この金額が20万円を超える場合(退職金見込み額が160万円を超える場合)、破産者が自分で用意して現金で管財人に渡さねばなりません。
退職時期が具体的に決まっているケース
退職時期が具体的に決まっており退職金額なども算定されている状態であれば、退職金の財産評価額は「退職金見込額の4分の1」となります。
これについても、まだ退職金を受けとっていない状態で自己破産するわけですから、いったんは自分で現金を用意して管財人に渡す必要があります。
公務員の自己破産は管財事件になりやすい
公務員の自己破産は、公務員以外の人が自己破産をするのと何か違いはあるの?
公務員の自己破産の場合には、管財事件になりやすいんだ。
そのため、自己破産のために20万円程度の費用を用意しなければいけないことが多いんだよ。
公務員の自己破産では一般人の自己破産と比べて管財事件になりやすい特徴があります。
管財事件になると、最低20万円の予納金が必要となりますし、破産管財人が選任されて手続きが複雑化、長期化します。
公務員が管財事件になりやすい理由は以下の通りです。
- 共済組合からの借入があると、他の支払いを止めても破産手続き開始直前まで共済借入分だけが給与から天引きされ続けるので「偏頗弁済」とみなされる
- 「互助会」積立や「退職金」評価額が高額になり、20万円を超えてしまう
上記に該当する場合には、管財事件となるので腰を据えて自己破産に取り組む必要があります。
これから公務員を目指す場合の対処方法
これから公務員を目指す人が自己破産をすると、何か影響が出てしまう事はあるのかな?
まだ公務員として勤めていないのであれば、自己破産をしても、今後の就職には何のリスクもないよ。
公務員になってから自己破産をするよりも、公務員になる前に自己破産をしておく方が、継続して勤務をする上では安心だね。
今借金があって自己破産したいけれど、今後公務員を目指したいという方もおられます。
この場合、自己破産を先にすべきか公務員就職を先にすべきか、どちらが良いのでしょうか?
まず自己破産をしても、公務員への就職に問題はありません。
採用の際に破産情報まで確かめられることは一般的にありません。
破産したかどうかの調査も行われません。
一方破産せずに借金を抱えたまま就職してしまったら、債権者から給料を差し押さえられる可能性があり、そうなったら職場にバレてしまいます。
しかも就職後共済組合から借入をしたら、今度は自己破産したくてもできない状態になってしまいます。破産すると職場にバレるためです。
このようなリスクを考えるなら、就職前にきっちり借金を清算しておくのが良いでしょう。
自己破産に抵抗がある場合、個人再生や任意整理を選択する方法もあります。
まとめ
公務員が借金整理をする場合には、共済組合を利用していなければ、問題なく行うことができるんだね。
リスクがないってわかって安心したよ。
多重債務が返済できないと、債務者の会社に消費者金融やカードローン会社などから連絡が来てしまう事もあるから、借り入れを返済できないと気が付いたら、出来るだけ早く弁護士事務所に相談に行くのがお勧めだよ。
場合によっては、過払い金請求により、自己破産をせずに済む場合もあるから、まずは弁護士に相談してみよう。
公務員が自己破産するときには、一般の人以上に注意しなければならないポイントがいくつもあります。
なるべく不利益を避けるためには借金問題に詳しい弁護士や司法書士を頼るべきです。
債権者から強制執行などの強硬な手段をとられる前に、早めに専門家に相談しましょう。
福谷陽子
元弁護士・ライター。
弁護士としての活動した約10年間のうち、7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては債務整理案件を多数担当し、任意整理・個人再生・自己破産のみならず、過払金請求も手がける。
その経験をもとに、現在はライターとして法律関係の記事を執筆している。
■略歴
・京都大学法学部在学中、司法試験合格
・京都大学法学部卒業後、司法研修所入所
・弁護士登録・某法律事務所にて勤務
・独立し、陽花法律事務所を設立
・弁護士活動を停止し、ライターに転身
■ご覧のみなさまへのメッセージ
借金問題を抱えていると、追い詰められた気持ちになるものです。
「どうしようもない」「借りた自分が悪い」「借りたからには返さなければ」と律儀な思いを持ち、必死で返済を続けている方もおられるでしょう。
しかしどんなに頑張っても返済できない借金があるものです。
法律は借金返済できない方や苦しくなった方に救済手段をもうけています。
債務整理をすると嘘のように借金問題を簡単に解決できるケースが本当に多いです。
借金問題に悩んでいる時間はもったいないです。
債務整理は恥ずかしいことではないので、勇気を出して専門家へ相談していただきたいと思います。
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