司法書士と弁護士の違いって?借金問題のケース別に解説
弁護士と司法書士はどう違うの?
今回の記事では弁護士と司法書士の違いやどちらに依頼すべきかをチェックしていこう!
借金問題で困ったときには専門家による助けが必要です。
依頼できる専門家には「司法書士」と「弁護士」がありますが、それぞれどのような違いがあるかご存知でしょうか?
今回は司法書士と弁護士の違いやどちらに依頼すべきかについて、借金トラブルのパターンごとに解説します。
弁護士と司法書士の違い
一般の方は「弁護士と司法書士を同じ資格」だと思っていたり「同じ法律の専門家」と受け止めていたりするものです。
「何となく司法書士の方が、敷居が低く感じる」「弁護士は料金が高い」と思っている方もおられるでしょう。
ただ残念ながら上記のような理解はいずれも間違っています。
ここではまず弁護士と司法書士にはどういった違いがあるのか、確認しましょう。
弁護士とは
弁護士と司法書士は「異なる国家資格」です。
試験の内容もまったく異なり、どちらかに合格したからといって他方の仕事はできません。
弁護士は「司法試験」に合格した人が得られる資格で「法律全般についての専門家」です。
民法、刑法など多くの法律についての詳細な知識を持ち示談交渉や裁判の代理権が認められます。
債務整理の場面では金額の制限もなく、任意整理、個人再生、自己破産を含めあらゆるケースで本人の「代理人」としてトラブル解決が可能です。
司法書士とは
司法書士は司法書士の国家試験に合格した人が得られる資格で、もともとは「登記」の専門家です。
不動産登記や商業登記などを主な仕事内容とします。
代理人として交渉や裁判はできません。
ただ特別な研修を受けて「認定司法書士」になると、一部の代理権が認められます。
認定司法書士が扱えるのは「140万円以下の民事事件」で裁判代理権は簡易裁判所に限定されます。
債務整理でも
- 「1社からの借入額が140万円以下」
- 「1社への過払い金請求額が140万円以下」
のケースでは司法書士が代行でき、個人再生や自己破産では「書類作成」のみ代理できます。
司法書士と弁護士、料金の違い
弁護士と司法書士の両方にお願いできる仕事は存在します。
債務整理なら「140万円以下の任意整理や過払い金請求」が該当します。
このようにどちらにでもお願いできる仕事の場合、一般的に「司法書士の方が料金は安い」と思われているケースが多々あります。
ただ現実には司法書士だからといって必ずしも弁護士より料金が安いとは限りません。
任意整理や過払い金請求の場合、「相場はほとんど同じ」といっても良いでしょう。
個人再生や自己破産の場合、司法書士には「書類作成代理権」しか認められない関係で料金が多少安く設定されているケースがあります。
債務整理は弁護士と司法書士どちらに依頼するのが良いの?
自己破産や個人再生の手続きを視野に入れているのであれば、弁護士に依頼するのがお勧めだね。
借金トラブルを抱えてしまったとき、結局弁護士と司法書士のどちらに依頼するのが良いのでしょうか?
弁護士に依頼する方が良い場合
以下のようなケースでは弁護士しか対応できないので、必ず弁護士に依頼する必要があります。
1社について140万円以上の借入がある
消費者金融やクレジットカード会社、銀行など、借入額が「1社について140万円」を超える場合、司法書士には対応できません。
必ず弁護士に依頼する必要があります。
なおこのとき「1社からの借入額」を単位とするので注意しましょう。
「全体の借入額」は140万円を超えていてもかまいません。
過払い金請求金額が140万円を超える見込み
過払い金を請求する場合にも「140万円」が基準となります。
1社に対する過払い金請求金額が140万円を超えていたら司法書士には依頼できません。
ただ実際の過払い金の金額は「取引履歴」を取り寄せて利息制限法引き直し計算をしないと明らかになりません。
取引期間が長いケースや借入額が大きかったケースなど、過払い金額が大きくなりそうな事案では始めから弁護士に依頼する方が安心といえるでしょう。
地方裁判所や高等裁判所で訴訟が起こっている
司法書士には簡易裁判所の代理権しか認められないので、地方裁判所や高等裁判所で訴訟が起こってしまったら対応を依頼できません。
必ず弁護士に依頼しましょう。
個人再生や自己破産の場合
個人再生や自己破産は司法書士も対応できますが、弁護士の方が安心です。
司法書士には「書類作成代理権」しか認められず代理権が認められないので、裁判所での審尋や債権者集会の場面に同席できません。
債務者は一人で対応しなければならないのです。
一方弁護士の場合には当事者の代理権が認められるので、同席して意見を述べたり助言してもらえたりします。
特に自己破産の場合、複数回裁判所に行かないといけないケースが多いので、弁護士に依頼するようお勧めします。
司法書士がお勧めの場合とは
以下のような場合には、司法書士に依頼してもかまいません。
1社からの借入額が140万円を超えていない
消費者金融やクレジットカードなど「1社からの借入額」が140万円を超えていなければ、司法書士に依頼できます。
1社に対する過払い金請求金額が140万を超えていない
過払い金請求も同様で、1社に対する請求金額が140万円を超えていなければ司法書士に依頼できます。
ただ利息制限法引き直し計算をしないと具体的な金額が明確になりません。
借入期間が短い、借入額が少額など「明らかに過払い金が少額なケース」で司法書士に依頼すると良いでしょう。
自己破産にならない
自己破産の際には何度か裁判所に行かないといけないケースが多数です。
代理権の認められない司法書士に依頼すると、同席してもらえず一人で裁判官と話をしたり債権者集会に対応したりしなければなりません。
そういったことが不安であれば、弁護士を選ぶべきです。
司法書士を選んで良いのは「自己破産する必要がないケース」といえるでしょう。
ただ自己破産する場合でも裁判官との面談や債権者集会に一人で臨むのが平気な方は、司法書士を選んでも大丈夫です。
費用をできるだけ抑えたい
費用については冒頭の「弁護士と司法書士の違い」でもご説明した通り、自己破産や個人再生の場合、司法書士の方が弁護士よりも安くなる傾向があります。
ただ任意整理の場合には司法書士と弁護士の報酬額がほとんど変わらないケースも多々あります。
実際、債務整理にかかる費用については「弁護士か司法書士か」というよりも「事務所ごとの違い」の方が大きいともいえます。
費用をできるだけ抑えたい場合、司法書士事務所から探すのも良いですが、弁護士事務所も含めて見積もりをもらい、もっともリーズナブルな事務所を選ぶのが賢いやり方といえるでしょう。
弁護士事務所でも無料相談や分割払いを受け付けているところが多いので、複数の事務所で無料相談を受けて料金を比較してみてください。
司法書士が対応できない場合には
すでに司法書士に依頼してしまったんだけれど、どうしたら良いのかな?
司法書士から弁護士に変わる時には、空腹期間が生じないように注意しよう。
任意整理や過払い金請求を司法書士に相談しても、借入金額や発生している過払い金の金額が140万円を超えていたらこれ以上司法書士には仕事を続けてもらえません。
その場合、以下のように対応しましょう。
弁護士を紹介してもらう
もし今お願いしている司法書士が「弁護士を紹介してくれる」なら、紹介を受けましょう。
債務整理に積極的に取り組んでいる司法書士の場合、提携弁護士がいて自分が対処できなくなった際に弁護士を紹介してくれるケースがよくあります。
紹介してもらった弁護士であれば依頼者としても安心ですし、引継ぎ作業も専門家同士で行ってもらえてスムーズです。
代理の弁護士を自分で探す
現実には、依頼していた司法書士事務所が弁護士を紹介してくれないケースもよくあります。
その場合司法書士から「これ以上はこちらで仕事を進められません」と言われて放り出されてしまうおそれがあります。
そうなったら債権者から借金支払いの督促が届き続ける生活に戻ってしまうでしょう。
その前に自分で弁護士を探し、債務整理を引き継いでもらう必要があります。
司法書士から弁護士への引継ぎ手順
弁護士を自分で探す場合の司法書士から弁護士への引継ぎ手順は、以下の通りです。
- ホームページ検索などで債務整理に力を入れている弁護士事務所を探す
まずは債務整理を依頼する弁護士を探さなければなりません。
ホームページ検索などで借金トラブル解決に力を入れている弁護士を見つけましょう。
弁護士会や法テラスを使う方法もあります。 - コンタクトをとり、無料相談などを利用して相談する
債務整理を引き継いでもらいたい弁護士に問合せをして借金トラブルを抱えていることを伝え、無料相談を利用して話を聞いてもらいましょう。 - 現状を伝え、引継ぎをお願いする
相談の際、弁護士に「今司法書士にお願いしているけれども140万円を超過して依頼できなくなったので、事件を引き継いでほしい」と希望を伝えます。 - 司法書士の連絡先を伝える
弁護士が引継ぎを了承したら、今お願いしている司法書士事務所の名称や連絡先(電話番号やメールアドレス、FAX番号など)を伝えます。 - 司法書士に次の弁護士が決まったことを連絡する
次に、今お願いしている司法書士へ「新しい弁護士が決まった」と伝えます。
このとき、新しい弁護士の名称や電話番号、FAX番号などの情報も伝えます。 - 専門家同士でやり取りしてもらう、もしくは自分で司法書士から記録を受け取って弁護士に渡す
その後は弁護士が司法書士に直接連絡をして記録の引継ぎを行うか、依頼者がいったん司法書士から記録を返還してもらって弁護士事務所に持っていくかのどちらかになります。
事務所によって対応方法が異なるので、依頼した弁護士や司法書士の指示を受けて行動しましょう。
司法書士から弁護士に引き継ぐ際の注意点
司法書士から弁護士に引き継ぐ際には「空白期間」が生じないように注意しましょう。
空白期間とは「誰も債務整理を受任していない状態」です。
司法書士や弁護士などに債務整理を依頼すると、債権者は債務者へ直接督促できなくなります。
しかし司法書士が辞任してしまって新しい弁護士が就任していない「空白期間」が発生すると、債権者からの督促が復活してしまいます。
そうなったらまた生活不安に苦しむ状態に逆戻りです。
司法書士から弁護士に引き継ぐ際には、司法書士が辞任届を提出する前に弁護士に受任通知を発送してもらう必要があります。
専門家との間でコミュニケーションをとってスムーズに対応を進めてもらいましょう。
債務整理を依頼する弁護士の探し方
司法書士から弁護士へ引き継ぐ場合にも、債務整理案件の実績豊富な弁護士を選ぶようにしよう。
司法書士から弁護士に引継ぎを行うのは依頼者にとって非常に面倒ですし「空白期間」が生じるリスクも発生します。
このようなことにならないよう、当初から弁護士に依頼した方が安心といえるでしょう。
その場合「債務整理に強い弁護士」を選ぶ必要があります。
司法書士から弁護士に引き継ぐケースでも、やはり債務整理を得意とする弁護士を探さねばなりません。
債務整理に積極的に取り組んでいる弁護士には以下のような特徴があります。
- 債務整理案件の実績が高い
- ホームページなどで積極的に任意整理や個人再生、自己破産についての情報を発信している
- 相談したときに説明がわかりやすい、親身になって対応してくれる
- コミュニケーションを取りやすい、悩みを聞いてくれて解決方法を提示してくれる
これから債務整理をするなら、上記のような特徴をもった弁護士を探して依頼すると失敗するリスクが大きく低下するでしょう。
福谷陽子
元弁護士・ライター。
弁護士としての活動した約10年間のうち、7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては債務整理案件を多数担当し、任意整理・個人再生・自己破産のみならず、過払金請求も手がける。
その経験をもとに、現在はライターとして法律関係の記事を執筆している。
■略歴
・京都大学法学部在学中、司法試験合格
・京都大学法学部卒業後、司法研修所入所
・弁護士登録・某法律事務所にて勤務
・独立し、陽花法律事務所を設立
・弁護士活動を停止し、ライターに転身
■ご覧のみなさまへのメッセージ
借金問題を抱えていると、追い詰められた気持ちになるものです。
「どうしようもない」「借りた自分が悪い」「借りたからには返さなければ」と律儀な思いを持ち、必死で返済を続けている方もおられるでしょう。
しかしどんなに頑張っても返済できない借金があるものです。
法律は借金返済できない方や苦しくなった方に救済手段をもうけています。
債務整理をすると嘘のように借金問題を簡単に解決できるケースが本当に多いです。
借金問題に悩んでいる時間はもったいないです。
債務整理は恥ずかしいことではないので、勇気を出して専門家へ相談していただきたいと思います。
最新記事 by 福谷陽子 (全て見る)
- 子供の借金は親が払わなければいけないの?専門家が解説 - 2021年12月21日
- 会社から借金をしたけど返済できない!滞納したらどうすればいいか解説 - 2021年11月24日
- 借金の利息・利子が免除になる?任意整理・債務整理の方法を専門家が解説 - 2021年10月21日
厳選!おすすめ記事BEST3
- 1
-
債務整理のベストな選択とは?経験談を踏まえて基礎情報から弁護士の選び方まで一挙解説
もし多額の借金を抱えてしまった場合、もしくは借金を返せなくなったと思った場合、誰 ...
- 2
-
債務整理に注力しているおすすめの事務所一覧【徹底調査】
当サイトでは、実際の取材や債務整理の相談を行なった体験談をもとに、おすすめの弁護 ...
- 3
-
債務整理のベストな選択とは?経験談を踏まえて基礎情報から弁護士の選び方まで一挙解説
もし多額の借金を抱えてしまった場合、もしくは借金を返せなくなったと思った場合、誰 ...
- 4
-
任意整理の弁護士費用はどれくらい異なるの?おすすめ事務所を徹底比較
借金に関する相談は、弁護士事務所や司法書士事務所において無料で行なうことができま ...
- 5
-
債務整理のベストな選択とは?経験談を踏まえて基礎情報から弁護士の選び方まで一挙解説
もし多額の借金を抱えてしまった場合、もしくは借金を返せなくなったと思った場合、誰 ...
- 6
-
ひばり法律事務所の評判・口コミを徹底分析 直接取材でわかった依頼するメリット・デメリット
ひばり法律事務所の特長 累計1万件の債務整理対応実績 緊急性に応じて即レスするス ...