借金で裁判所から呼び出しが!無視したらどうなるの?専門家が解説
裁判所からの呼び出しを無視するとどうなるの?
今回の記事では、借金延滞により裁判所から呼び出しが来た場合の対処法や、出頭せずに解決する方法について、詳しく見ていこう。
借金を返済できなくて困っている状況で、裁判所からの手紙が来たらやはり少なからず動揺するものでしょう。
どうして良いかわからないからといって放ったらかしにしてしまう人もいるのですが、それは一番してはならないことです。
では、裁判所からの呼び出しへの正しい対応とはどのようなものなのでしょうか。
借金滞納により裁判所から呼び出しが来るケースとは?
借金を滞納していると、最初の2、3ヶ月は債権者からの「督促状」「催告状」といった書面が届いたり、電話での督促があります。
そこで現実的に可能な支払方法を相談できればよいのですが、約束した支払方法を果たせなかったり、督促の電話や手紙を無視していると最終的には「〇月〇日までにご回答がなければ法的措置を取らせていただきます。」といった書面になります。
それも無視しているといよいよ「裁判所から直接、裁判期日の呼出状などの書面」が届きます。
裁判所から来る可能性のある書類としては「訴状」「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」(これらが同送される)、「支払督促」といったものが考えられます。
法的措置というと裁判を連想することが多いでしょうが、裁判(通常訴訟)だけとは限りません。
むしろ個人の少額の債権に対する対応としては次のような方法も多く取られます。
少額訴訟
少額訴訟とは、「60万円以下の」、「金銭の支払いを求める場合に限り」利用できる、簡易裁判所における特別の訴訟制度です。
少額な金銭を素早く裁判で解決する場合に向いた手続きです。
そこまで専門的な知識を必要とせずにできるため、債権者が弁護士に依頼せず本人訴訟してくることもしばしばあります。
債務者側から何か主張や要望(分割で払いたいなど)がある場合は、期日において主張することである程度柔軟な解決方法を引き出すこともできます。
通常訴訟のような厳かな法廷ではなく、リラックスした円卓に着席して行われるため、裁判という慣れない場でも債務者が自分の主張を出しやすいでしょう。
支払督促
支払督促は、債権者が金銭債権のように「替えがきくもの」を素早く回収したい時に使われる手続きであり、裁判所書記官が内容を詳しく審査せずに支払いを促すことができるものです。
要するに、債務者側から見ると「対応に困って放置していると、あっという間に債務名義(それを根拠として差し押さえができる書面)を取られてしまう」という怖い手続きなのです。
少額訴訟と異なるのは、詳しい内容を調べずに「支払え」という命令が来るため、払うか、払わないかの二択になるということです。
別の対応(分割払い等)を求める場合や、債権者の言っている内容に不服がある場合は「異議申し立て」をして通常訴訟に移行させ、その中で主張することになります。
裁判所からの呼び出しを無視するとどうなるのか
では、裁判所から期日の呼出状が来た場合に、何のリアクションもせずにいるとどうなるのでしょうか?
もしも呼出状に書かれた期日に出頭せず、何も書面を出さずにいると「擬制自白」といって、原告(債権者)の主張をすべて認めた取扱いになってしまいます。(これを防ぐ方法は後述します)
裁判所からの呼び出しを無視するリスク
では、そのまま無視し続けて擬制自白が成立してしまうと、最終的結論としては「欠席裁判」つまり、被告(債務者)が負けてしまうことになります。
もし原告が勝訴判決を取ったら、その後任意の支払いがなければ「差押え」を申立てて強制的に回収されることになります。
差押えの対象は不動産などの財産があればそちらに入ることもありますが、滞納している人は大きな財産を持たないことも多いため、もし預金口座がわかっているなら口座に、そして勤務先がわかっている人は給与に差押えが入ることが考えられます。
特に給与差押えについては、勤務先に差押えの事実が知られてしまうため、中小の会社に勤務する人の中には大きな抵抗感を感じることもあるでしょう(ただ、差押えられたからといって雇い主がその事実だけを理由に解雇することはできません)。
裁判所から呼び出された時の対処法
どうしても期日に出廷できない場合には、答弁書を提出しておこう。
では、具体的に裁判所の呼び出しに対してどのように対応すればよいのかを考えてみましょう。
呼び出しを無視せず出廷する
上に説明したように、「呼び出しを無視する」ということだけは絶対にやめましょう。
※ただし、裁判所からの書面は必ず「封書」で来ますので、ハガキ1枚で裁判所を騙った文書は詐欺等である可能性が高いため注意しましょう。
自分が欠席している間に裁判が終わって勝訴判決を取られてしまえばその後、差押えて給与の一部などを持っていかれてしまうという最悪の結末になることもあります。
一番望ましい方法は「期日に出廷して現実的に可能な支払方法を債権者と相談し、それを和解の内容として定める」ことです。
ただし、ここで和解してしまった内容が調書にされるとこれも確定判決と同じく「債務名義」となり約束を守らなければ差押えされることになってしまいます。
その場しのぎでできない約束をする、ということは避けなくてはなりません。
指定の日時に出廷できない場合には
もしも期日にやむを得ない事情で出席できない場合は、ひとまず裁判所に連絡して事情を話してみましょう。
期日変更するに値する理由であると判断されれば変更してもらえる可能性もあります。
期日変更が認められない場合は必ず指定された日までに「答弁書」を提出しておきましょう。
後述しますが、出席できない当事者でも答弁書さえ出しておけば「陳述擬制」つまりその内容を期日に陳述したものとみなされます。
なお、答弁書のフォーマット等は裁判所のウェブサイトからダウンロードすることができます。
専門家に相談する
少額の裁判については自分で対応できる人もいますが、このような経験はほとんどの人が初めてでしょうから、極力弁護士に相談して正しい対応についてのアドバイスを受ける方が良いのは言うまでもありません。
弁護士であれば現実的にどの程度の内容の和解が可能なのかを見極めて債権者に提案し、少ない期日でスムーズに和解することを可能にしてくれます。
また、返済し続けること自体が厳しい債務者については、債務整理のメニューで最もその人に適切なものを提案してくれることもあります。
自分で和解して無理な内容を設定してしまった場合、やはりまた滞納して督促を受けることになり、同じことの繰り返しとなるので無駄を避けるためにも現状で一番適切な解決方法をアドバイスしてもらう意味でも専門家の意見を聞いてみることが大切です。
書類だけで解決できるのか
遠方で出頭できない場合には、管轄裁判所を変えてもらえるように、要望を出すことも可能だよ。
裁判まで持ち込まれてしまった場合に、債務者はまったく出頭せずに書類だけで解決することができるのでしょうか?
擬制陳述を行う
上記に「擬制陳述(陳述擬制)」について説明しましたが、これは当事者の一方が出頭しなくてもあらかじめ提出しておいた書面を陳述したものとみなす制度です。
地方裁判所に提訴された場合には「第1回口頭弁論」にしか陳述擬制が適用されないのですが、簡易裁判所における訴訟(例えば訴額140万円以下の請求)では2回目以降であっても適用されます。
ただ、明らかに争える要素があると考える場合でも、訴状が来てから第1回口頭弁論までに証拠書類を整えることができないこともあるでしょう。
そのような場合には答弁書の中の「請求の原因に対する認否」の欄に「事実関係を調査の上、追って詳細に認否・反論する。」と記しておき、後日具体的な主張、証拠が整ってから具体的な主張をするという方法もあります。
このような答弁書を「形式答弁書」といいます。
簡易裁判所の場合、すべての期日を擬制陳述で乗り切ることも可能ですが、それは原告の主張を「争う」場合であって、和解を希望するのであれば裁判所に出頭しなくてはなりません。
ただ、簡易裁判所の特則として「和解に代わる決定」という制度があります。
これは、金銭の支払請求を目的とする訴えについて被告が争ってこない場合は、裁判所は原告の意見を聞きつつ、被告の資力などを考慮して一定期間を超えない範囲で分割払いなどの決定を下すことができるというものです。
これに対しては、当事者はその決定の告知を受け取ってから2週間以内に、その決定をした裁判所に異議を申し立てることもできます。
要するに、少額事件については「より迅速に、現実に即した解決方法を提示する」という趣旨で裁判が行われているのです。
遠方で出廷できない場合には
状況によっては「裁判所が遠すぎて、出廷するためにはかなりの時間とお金がかかってしまう」こともあるでしょう。
そもそもどこの裁判所に訴えられることが想定されるのか?自分に都合が悪かったらどうすればよいか?を考えてみましょう。
民事裁判というのは、どこの裁判所に訴えを提起してよいのかが「民事訴訟法」で決まっています(これを「管轄裁判所」といいます)。
例えば、金銭を請求するための訴訟であれば第一審の選択肢として「審級(裁判所のランク)」で言えば「地方裁判所」「簡易裁判所」が考えられます。
振り分けとしては
- 「140万円を超える請求なら地方裁判所」
- 「それ以下なら簡易裁判所」
ということになります。
これに加えて「どの土地にある地方裁判所あるいは簡易裁判所に提起するのか」という問題があり、大原則としては被告(訴えられる人)の住所地の裁判所ということになります(民事訴訟法第4条1項)。
ただし財産権上の訴えについては義務履行地とされているので、金銭債権は「持参債務(債権者の住所地に持参する)」であることから、債権者である原告(訴える人)の住所地の裁判所を選ぶこともできます(民事訴訟法第5条1号)。
仮に、債権者の住所地の裁判所に訴えを提起されてしまってどうしても不都合が生じる場合には「移送の申立て」といって、管轄裁判所を変えてほしいという要望を出すこともできます(訴状が来たらすぐ出します)。
事件処理の遅滞を避け、当事者の衡平をはかるため等の理由を裁判所が認めれば、内容を審理する前に事件を移送してもらえることもあります。
通常、金銭消費貸借契約(お金の貸し借りの契約)では、大体の場合は契約書の中で「合意管轄」といって当事者同士で合意して管轄を定める条項があるはずですが、合意管轄がある場合でも移送が認められることがありますので、ひとまず裁判所に相談してみましょう。
まとめ
期日に出頭できない場合の対処法についても良くわかったよ。
弁護士に依頼すれば、和解に至るまでサポートをしてもらうことができるし、債務整理についてもアドバイスしてもらうことができるよ。
- 裁判所から訴状、支払督促などの文書(封書)が来たら決して無視してはならず、仮に何もしないと債務者が知らない間に勝訴判決や執行力のある支払督促などを取られ、差押え等に至ることもある。
- 裁判の期日にはできれば出席して答弁することが望ましいが、どうしても行けない場合には答弁書の提出などで「陳述を擬制する」制度もある。
- 訴えを起こされた裁判所が被告にとってどうしても不都合な場合、状況によっては「移送(管轄裁判所を移すこと)」が認められることもあるため、訴状が来た時点ですぐ裁判所に相談した方がよい。
西岡容子
青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
■注力分野
債務整理
不動産登記
相続
■ご覧のみなさまへのメッセージ
通常、お金のプロである債権者と、一般人である債務者の知識レベルの差は歴然としており、「知らない」ことが圧倒的に不利な結果を招くこともあります。
債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。
借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
なぜなら大まかにでも知識があれば法律家の話がよく理解できますし、不明な点を手続き開始前に質問することもできます。
法律家に「言われるがまま」ではなく、自分の意思で、納得して手続きに入るためにも当サイトで正しい知識をつけていただけたら幸いです。
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