債務整理の森

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個人再生で離婚の慰謝料は減額できるのか?

 

ウサギ

個人再生は、慰謝料も減額することができるの?

ミミズク

慰謝料は、悪質ではない限り減額されることが多いんだよ。

今回の記事では、個人再生による慰謝料はどのような扱いとなるのか、チェックしていこう。

まずは、個人再生でも弁済できる債権について、詳しく説明するね。

個人再生手続きの最大の特徴は「借金の元本を減額してもらうことができる」点です。

しかし中には例外があり、再生手続き中であっても再生手続きの進行とは関係なしに請求、弁済できる性質の債権もあります。

また「これを減額するのは妥当ではない」と判断されるような債権は減額されないこともあります。

では、どのような種類の債権がどのような形で「特別扱い」を受けるのか、「慰謝料」「養育費」の扱いはどうなるのかを確認してみましょう。

個人再生中でも随時弁済できる債権

個人再生手続きは裁判所に申立てを行い、その後の流れもすべて法により定められている厳格な債務整理手続きになります。

特に各債権者の平等が重視されているため、すべての債権につき一斉に支払いをストップした上で、元本を均等な割合でカットして弁済額を決めます。

いったん手続きに入ると一般の債権(再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権)は、再生計画の定めによらずに勝手に請求や弁済をすることができなくなります。

手続きの最初の段階で下記のような「債権者一覧表」が作成され、「債権届出」が行われます。

その後、最低弁済額(この金額は必ず支払わなければならないと法定された額)に基づく元本カットの割合や支払日などを定めた「再生計画案」が立てられます。

最終的にその再生計画案を裁判所が認可し、決められた月から一斉に弁済が始まり、原則として3年で終えるという流れになります(住宅ローン特則を利用した人は、そちらについては別途定めた方法で支払っていきます)。

なお、弁護士に手続きを依頼した場合の「弁護士費用」については、分割であっても全額の支払いを済ませなければ申立てをしないという事務所もあるため事前によく確認しておかなければなりません。


 



 

一部の特別な債権については手続きに沿った3年の分割弁済ではなく、本来の弁済期に弁済することが認められています(随時弁済)。

共益債権とは

上記のような一般の再生債権とは異なり、それらに先立って弁済できるものに「共益債権」があります。

共益債権とは読んで字の如く、「共に利益になる債権」のことです。

つまり、関係者みんなの役に立つ性質の債権だから先に返済してしまっても公平を欠くことにはならないだろう、という考え方です。

共益債権の例をいくつか挙げると次のようなものがあります。

  • 再生債務者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
  • 再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理および処分に関する費用の請求権
    (例・債務者が生活するために必要な電気代や水道代など)
  • 再生計画の遂行に関する費用の請求権
  • 個人再生委員(裁判所の補助機関であり、弁護士や司法書士などが就任することが多い)の費用の前払い、および裁判所が定めた報酬の請求権

一般優先債権とは

次の債権は、再生手続きによらないで随時弁済することができるとされています。

これらの債権はその性質上すみやかに支払われることが適切である、支払いが滞ることで支払い先に生じる不都合が重大である、公益的な債権であるなどの理由から、手続き外での支払いが認められているのです。

  • 民法306条~310条の「一般の先取特権」を持つ債権
    ※先取特権とは、債務者の財産から「他の債権者に先立って」弁済してもらえる権利のことです。
    【共益債権】債務者の財産を減らさないために要した費用など。公平の観点からです。
    【雇用関係(給料や退職金)】労働者の生活を保護するためです。
    【葬式費用】これも公平の観点からです。
    【日用品供給(債務者と同居家族の6カ月分の生活費)】債務者の生活を保護するためです。
  • 租税債権
  • 国民健康保険、厚生年金、国民年金など

非減免債権とは

ウサギ

慰謝料は、共益債権にも、一般優先債権にも含まれないけれど、減額の対象となるの?

ミミズク

悪質な場合や養育費などは、非減免債権となり、個人再生でも減額することが出来ないんだ。

債権の中にはその性質上、「他の借入は元本カットされたとしてもこれだけはカットするべきではないだろう」と思われるものがあります。

自己破産の場合も「非免責債権」といってチャラにすることのできない性質の債権がありますが、個人再生でもそれに準じた規定が設けられています。

  • 再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 再生債務者の扶養義務等に係る請求権

要するに、

  • 債権が発生した元になる行為が特に悪質であるため減額することが妥当ではない(暴力行為が原因で発生した損害賠償債務など)
  • その債権が支払われるのか否かが子供の福祉に影響する

といった場合には減額することができないことになります(ただし、これらの債権を持つ債権者が同意をした場合は別です)。

もし、このような非減免債権にあたる債権がある場合、その弁済方法としては

  • 再生期間中は他の債権と同じようにカットされた割合で分割払いしていく
  • 他の一般債権が終了した時点(再生計画案による弁済がすべて終了した時点)で残額を一括して支払う

ことになります。

では、もう少し具体的に見てみましょう。

個人再生で慰謝料は減額できるのか

ウサギ

慰謝料が非減免債権に入るか入らないかの違いって何?

ミミズク

はっきりとした違いがあるわけではないのだけれど、総合的に判断して、悪質性が高い場合のみ、減額されないんだよ。

「慰謝料」「損害賠償」のような債権は減額の対象になるかということですが、上記のように特に悪質な理由で発生した損害賠償金は減額できないことになっています。

逆の言い方をすれば「悪質な動機や原因ではない損害賠償」については減額されるということになります。

「慰謝料」とは何?

慰謝料は損害賠償と混同されやすいのですが、慰謝料と損害賠償は完全にイコールというわけではなく、「慰謝料は損害賠償の中の一類型である」と定義することができます。

慰謝料が非減免債権に入る場合と入らない場合の違い

上記のように「悪質性の高い」損害賠償は減免することはできません。

しかし、たとえば「不貞行為(不倫)を原因とする離婚にまつわる慰謝料」であれば一般的にはこのようなものには該当せず非減免債権にはあたらない、つまり減額することができる可能性が高くなると考えられます。

非減免債権にあたるか、あたらないかということが判断された事例については、自己破産の免責許可の事例ではありますがいくつか判示されているものがあります。

「配偶者に対する積極的な害意があれば免責されない(支払わなければならない)」

というのが一つの基準であり、これが個人再生における非減免債権になるかどうかの基準にもなると考えられます。

なかなか事例ごとに分けるなど単純化することができないのですが、単に不貞行為の期間の長さや、配偶者との同居、別居といった実態のみで決まるものではありません。

結局はそのケースごとに

  • 悪質性の高さ
  • 配偶者を積極的に害する意図があったかどうか

などを総合的に考慮して判断することになります。

「養育費」はどうなるのか

離婚で親権を持たなかった側が支払う「養育費」についても、支払義務を持つ者が個人再生したらどうなるのかが問題となります。

個人再生手続き「前に」既に具体的に発生した養育費請求権

任意の話し合いや離婚調停などを経て、すでに金額等が決定している養育費については「再生債権となる」と考えられ、他の一般債権と同じように再生計画案に従って処理されることになります。

つまり再生による弁済期間中は他の債権と同じく分割弁済します。

ただし下記に説明するように養育費は非減免債権となるので、最終的にはトータルの返済額自体をカットしてもらうことができません。

個人再生手続き「開始後に」発生した養育費請求権

これをどう取り扱うかについては議論があります。

結局のところ、養育費請求権の法的な性質をどのように解釈するかという問題なのですが、

  1. 個人再生手続き開始後に支払われる分であっても、それは開始前の原因によって生じた請求権である、との解釈をした場合
    ⇒ 再生債権となる(つまり他の債権と同時に再生手続きに乗せる)
  2. 個人再生手続き開始後の原因によって生じた請求権である、との解釈をした場合
    ⇒ 再生債権ではなく、再生手続き開始後に生じた「再生債務者の生活に関する費用」および「やむを得ない費用」にあたるとして「(上で解説した)共益債権」となり、手続きとは関係なく随時弁済することになる

このような結論になりますが、もし1.の見解を取ってしまうと次のような問題が出てきてしまいます。

養育費を再生債権と解釈しても、上記で説明した「非減免債権」にあたるので免除されることはありません。

ただ、非減免債権は他の一般債権の弁済が終了した時点で一括して支払われなければならないことになりますから、最初の段階で取り決めた金額のすべてとなると非常に高額になりがちです。

よって、現実的に支払いが不可能なケースも多いと考えられますから、2.のような解釈が妥当といえます。

再生手続き開始後に発生する将来分の養育費は再生債権ではなく、再生手続き開始後に生じた再生債務者の生活に関する費用又はやむを得ない費用(共益債権)となる。

つまり、再生手続きによらずに随時弁済することができる。

減額されない借り入れを支払えない場合には

ウサギ

非減免債権を一括で支払う事ができない場合にはどうしたら良いの?

ミミズク

交渉するしかないね。

一般的には分割での支払いとなるよ。

非減免債権(減額してもらえない債権)については上記のように他の一般債権の弁済期間が終了すると残りを一括で支払わなくてはなりません。

しかし一括で、というのは現実には困難になることが多いでしょう。

このような債権は自己破産しても結局免責の対象にならない(チャラにしてもらえない)ため、結局のところは可能な範囲での金額を設定し、分割払いの交渉をしていくしかありません。

支払えないからといって何も相談せず滞納する、というのは最もしてはならない対応です。

滞納が続けば給与の差し押さえなどを受けることになります。

一般の債権者については「勝訴判決」「和解調書」など、債務名義と呼ばれる書面を取ってからでなければ差し押さえをすることができません。

ただ、税金の場合は法律上、債務名義を必要とせずいきなり差押えることができてしまいますから油断ができないことになります。

その自治体により滞納から差押えまでの期間は異なりますが、「払えないかも」と思った時点で必ず自治体の担当部署に相談し、分割払いにしたり、ボーナス時期に一定額をまとめて支払うなど、これなら確実に支払えそう、という方法を決めておくべきです。

個人再生で慰謝料は減額できるのか、まとめ

ウサギ

個人再生は、減免される物と、されない物があるんだね。

減免されない場合の返済についても、良く分かったよ!

ミミズク

自己破産にしたとしても、非免責債権は支払う必要があるわけだから、今後の事も考えて弁護士に相談し、弁護士回答を得てから債務整理を選ぶのがお勧めだよ。

  • 個人再生の手続きに入ると、基本的に全債権者が平等に扱われるが、債権の性質によっては個人再生手続きとは関係なく随時弁済できるものがある。
  • 随時弁済できるものには共益債権(関係者すべてのために役立つ費用等)や一般優先債権(税金や社会保険料等)がある。
  • 自己破産における「非免責債権」と同様に、個人再生においても「非減免債権」といって、元本をカットすることが許されない債権がある。
  • 非減免債権については個人再生による弁済期間中は他の債権と同様にカットされた割合を分割で支払うが、個人再生による弁済期間が終了した時点で残額を一括で支払わなければならない。
  • 慰謝料は相当に悪質性の高いものや故意、重過失で相手の生命や身体に害を加えたものでない限りは個人再生による減額の対象となることが多い。
  • 個人再生手続き開始前に確定している養育費は、個人再生による弁済中は他の債権と同様に減額された割合を分割で支払うが、他の債権の弁済期間が終了したら残額を一括で支払わなければならない(現実的には相手方と話し合って分割払いを合意するケースが多い)。
  • 個人再生手続き開始後に生じた養育費は共益債権となるため、手続きによらず随時弁済することができる。
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西岡容子

青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。

平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。

「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。

債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。

■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年   青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格 
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設

■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087

■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属

■注力分野
債務整理
不動産登記
相続

■ご覧のみなさまへのメッセージ
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