債務整理を弁護士に依頼すると、費用の相場はいくら? 専門家が解説します
債務整理って弁護士に依頼するといくらぐらいかかるの?
債務整理の種類や弁護士事務所によってかかる金額は変わってくるんだ。 今回の記事では、債務整理の種類によって変わる弁護士費用の相場をチェックしていこう!
以前であれば弁護士を含む士業全般はあまり「広告、宣伝」になじまないものでした。
ただ、近年では士業の広告が自由化されてきたことから「弁護士=債務整理を代理できる仕事」というイメージも世間に定着してきました。
しかし、いまだに「弁護士は高い!とても自分に頼めるわけがない!」と思っている人が多いことも事実です。
では、実際に依頼してみた時にいくらくらいかかるのか?それをシミュレーションしてみましょう。
弁護士費用の内訳と相場
債務整理に限らず、弁護士費用全般についての報酬の大前提を確認してみましょう。
以前であれば弁護士会から「報酬規定」という形で各手続きの基準になる報酬が定められていました。
要するに「この種類の業務は〇〇円から〇〇円の間で」と決まっていたので、極端に高く、安くすることはできなかったのです。
しかし現在では各弁護士による自由な報酬設定が認められています(司法書士についても同様です)。
報酬自由化に伴い、特に債務整理の分野ではかなり従来と異なる体系での報酬を設定する事務所も増えてきています。
債務整理は4種類。それぞれ費用が異なる
債務整理を大きく分けると4種類ありますが、それぞれの報酬合計の目安は次のようになります。
任意整理
任意整理の場合には、どの位の金額を弁護士事務所に支払う事になるの?
着手金として1社あたり2万円程度、報酬として、減額した分の10%の費用が必要となることが多いね。
任意整理の費用例は次のとおりです(※前提条件にご注意下さい)。
なお、「成功報酬」や「減額報酬」の意味など、各報酬の項目については下に説明しています。
【任意整理の費用例】
弁護士 |
司法書士 |
|
相談料 |
無料~1時間1万円 |
無料~1時間6,000円 |
着手金または 成功報酬 |
無料~1社あたり2~5万円 |
無料~1社あたり2~3万円 |
減額報酬 |
無料~減額した債務額の10%程度 |
|
過払金返還報酬 |
返還に成功した金額の20%程度 |
|
前提条件 |
・5社を任意整理 ・総額で100万円債務が減った ・100万円の過払金を取り戻した |
・5社を任意整理 ・総額で100万円債務が減った ・100万円の過払金を取り戻した |
総額の例 |
560,000円+消費税 |
456,000円+消費税 |
主要な報酬といえるのが「着手金または成功報酬(おそらく成功報酬として設定している事務所が多い)」の部分です。
任意整理では「債権者1社あたり〇〇円」という設定にしている事務所がほとんどだと思われますが、おおよその相場としては1社4万円~5万円となりますので、それに債権者数を掛けた金額がベースとなります。
ただし、上記のように「減額報酬」「過払い金返還報酬」が発生するケースではそちらが加算されるため、単純に債権者数を掛けた金額以上にかかってしまいます。
なお、過払い金が戻ってきた場合は、過払い金の中から過払い金返還報酬を差し引くため、その分を手出ししなくて済みます。
※過払い金返還請求
利息引き直し計算(貸金業法改正前に高金利で行われていた消費者金融などの取引を適正な利息に直すための計算)をした結果、払い過ぎになっていた利息を交渉で取り戻すこと。
※任意整理については日弁連で「債務整理事件処理の規律を定める規程(以下、日弁連規程といいます)」で報酬金額の上限が決められていますので下に解説します。
特定調停
特定調停はどちらかと言えば法律家に頼むより自分で手続きをすることが一般的です。
そのため、弁護士事務所の費用設定は明確にしていないところも多いと思われます。
自分で申立てる場合は裁判所費用だけですので、1万円以下で済むこともあります。
弁護士が代理することもできますが、その場合は任意整理と類似した金額(1社あたり4万円~5万円)+減額報酬や過払い金返還報酬+裁判所に行く日当(×日数)などがかかることが考えられます。
個人再生
個人再生は費用が多くかかってしまうイメージがあるけれど、任意整理と比べると弁護士費用は多くかかるのかな?
住宅を残すか否かによって、弁護士費用は変わってくるんだ。 トータルして、任意整理のプラス10万円から20万円程度の費用が一般的だよ。
個人再生の費用例は次のとおりです。
【個人再生の費用例】
弁護士 |
司法書士 |
|
相談料 |
無料~1時間1万円 |
無料~1時間6,000円 |
着手金(報酬) |
※住宅ローン特則なし 30~40万円 ※住宅ローン特則あり 40~50万円 |
※住宅ローン特則なし 25~35万円 ※住宅ローン特則あり 30~40万円 |
予納金(個人再生委員選任) |
15万円(東京地裁で弁護士・司法書士がついている場合) |
|
裁判所関連の諸費用 |
計25,000円くらい(収入印紙、官報公告費用、郵便代) |
|
総額の例 |
※住宅ローン特則なし 585,000円+消費税 ※住宅ローン特則あり 685,000円+消費税 |
※住宅ローン特則なし 531,000円+消費税 ※住宅ローン特則あり 581,000円+消費税 |
個人再生を弁護士に依頼した場合、住宅を残して手続きする「住宅資金特別条項」をつけるか、つけないかで大きく違いが出てくるでしょう。
※住宅資金特別条項・・個人再生において、住宅ローンをそのまま(又はリスケジュールして)弁済し続け、その他の債務だけを個人再生手続きに従って分割払いにする方法
「住宅資金特別条項」をつけた場合はおおむね、つけない場合に比べて報酬を10万円アップくらいに設定している事務所が多いと思われます。(ただし、「減額報酬」「過払い金返還報酬」がある場合、そちらが加算されることがあります。)
自己破産や個人再生は各地方裁判所によって手続きの流れが少し違うことがあります。
地域によっては「個人再生委員」を裁判所が選任することもありますが、その場合は弁護士費用プラス15万円程度の「裁判所への予納金」がかかることがあります。
自己破産
自己破産はどの位の費用がかかるの?
管財事件になってしまうと、費用が多くかかってしまうんだ。 目安としてトータルで40万円から60万円程度が必要となるよ。
自己破産の費用例は次のとおりです。
【自己破産の費用例】
弁護士 |
司法書士 |
|
相談料 |
無料~1時間1万円 |
無料~1時間6,000円 |
着手金(報酬) |
30~40万円 |
20~30万円 |
予納金(破産管財人選任) |
20万円~(少額管財事件になった場合) |
|
裁判所関連の諸費用 |
計30,000円くらい(収入印紙、官報公告費用、郵便代) |
|
総額の例 |
※同時廃止の場合 440,000円+消費税 ※少額管財の場合 640,000円+消費税 |
※同時廃止の場合 336,000円+消費税 ※少額管財の場合 536,000円+消費税 |
自己破産では、30万円~40万円が報酬相場となりますが、「同時廃止」なのか「管財事件」なのかで報酬は大きく異なります。
管財事件の場合は「裁判所への予納金」が発生し、これが20万円程度加算されるからです。(ただし、下記の「減額報酬」「過払い金返還報酬」がある場合、そちらが加算されることがあります。)
※「同時廃止」・・破産手続の種類。債務者に配当できるような財産および免責不許可事由(詐欺的借入等)がないため、破産手続開始決定と同時に破産を廃止(手続きを終わらせる)すること。
通常この後すみやかに免責の手続きに移り、手続き全体が非常に早く終結する。
※「管財事件」・・破産手続の種類。債務者に配当できる財産があったり免責不許可事由(詐欺的借入等)がある場合に破産管財人が選任されて配当や調査などが行われる。
これらが終結すると免責手続きに移るが、全体として手続きが長期化することもある。
着手金
弁護士に仕事を依頼すると、最初に「着手金」を請求されることが一般的です。
着手金というのは本来の考え方としては
「弁護士が業務を始めるにあたって前払いで支払う性質のものであり、途中で委任契約を解除しても返還されないし、事件の成否に関わらず返還されない」
というものです。
着手金については「債務整理事件では一切かかりません」という事務所も多くなってきました。
ただ、これは最初の段階では「着手金としてのまとまったお金を捻出できる債務者はあまりいないだろう」という考え方によるものです。
その分丸々安くなっているというよりも、事件終結後に支払う「成功報酬」の部分に上乗せされていると考えた方がよいでしょう。
報酬金
報酬金にはどんな種類があるの??
減額出来た時に支払う減額報酬、交渉成立した時に支払う成功報酬、過払い金返還請求が通った時に支払う過払い金返還報酬があるよ。
減額報酬とは
減額報酬とは、最初に債務者が伝えていた債務総額よりも「利息引き直し計算」をして減額したことにより請求される報酬であり、減った金額を基準に計算します。
ただ、これについては「減額すること」が弁護士自身の力量によるものとはいえません。
以前はよく金額について争いになりましたが、現在では当然に債権者が応じてくるため、報酬として請求すること自体を疑問視する法律家もいます。
※利息引き直し計算・・貸金業法改正前の高金利で行われていた消費者金融などの取引を適正な利息に直すための計算
成功報酬(解決報酬)とは
成功報酬(解決報酬)は、事件が終結した際にかかる「一番主要な報酬部分」のことです。
債務整理についていえば自己破産の免責を取れた時や、任意整理で交渉が成立した時に請求するものです。
事件の性質で一律に〇〇円、とされているものもあれば、経済的利益(依頼者にとって利益となった部分)の〇%と定められているものもあります。
過払い金返還報酬
過払い金返還報酬とは、消費者金融等に払い過ぎた利息を交渉や裁判で取り戻したことに対する報酬です。
過払い金返還報酬は、取戻しに成功した金額を基準に〇%、と定めることが大半です。
日当
着手金や成功報酬の他にはどんな費用を支払う必要があるの?
出張した場合に支払う日当や、相談料などが必要になる場合があるんだよ。
日当とは、弁護士が裁判所や特定の場所など、事務所以外の場所に出向いたことにより請求される「報酬の一部分」です。
弁護士の日当相場は1時間1万円程度になりますが、通常は移動の時間も含まれます。
その他
債務整理では無料としている事務所が多いのですが、一般的には弁護士に相談する際は「相談料」がかかってきます。
一般的な相談料の相場は「30分5,000円」程度でしょう。
弁護士費用の相場とは別に、報酬に限度額が設定されている
弁護士費用が報酬自由化になったって事は、弁護士事務所によっては膨大な弁護士費用を請求されてしまう事もあるってことだよね?
報酬が自由化になったけれど、上限は設定されているから、決められた額をオーバーしてしまう事はないんだよ。
上記のように、現在では基本的に弁護士報酬が自由化されています。
十数年前くらいから債務整理を積極的に手がける事務所が激増しましたが、あまりにも節度のない報酬設定をしている事務所も出てきたことが問題視されるようになりました。
債務整理と過払い金請求において、請求できる報酬の限度額について
任意整理、減額報酬、過払い金返還請求などにおいては不透明な報酬設定により暴利を貪る法律事務所もあったので、「日弁連規程」では、次の項目についてはっきりと基準を定めました。
内訳別の基準について
- 任意整理の成功報酬(解決報酬)・・債権者1社につき5万円を超えないこと
- 減額報酬・・利息引き直し計算により減額した金額の10%を超えないこと
- 過払い金返還請求・・取り戻した過払い金の25%を超えないこと
一部の事務所で「過払い金の半分を報酬として取る」ような事態もあったのですが、このような明確な規程が出来たことで情報弱者である債務者を守るシステムができたといえるのではないでしょうか。
契約する上で押さえておきたい弁護士費用のポイント
費用を考慮した上で弁護士事務所を選ぶ場合には、どんな事に注意すれば良いのかな?
報酬金や着手金だけではなく、トータルでかかる金額を調べることが大切だね。 その他にも、複数の弁護士事務所の見積りを取る事も大切だし、分割払いが可能かどうか、前払いか後払いか、という事もチェックポイントとなってくるよ。
では、実際に債務者が弁護士事務所と契約する際に押さえたいポイントを見てみましょう。
費用の合計額が、限度額と比較してどの程度安いか
上記のように、弁護士報酬は数種類の項目に分かれています。
どこが安いかというのは単独の項目だけを比べても意味がなく、トータルでの金額を見た上で比べる必要があります。
複数の事務所を比較するためには、最初に相談の段階で概算の見積もりを提示してもらいましょう。
もちろん、事件の成り行きで費用が変わってくる部分もありますが(例えば、自己破産で同時廃止になるか管財事件になるかは書類を出してみないとわからない)、上限と下限の見通しを立ててもらうようにすると良いでしょう。
分割払いできるか
債務整理を依頼する人の多くが不安に思っているのが「そんなに多額を一度に準備することはできない」ということです。
現在、債務整理を積極的に手がけるところで「報酬の分割払いを一切認めない」事務所の方がむしろ少ないのではないでしょうか。
着手金無料と同じくらい、報酬の分割払いは債務整理業務においてもはや常識となっています。
ただ、何回くらいまで分割できるかという点は大切ですので、相談の時点で必ず確認しましょう。
前払いか後払いか
個人再生や自己破産では「報酬を全額払い終わるまで裁判所に書類を出さない」事務所も多いはずです。
そのような支払い方は「分割払いではあるが、前払い」のシステムといえます。
ひとつ注意しておきたいのは、あまりにも長い分割払いでいつまでも任意整理の交渉に着手しない、債務整理の方針がはっきりしない等の状態が続くと「債権者がしびれをきらす」おそれがあることです。
実際、いったんは弁護士受任により債権者からの取り立てが止まっていたものの、債務者が報酬をなかなか全額支払わないため、債権者が待ちきれなくて訴訟を起こしてくる、という例が少なからずあるようです。
弁護士側の言い分としては「お金が全額支払われていないのに手続きを進めると、手続きが終了しても報酬を支払わずに逃げる人が出てくる」ということもあり、もちろんこれにも一理あります。
特に債権者を待たせることのリスクが大きいと思われるケースでは、どうやって早めに手続費用を調達するのか(過払い金から支払う、親族に借りるなど)、弁護士は過去の事例からアイディアを出してくれることもあります。
よって、最初から「お金がないから手続きは無理」と決めつけず、まずは何か方法がないか、弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
弁護士事務所に支払う費用は一律ではないんだね。 債務整理の種類とかかる費用について、詳しく理解できたよ。
費用が安いからといって、安かろう悪かろうでは意味がないから、債務整理に長けている弁護士であるのかどうかもチェックした上で、弁護士事務所を選ぶようにしよう。
- 債務整理の費用は着手金、成功報酬、減額報酬、過払い金返還報酬などの項目に分かれるが、現在では自由化されており各事務所が一律ではない。
- 弁護士の費用を比較するには1つの項目だけではなく、トータルでかかる金額を見ていく必要があるため、最初に概算見積もりを出してもらうべきである。
- 債務整理では報酬分割払いを認めている法律事務所が多いため、一度に報酬を準備できないから手続きは無理、と決めつけずにまず支払方法を相談してみることが大切である。
西岡容子
青山学院大学卒。認定司法書士。
大学卒業後、受験予備校に就職するが、一生通用する国家資格を取得したいと考えるようになり退職。その後一般企業の派遣社員をしながら猛勉強し、司法書士試験に合格。
平成15年より神奈川県の大手司法書士法人に勤務し、広い分野で実務経験を積んだ後、熊本県へ移住し夫婦で司法書士法人西岡合同事務所を設立。
「悩める女性たちのお力になる」をモットーに、温かくもスピーディーな業務対応で、地域住民を中心に依頼者からの信頼を獲得している。
以後15年以上、司法書士として債務整理、相続、不動産を中心に多くの案件を手掛ける。
債務整理の森への寄稿に際しては、その豊富な経験と現場で得た最新の情報を元に、借金問題に悩むユーザーに向け、確かな記事を執筆中。
■略歴
昭和45年 神奈川県横浜市に生まれる
平成5年 青山学院大学卒業
平成14年 司法書士試験合格
平成15年 神奈川県の大手司法書士法人に勤務
平成18年 司法書士西岡合同事務所開設
■登録番号
司法書士登録番号 第470615号
簡易裁判所代理権認定番号 第529087
■所属司法書士会
熊本県司法書士会所属
■注力分野
債務整理
不動産登記
相続
■ご覧のみなさまへのメッセージ
通常、お金のプロである債権者と、一般人である債務者の知識レベルの差は歴然としており、「知らない」ことが圧倒的に不利な結果を招くこともあります。
債務整理の森では、さまざまなポイントから借金問題の解決方法について詳しく、わかりやすく解説することに努めています。
借金問題を法律家に相談する時は、事前に債務者自身が債務整理についてある程度理解しておくことが大切です。
なぜなら大まかにでも知識があれば法律家の話がよく理解できますし、不明な点を手続き開始前に質問することもできます。
法律家に「言われるがまま」ではなく、自分の意思で、納得して手続きに入るためにも当サイトで正しい知識をつけていただけたら幸いです。
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