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企業の破産とは?法人破産と個人破産の違い

 

企業の破産とは?法人破産と個人破産の違い

破産という言葉からは個人が借金をチャラにしてもらうことを想像する人が多いでしょうが、法人であってもやはり行き詰まった時の最後の手段は破産ということになります。

実際、個人と法人の破産は別の法体系になっているのではなく、基本的な流れは同じになります。ただ、個人と法人の性質の違いから、運用面で違いが出てくることがあるのです。

では、両者を比較しながら企業の破産について考えてみましょう。

企業の破産とは?

企業の破産は、「倒産制度」の中の清算型手続き

よく、「会社が倒産した」という言い方をしますが、倒産という言葉は必ずしも会社を畳むことだけを意味するのではなく、会社を再建するタイプの手続きも含んだ言葉です。

つまり、倒産という言葉の中には法的整理である破産や特別清算、民事再生、会社更生、私的整理である特定調停、任意整理といった各種の手続きを含んでいます。これらの中でも究極の清算型手続きが「破産」なのです。

個人の破産とはどんな点が違うの?

 個人の破産と法人の破産を比べると、いくつかの点について異なる運用がされています。それらを確認してみましょう。

個人の破産法人の破産
同時廃止と管財事件の振り分け9割方は同時廃止となるほぼ全件、管財事件になる
免責手続の有無ありなし
自由財産一定の範囲で認められる認められない

同時廃止と管財事件

個人の破産では9割が「同時廃止事件」という処理の方法になります。

同時廃止とは、債務者に配当できるような目ぼしい財産がない場合に、破産管財人を選任しないですぐに破産手続きを終結させる手続きで、費用面から見ても破産管財人の報酬が要りませんから非常に安く済みます。

しかし、法人の破産が申し立てられた場合には、ほぼ同時廃止になることはないといえます各地域の地方裁判所により破産の運用は若干異なりますが、多くの裁判所では、法人の破産が申し立てられると自動的に「管財事件(破産管財人がついて財産の配当等を行う)」振り分けられるというルールになっています。

免責手続きがあるか否か

個人の破産手続きの中では、債務者の財産の換価・配当は行われますが、残った債務が自動的に免責されるというわけではありません。配当した後の「免責」という手続きを経て初めて債務がチャラになるのです。

この部分には個人と法人の違いが出てきます。

法人は、破産すればその存在そのものが消滅してしまうので、いくら債権者がそれ以上の支払いを要求しようと思っても請求する相手自体がなくなっていることになりますよって、制度として設けられた「免責」というものはなく破産による法人の消滅に伴って債務も消滅してしまうという理屈です。

しかし、個人は、たとえ破産したとしてもその人がいなくなってしまうわけではありません。

もし破産手続きにおける配当によって払いきれなかった債務があれば、それを処理しておかなければ破産者は完全に経済的な立ち直りを果たせないことになります。よって、個人の場合のみ「破産の最終段階として免責手続きをする」という段取りになっているのです。

「自由財産」が認められるか

個人を破産させる場合、上記のように本人が破産してもその後の生活は続きます。よって、経済的な立ち直りが可能になるように最低限の生活費等は残しておいてあげなくてはならないのです。このように、法律によって、また裁判所の裁量により債務者の手元に残してよいと認められた財産のことを「自由財産」と呼んでいます

会社の破産については、その会社そのものを消滅させてしまうわけですから会社財産を残しておくことはできず、財産を残らず換価・配当しなければならないことになります。

会社が破産を選択するメリット・デメリット

破産のメリット

財務状況が悪化した会社をずるずる引き延ばすよりも、いっそのこと畳んでしまった方がよい場合もあります。具体的メリットとしては次のようなものがあります。

  • 会社の負債をチャラにすることができる
  • 返済に追われる生活から免れることができる 
  • 展望のない事業を畳むことで経営者自身も気持ちの切り替えができる

これは個人の債務整理でも同じですが、弁護士に債務整理を依頼した時点で債権者からの取り立ては止まります今までは債権者からの電話や手紙に怯えて普通の生活が送れなくなっていた人でも、取り立てが止まって生活が落ち着くと別人のように明るくなることもあります。

破産のデメリット

一方で、デメリットには何があるのでしょうか?

  • 会社の財産はすべて換価、処分される
  • 従業員を解雇しなければならない
  • 代表取締役が個人保証している場合は、代表取締役自身も破産しなくてはならないことがある

上記のように、会社が破産した場合、ほとんどのケースでは破産管財人がついて財産が配当に回されますただ、やはり多額の負債を免除してもらうからにはこれは仕方がないでしょう。

そして、社長にとって非常に心痛の種になるのが従業員への対応です。これについては適切な従業員への説明の仕方を弁護士と相談し、しっかり事前準備をしてから臨むべきといえます。

また、下でも説明しますが、代表取締役が会社の連帯保証人になっている場合が多々あり、そのような状況で会社が破産すれば代表取締役個人に請求がいってしまいますよって、支払が不可能であれば代表取締役が債務整理する必要があるのです。 

ー企業の破産特有の問題とは?

代表取締役・取締役の責任

会社が破産する場合、道義的には経営陣の責任があるでしょうが、代表取締役や取締役が当然に個人的な金銭的補償を迫られるわけではありません。法律的には、権利の主体としての個人と法人は別物であると考えられるからです。

代表取締役・取締役が特別に責任を負わなければならないのは、それらの役員が取締役の「忠実義務」「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)」に違反しているようなケースです。

そもそも会社法の上では役員は会社から委任契約により高度な注意義務を与えられているので、それを守らず会社に損害を与えれば賠償責任を問われることがあるということです。

ただ、中小企業の役員がこれらの義務によって責任を問われる場面というのは、よほどひどい放漫経営がされていたような場合でしょう。たとえば会社のお金の使い込みや、明らかに無謀な経営計画、投資の実行といった例が考えられます。

また、会社代表者が会社の債務を肩代わりしなければならない典型的なケースは、「代表者が会社債務の連帯保証人にさせられていた」というものです。

役員が連帯保証人になっていたら?

会社名義で銀行などから事業資金の借り入れを行う時には、しばしば「代表者が個人で連帯保証人になること」を要求されます(経営者保証)ただ、こうなっていると会社を畳む時に代表取締役の責任としてのしかかってくることがあるのです。

「連帯保証」というのは個人の間でもよく行われている契約形態ですが、よく知らずに契約してしまうと実に恐ろしい状況になります。いったん連帯保証人になると、もし主たる債務者が返済不能になればほぼそれと同等の全責任が連帯保証人にかかってきます。つまり、代表取締役が会社の連帯保証人になっていたのであれば会社が返済しきれなかった債務は保証人である代表取締役が支払わなくてはならず、多くの場合は支払うことができずに代表取締役個人も同時に自己破産するという流れになってきます。

連帯保証の仕組み、債務整理した場合の保証人への影響などは「債務整理と連帯保証人」に詳しく解説していますのでこちらもご覧ください。

取締役による会社債務の保証

社長と会社の共倒れを防ぐための「経営者保証に関するガイドライン」

中小企業にとって、代表取締役が会社の債務を個人的に保証するというやり方は、銀行から見た時の信用力を補う意味が大きく、これによって融資がおりやすくなるというメリットはあります。

しかしひとたび会社が危機的な状況に陥れば社長は会社を畳むだけではなく、個人的にも破綻する状況になるため、そのことが起業をためらう人を生み出しているとも言われてきました。そこで、金融庁などの後押しによって平成26年に経営者保証に関するガイドラインの運用が開始されました。これは、日本商工会議所と全国銀行協会を事務局として検討され、その成果をまとめたものです。

このガイドラインの中では、

  • 「どんな場合でも経営者保証をつけるのではなく例外を設けること」
  • 「早い時期に廃業等の決断をした場合は経営者に一定の生活費を残して、華美ではない住宅に住み続けられる可能性を残すこと」

といった内容が示されています。

これらには法的な拘束力があるわけではないのですが、中小企業・経営者・金融機関が共通の認識として自主的に守るルールとなることが期待されています。

では、ガイドラインの内容をもう少し見てみましょう。

経営者保証なしでも借りられる経営状況とは?

中小企業は、もし次のような経営状況であれば経営者保証なしで融資を受けられる可能性があります。

①法人と経営者の関係が明らかに分離していること

会社のお金を社長に貸し付ける、過剰な役員報酬を与えるといった行為が日常的に繰り返される場合は実質的に両者の資金が混じり合っている状態です。こういった会社についてはやはり会社の返済不能の責任を代表取締役に取ってもらわざるを得ないため、経営者保証が必須ということになります。

逆に、両者の資金上の区分が明確になっていれば経営者に個人的責任を負わせなくてよい場合もあるのです。

②財務基盤の強化

経営者保証が必要な理由は「債権者から見た信用力への不安」です。つまり、その不安を払拭できるような安定した財務状況や業績があれば経営者保証は要らないという判断になることもあるのです。

③経営の透明性

これも銀行から見た「貸付先に対する安心感」という意味で重要なのですが、常に自社の財務状況を正確に把握し、金融機関から情報の開示を求められたらすぐ開示できるようにしておくことです。

そして、もし財務状況に変化があった場合は隠さずにすぐ金融機関に報告するなど、適切な情報開示を常に心がけていることが大切です。これらの情報には公認会計士や税理士など外部の第三者による検証結果が併せて提示されていればベターです。

債権者に求められる対応

銀行等の金融機関には次のような対応が求められています。

①経営者保証を求めない融資や、代わりになる融資の方法を検討すること

たとえば「金利を一定割合で上乗せする」「担保となるような動産、売掛債権などがあればそれを担保にとる」といった方法で連帯保証人の代わりにするのです。

②どうしても経営者保証をつける場合、次のことを心がけること

中小企業に対し、経営者保証がなぜ必要なのか、もしいったん保証していても状況によってそれを変更や解除する可能性があることなどを説明するということが求められています。また、保証金額を適正にするということも必要です。

すでに代表取締役が連帯保証人になっている場合は?

もし、既に経営者保証をしている場合でも、中小企業側が財務状況の改善が図ったことを報告すれば経営者保証の解除、保証金額の変更などを求めることができますそれに対して金融機関は真摯に検討をしなければならず、その結果についても丁寧に、具体的に回答しなければなりません。

事業再生や廃業などに伴って保証債務を整理する場合

「経営者保証に関するガイドライン」に沿って行われた保証について債務整理がされた場合、経営者保証を行った経営者には次のようなことが認められています。

①一定の期間の生活費、華美でない自宅を残すことを金融機関に申し出ること

個人の自己破産における「自由財産」のようなイメージになるでしょう。一定期間の生活費というと漠然としているようですが、具体的な計算式としては次のようになります。

標準的な生活費である月33万円×雇用保険の給付期間

華美でない自宅とはどの程度なのか判断が難しい部分もありますが、自宅兼店舗など資産の区分がしづらい場合、金融機関による検討がされることになります。

②債務整理手続きに弁護士など専門家の支援を求めること

保証債務を整理するにあたってのアドバイスを受けたり、弁済計画の策定の手助けをしてもらったりすることができます。希望する場合は商工会、商工会議所を通じて(独)中小企業基盤整備機構の「専門家派遣制度」を利用したい旨を伝えることになります。

③保証債務を免除してもらったり、経営者が引き続き経営すること

金融機関から見てこのような処理をすることに一定の合理性があれば認められます。

代表取締役個人の負担を少しでも軽くするためにも「経営者保証に関するガイドライン」の存在やその内容である具体的救済方法をあらかじめ知っておくことが大切です。

まとめ

  • 法人と個人の破産については、基本的には同じ法律に規定されているものの、運用面などで違いがある。
  • 法人の場合、個人のような免責手続きというプロセスはないものの、法人の消滅によって債務も消滅する。
  • 法人についても債務を免れられるメリットはあるものの、従業員の解雇、会社と連動して社長が破産を余儀なくされるなど特有のデメリットがある。
  • 中小企業について必ずしも経営者保証をしなくてよい場合もあるので「経営者保証に関するガイドライン」に沿って対応してもらうよう金融機関に要請してみるのも一つの方法である。

個人の破産であれば弁護士、司法書士いずれに頼むこともありえるのですが、法人の破産については弁護士の手を借りることが必須です。早ければ早いほど傷は浅くて済みますので、経営が苦しくなっていると感じたら一刻も早く無料相談に行くことを心がけましょう。

 

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西岡容子

西岡容子

熊本にて夫婦で司法書士事務所を営む。10年以上の実務経験で、債務整理の経験も豊富。現場での経験を活かしてユーザーのためになる確かな記事を執筆中。
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